コラム

 公開日: 2014-10-30 

11月の聖語「種を蒔く人」 ―ヒストリーとイティハースを思う―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈お釈迦様の前に立つと恥ずかしくなります〉

 お大師様は説かれました。

「春に種を蒔かなければ、秋の実りを得られようか。
 善男善女よ、因果応報をゆめゆめ、忘れるなかれ」

 原文は以下のとおりです。
「春の種を下さずんば、秋の実いかんが得ん。
 善男善女仰がずんばあらず、仰がずんばあらず」

 私たちがまっとうに生きるためには、どんなに理不尽な扱いを受けても、いかなる不条理を目にしても、善き原因があればいつかは必ず善き結果が出ることを信じて進むのみです。
 悲しい思いや、辛い辛抱や、苦しい経験は、因果応報への信念を鍛えるために仏神から与えられた貴重な機会なのかも知れません。
 では、耐えきれなくなりそうな時、因果応報が信じられなくなりそうな時は、何が支えとなるか?
 ご先祖様は何を支えとして善く生きようとし、人間はずっと人間であり得たのか?

「歴史」には二通りの考え方があります。
 私たちは普通、英雄や強大な国の行為などによる特別なできごとが記録されたものを歴史と考えます。
 これが英語のヒストリーです。
 学校で習う歴史の教科書の大部分はこうしたできごとの羅列になっています。
 それに対して、どこにでもあるような、記録するほど特別でもない庶民たちの営みが積み重ねられたものをインドの言葉でイティハースと言います。
 ガンジーはこう説きました。

「ヒストリーは〈帝王たちの行跡〉であり、愛や真理が分断されたときに記録される」
「イティハースは多くの人々の日常的実践の積み重ねであり、自然に継承されてきた伝統・常識の体系であるため、わざわざ記述がなされない」(中島岳志「死者のデモクラシー」より)

 人々が愛や真理を共有しつつ紡いだ日常生活こそが真の歴史であって、それは「死者たちの沈黙の中にある」としたのです。

 私たちのほとんどは、信長でもなければ、秀吉でもありません。
 だから、ヒストリーを勉強して並外れた意志の実現力に感嘆するのも結構ですが、迷い、追いつめられた時ほど、〈伝統・常識〉で暮らす人々の身近にある〈愛や真理〉に気づくことが大切です。

 Aさんのお祖母さんは太平洋戦争中、教師としてはたらき、たくさんの教え子を戦地で失いました。
 お祖母さんは亡くなるまで、「B君はガダルカナルで死んだ」「C君はニューギニアで死んだ」と思い出しては手を合わせ、孫にも語り聞かせていました。
 やがて大人になったAさんは、お祖母さんから聞かされていたかつての激戦地へ出向き、放置され、現地の人に踏みつけられるままになっている路傍のご遺骨に落涙しつつ、集めるようになりました。
 お祖母さんは「生徒たちは我が子であると観て、育てる」という教師としての〈伝統・常識〉を貫きました。
 お祖母さんはすでに過去の人となり、沈黙の世界へ行きましたが、今なお、沈黙の中からAさんの心へ語りかけています。
 Aさんは、お祖母さんから感得した〈愛や真理〉を柱とし、原動力として行動しつつ、ものを書き、語り続けています。

 Aさんと話していると迷いが感じられません。
 ご自身の行動が炎天下に撒かれた打ち水のように儚いと思うこともあるでしょうに、まっすぐです。
 やはり、〈やっただけのことはきっとある〉という因果応報の信念がおありなのでしょう。
 信念を持って種を蒔く人であり続けたいものです。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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