コラム

 公開日: 2014-09-05  最終更新日: 2014-09-22

河北新報社「潮路はるかに」の受賞に思う ─東北関東大震災・被災の記(第157回)─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 9月3日、河北新報社の連載「潮路はるかに」が編集部門で新聞協会賞を受賞した。
 以下は、日本新聞協会発表の受賞理由である。

「河北新報社は、仙台藩主・伊達政宗の命で派遣された慶長遣欧使節船の出帆から400年の節目に、支倉常長ら使節団の足跡を追った写真企画を2013年2月1日から10月25日まで、計39回にわたって朝刊特集面で連載した。
 慶長遣欧使節船の造船と使節派遣が、慶長三陸地震の津波被害からの復興策だったという新説を、東日本大震災の被災地の読者に届け、復興の羅針盤とすることを目指した写真企画は、被災地に夢と希望を与えた。
 使節団に関する歴史的資料が少ないなかで、登場人物の心象風景を写真で表現していく手法は斬新で、記事を含めた企画の総合力で読者に使節団の旅を疑似体験させ、過去と現在を結び付けて大震災を捉え直すきっかけを与えた。
 読者を勇気づけた一連の写真企画は、被災地元紙ならではの作品と高く評価され、新聞協会賞に値する。」

 平成25年春のスタート時は、とにかく驚いた。
 プロローグにはこうあった。

「大航海時代の新知識を得た政宗は、太平洋交易に乗り出す機会をうかがっていた。
 1611年12月2日、彼の背中を強く押す大事件が発生した。
 慶長三陸地震。
 マグニチュード8・5以上と推定される巨大地震は大津波を伴い、仙台領に死者5000人とも伝えられる深刻な被害をもたらした。
 関ケ原役の後、領国経営に取り掛かったばかりの政宗にとって、まさに国難と言える出来事だった。
『今こそ』。
 政宗は立ち上がった。
 黒船の建造は被災地を潤す公共事業となるだろう。
 スペインに冷淡な姿勢を取り始めていた徳川幕府にしても、復興のための交易には『否』と言わないはずだ。
 津波を浴びた三陸の浦々が、南蛮船を迎えて堺や長崎のように大発展を遂げるかもしれない-。」

 これまで、慶長三陸地震の巨大さは、歴史学者の間で「ありえない」と無視されてきた。
 しかし、ちょうど400年後の平成23年、マグニチュード9・0という、より巨大な地震が発生した。
 この現実を前にして、慶長三陸地震のわずか2年後にサン・ファン・バウティスタ号を出帆させた政宗の思いが被災地で暮らす専門家たちの胸に蘇った。
 宮城県慶長使節船ミュージアム館長浜田直嗣氏の〈新見解〉である。

「使節船の建造は、被災地を潤す公共事業となったはずだ。
 スペインとの交渉が実を結んで太平洋交易が実現していたなら、津波に打ちのめされた浦々が、長崎や堺のように大発展を遂げたろう。
 政宗は、単なる復興ではなく、被災地の飛躍を見すえていたのだ。」

 津波でボロボロになったサン・ファン・バウティスタ号の復活を求める人々だけでなく、河北新報社の人々も奮い立ち、「潮路はるかに」が企画された。
 写真部の長南康一氏は、受賞を受けてこう述べた。(9月4日付河北新報より)

「『ブツがない』『場所がない』『人がいない』。
 史実資料が非常に少なく、写真撮影は苦心の連続だった。
 とにかく400年前に生きた伊達政宗や支倉常長ら先人たちの心象風景を写真で表現する。
 ひたすら記者の原稿を丁寧に読み解き、現場の空気感から写真の構図を考えた。
『常長はこの海原をどう見たか』。
 頬をなでる冷たい風もあれば、心地よい風、いや無風もある。
 あらゆる条件を想定し、撮影地に何時間もたたずみ、時には数日間通った。
 連載は準備段階で、掲載写真を毎回1枚にするか、あるいは複数枚にするか議論した。
 結局1枚としたのは『政宗はこう考えただろうが、こんな考え方もしたかもしれない』と逃げ道をつくることは潔いと思わなかったからだ。
 毎週金曜日に掲載された1枚の写真。
 それは実は読者への手紙だったと思っている。
『古里の〈今〉を包み隠さず伝え、明日を生きる励ましになればいい』と思った。
 だから連載の各写真を見てほしい。
 常長らが見たであろう海外の光景だけでなく、被災地の傷ついた現状に目を背けず、あえてそれも写し込んだ。
 河北新報社は何十年後かに『慶長遣欧使節船』に絡んだ特集を掲載するかもしれない。
 その時は必ずや使節団の事跡に希望の光を見いだすに違いない。
 使節団の意義は何年たっても色あせず、未来のカメラマンは新たな発想で写真を撮るだろう。
 その時、私たちの写真が少しでも参考になれば望外の喜びである。」

 執筆者野村哲郎氏(現大崎総局長)は、こう述べた。(9月4日付河北新報より)

「『潮路はるかに』のような写真企画に取り組む場合、少なくとも1カ月分の原稿を先出ししなければならない。
 写真部員はその文章を読んで作画のイメージを膨らませる。
 先出しは、撮り手の心の余裕につながる。
 文章と調和する写真が提稿された時は、達成感を共有することができた。
 絶対的な1枚をものにするために、再トライしたこともあった。
 例えば『潮路はるかに』の31回目。
 担当の写真部員は、ミカン畑にたたずむ石塔に400年前のドラマを語らせようと、長崎県諫早市の郊外まで、はるばる撮り直しに出掛けた。
 文章も読者の厳しい鑑識眼にさらされる。
 頭から煙が出る思いで文章を練り直したのも、一度や二度ではない。
 われわれが労力を惜しまないのは、読者に伝えたいことがあるからだ。
 慶長遣欧使節が派遣された背景に、仙台藩領を襲った大津波があったという。
『被災した浦々に南蛮船を入港させ、交易拠点に発展させよう』。
 そんな先人の気概を紙上によみがえらせ、東日本大震災からの復興に挑む勇気に変えたい。
 この写真企画に込めたわれわれの思いは、読者に伝わっただろうか。」

 氏のきまじめで妥協できないお人柄からすると、この連載期間中は、文字どおり「頭から煙が出る思い」の日々であったと思われる。
 平成26年3月13日、津波の3年後に出版された『潮路はるかに』を手にした時、表紙の常長像と氏の姿がダブり、涙腺の緩みを覚えた。
 400年前の気概、今の気概……。
 400年前の雄途は、スペインよりもイギリスやオランダとの関係を重視する徳川幕府の政策により結実を見なかった。
 今の復興も、政府の政策を見ると、事実上の後回しにされていると思えてならない。
 被災地東北は、何をもって立ち上がるか。
 何を揺るがぬ志とするか。
 震災の翌日も新聞を届けてくれた河北新報社の方々の思いを共有し、自分たちの足で立ち上がり、自分たちの足で進みたい。
 政宗のように、常長のように。

 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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