コラム

 公開日: 2014-10-05 

「おん」と「うん」の話 ―オウム真理教の失敗と真の仏陀(その2)―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 前回(その1)の続きです。

1 上昇し、戻ってくる

 オームと口にしながら祈り、ついに絶対の安寧を得ても、それだけでは真の悟りではなく、〈人間の地平〉にたち戻り、人々の〈賢明な友人〉になってこそ仏陀、すなわち悟りを開いた人と言えます。
 ゴヴィンダ師は説きます。

「オームは普遍性への上昇であり、フームは普遍性の状態の、人間の心の深みへの降下である。
 フームはオームなしにはありえない。
 しかし、フームはオーム以上である。」

 オームによって高まり、清まりして苦しみを離れ、そこにありながら今度は、フームと深まり、凡夫の生活にある真実世界を開きます。
 ゴヴィンダ師はウパニシャッドの文を紹介しています。

「現世的なもののみを崇拝する者は暗闇の中にいる。
 しかし、無限なもののみを崇拝する者は、さらに大きな闇の中にいる。
 両者を受け入れる者は、前者の知識によって自らを死から救い、後者の知識によって永遠性を獲得する。」

・現世的なもののみを崇拝する者……見聞きし、泣き笑いする現実だけが実在であると思い込み、み仏や悟りを考えず、欲やモノに流されている人々
・無限なもののみを崇拝する者………抽象的で概念的な知識や観念のみを尊び、喜怒哀楽の中で生き死にする生(ナマ)の現実を軽視・蔑視する人々

 いずれも極論に走っており、問題です。
 理想的なのは、両極端を離れた人です。

・前者の知識によって自らを死から救う人……現世をよく観て、人々が空(クウ)を知らず、こだわり、自己中心的な気持によって真の思いやりが持てず苦しんでいることに学び、やがては死をも克服できる人
・後者の知識によって永遠性を獲得する人……概念や観念によって考えるだけでなく、そうした思考を生かした体験をすることによって真実を生き、現在の自分がそのまま不動の永遠へとつながってゆく人

 両方のタイプを身につけた人になりたいものです。
 
 始まりのオームは「おん」であり、帰依です。
 終わりのフームは「うん」であり、真理・真実による救済です。
 オームによって幻の我(ガ)を離れ、苦を脱して絶対の安寧つまり解脱(ゲダツ)の世界へ入ります。
 しかし、いのちも意識も、他者との関係性の中でしか存在できません。
 もう〈自分だけ〉は大丈夫、と、仙人か神にでもなったような気持になるのは錯覚です。
 誰一人として天地自然、人間社会といった現実の〈おかげ〉なくして生きてはいられないからです。

 ゴヴィンダ師は説きます。

「オームの体験はフームの体験によって覆われ完成させられなければならない。
 オームは太陽でフームは大地の如くである。
 眠った生命を目覚めさせるには、太陽光線は大地の中へ入ってゆかねばならない。」

 苦を克服し、無限の強さと清らかさと温かさで太陽のようになった魂は、生まれ、死に、泣き、笑う有限な現実に溶け込み、今という瞬間の中に無窮の時間をつかむような境地へと達してゆかねばなりません。

「より深いフームの体験に到達しそれを理解するためには、オームの体験を経過していなければならない。
 オームがマントラの始まりにあり、フームがおしまいに置かれる理由はここにある。
 オームにおいて自己を開き、フームにおいて自己を与える。
 オームは知識の扉であり、フームはこの世においてこの知識を悟るための扉である。」

2 フームが魔除けの力を持つ理由

 ゴヴィンダ師は最後に、なぜ、フームが「悪魔を打ち破り魔軍を撃退する」のか、その秘密を解き明かします。
 サンスクリットの「フ」には、「犠牲にする。犠牲の行為または儀礼を遂行する」という意味があり、フームには「犠牲の響き」があります。
 ところで、お釈迦様が認める犠牲はただ一つ、自己犠牲です。
 師はお釈迦様の言葉を示します。

「ブラフマンよ、私は祭壇の火には
 どのような木もくべはしない。
 私が燃やす焰の中でのみ燃やすのだ。
 私の炎は絶え間なく燃え、自ら燃え続ける。
 ――心がその祭壇である。
 その祭壇の上の焰――それはよく抑えられた自己である。」

 密教では、願いを込めた護摩木を護摩壇で焚きますが、それは外護摩(ゲゴマ)と言う修行です。
 それを体して心で焚く護摩は内護摩(ナイゴマ)と呼ばれており、この教えそのものです。

 また、フームは大地へ触れる触地印(ソクチイン)という印を結びながら唱えられますが、それにも深い意味があります。

「仏陀はその仕種によって、今生および前世において為してきた無数の自己犠牲の行為の証人として、大地の神を勧請(カンジョウ)するのである。
 この至高な犠牲の力こそが、〈悪魔(マーラ)〉を打ち破り、魔軍を撃退するのである。」

 このように、密教の真言も印も観想も、すべて、お釈迦様に始まる真理と真実を探求する歴史の精華です。
 真言は単なる魔除けの呪文ではありません。
 明確で生き生きした心象のはたらきが言葉となったものです。

 3 観音菩薩のオームとフーム

 さて、穏和な観音様の真言(マントラ)は、最後に強力なフームを含む「オーム マニ パドメー フーム(オーム、宝珠よ、蓮華よ、幸いなれ)」です。
 この真言は、観音様が私たちを救うために、たとえ地獄でさえも現れてくださるという智慧と慈悲の〈最高の表現〉です。
 冒頭の言葉に「フームはオーム以上である」とされているとおりですが、このことを知ったからといって、すぐに救われるわけではありません。
 ゴヴィンダ師は、至心に唱え、魂が感応すれば「閃光のように現れる」ものを感得できると説きます。
 ちなみに、北尾克三郎師は、「うん」についてお大師様が説かれた解釈をかいつまんで述べられました。
「『ウ字』そのものは、もともとあるがままに存在していて生じたものでないものは、損なうことも減ることもないことを象徴する。」(「エンサイクロペディア空海」より)
 至心に唱える〈自分〉は、いかに輪廻転生を繰り返そうといつも自分であり、万物が生じ、滅する場である宇宙もまた、ずっと宇宙です。
 損なわれることもなければ、減りもしません。
 こうした境地に立てれば、時に応じことに応じて菩薩(ボサツ)らしく自己犠牲的行為を行い、悪魔につけいる隙を与えないことでしょう。
「おん」から「うん」へつながる世界の完成です。

 チベットの人々はこう学びつつ観音様の真言を唱えているので、かつてNHKが取材したとおり、死魔に負けず平安な暮らしをしてきました。
 しかし、その生活も文化も今、中国政府によって消滅させられようとしています。
 ちなみに、日本の真言宗が唱える聖観音様の真言は「おん あろりきゃ そわか(帰命します、蓮華尊よ、成就あれ)」です。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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