コラム

 公開日: 2014-10-26 

不邪淫戒を犯す僧侶の問題 ―出家者とは何者か?―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 寺の跡継ぎが檀家の奥さんへ横恋慕するという問題で人生相談となりました。

 こんなふうに回答しました。

「現在の彼は袈裟衣をまとう資格のない最低の僧侶です。
 彼の将来を思ってあげるのならこう言いましょう。
『貴方はそれでも僧侶ですか?』
 ちなみに、江戸時代を代表する慈雲尊者((ジウンソンジャ)という傑僧は、お釈迦様が示された仏教の基本である『十善戒』を『人の道』として、一生涯、僧侶へも娑婆の方々へも説き続けました。
 当山ではお通夜などで尊者の教えを読誦し、法話を行っています。
 そこにある文章です。
 これを彼へ教えてもらっても結構です。

『男子、女人共に、我に属せぬ者には心寄するべからず。
 妄(ミダ)りに慣れ睦まじくすることなかれ。』

(男女共に、自分と社会的に認められた関係になっている異性以外の人へ心を寄せてはならない。
 みだりに、なれなれしい態度をとったり、良識を超えて仲睦まじい態度をとったりしてはならない)
 尊者は、〈思う〉段階ですでに破戒であると厳しく説いておられます。
 罪として確定するには〈行う〉ことまで行かねばならないという考え方もありますが、当山は、二つの面から尊者の教えに与(クミ)します。
 一つは、娑婆へ波風を立てるからです。
 万人の平安を祈るために娑婆を離れて出家した僧侶が、他人様の安寧を揺るがすようなことは許されません。
 もう一つは、心の邪淫は、僧侶としての本分、つまり、修行や修法の妨げになりかねないからです。
 お釈迦様は『二の矢を受けず』と説かれました。
 見聞きすることによる刺激は、目や耳などに連なっている心へ反応を起こしますが、その反応に囚われないという意味です。
 たとえば、美人とすれ違い、美しい人だなあと感じても、ふり返ったり後をつけたりしないという姿勢でなければ、まっとうな行者にはなれません。
 いかにダメになるかは、三島由紀夫の短篇小説『志賀寺上人の恋』を参考にしてください。
 かなり読みにくいとは思いますが、老僧といえども、いかに行者たる本分を離れてしまうか、その恐ろしさは想像していただけることでしょう。

『不邪淫戒は、万巻の書を諳(ソラ)んずる者も、持たねば身に災いあり。
 甚だしきに至りては、家を滅ぼし国を滅ぼす。』

(不邪淫戒は、いかなる研鑽を積んだ者といえども、堅持しなければ災いを呼ぶ。
 甚だしい場合は、家庭を破壊し、国家を揺るがしかねない)

『五欲の中には触欲最も重く、情欲の中には愛欲最も深し。
 この淫欲の法、身心を繋縛(ケイバク)して累劫(ツイゴウ)の憂いとなる。
 愛欲に随順すればこの世界悉く執着となる。
 流れて我慢となり、あるいは争いを起こす。』

(財欲や食欲などの五つの欲望のうち、異性への色欲が最も深い。
 色欲につかまり、対象に囚われれば、心身共にがんじがらめとなり、憂いが憂いを呼ぶ。
 愛欲への執着は、お金や時間などあらゆるものへの執着を引き起こす。
 やがては自己中心の我欲が暴走し、争いの原因にもなる)

 当山の周囲にもこうした破戒僧がいました。
 彼はついに邪淫以外の罪も犯すようになり、〈二の矢を放たれた〉周囲の女性たちを不幸にしました。
 恐ろしい悪業(アクゴウ)に惑わされる貴方は、このあたりではっきりと目を醒まさねばなりません。
 破戒僧の悪業に穢されず家族を護るために。
 ――まだ若い彼を地獄行きにせず、まっとうな僧侶にするためにも。
 自他に発する心の暴風をくぐり抜けて来た経験者として、断固、悪業を否定しないではいられません。
 救いの道は、〈み仏の説かれた真理に目覚めること〉しかないのです。」

 ご返事をいただきました。
「自分の苦しみだけを考えていましたが、相手のことも考えねばならないと気づきました。
 また、僧侶という社会的立場にあって檀家と接する相手に対して、プライベートな感覚で接した自分も不注意でした。」

 お話ししました。

「実は、ここが最後に念押しをしたかったところです。
 出家とは、決して家出を言うのではなく、娑婆的つながりを断ち切ることです。
 とは言え人間はすべて〈社会内存在〉であり、山へ籠もって人知れず生きている仙人は菩薩(ボサツ)ではありません。
 娑婆の方々と共に喜び、悲しみつつ仏道を生きるのが仏教的理想像である菩薩です。
 では、出家者はどうするべきか?
 白衣を着て戒律の遵守を誓った以上、〈自分以外の誰とでも常に僧侶としてのみ接する〉ことが求められます。
 僧侶には、僧侶であることを離れた〈一個人〉などというものはありません。
 一生、菩薩になりきれない自分を鍛え続けねばなりません。
 私自身、幾度も崖から転げ堕ちそうになりながら、祈りを深めつつ、ご本尊様のおかげでどうにか生きてきました。
 未熟者が周囲の方々から温かく見守られ、時には厳しいご叱責をいただきながら、おかげでどうにか袈裟衣を護ってきました。
 毎日が真剣の刃渡りであり、時折、目に見えぬ血を流しては、ご本尊様へ懺悔します。
 生きながら一度、この世を離れた存在になった者の修行に終わりはないのです。
 こうした者が、娑婆の方へ〈プライベートな感覚〉を持たせてしまったことは猛省せねばなりません。
 そのこと自体が、僧侶の本分に反しているからです。
 貴方様のお気づきが、貴方様を救い、ご家族を救い、彼をも救いますよう祈っています。」

※こうした文章は、プライバシーを重んじながら事実そのままではなく書かれていますので、ご安心ください。
 
 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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