コラム

 公開日: 2014-11-15 

神と僕、そして「おもてなし」

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈ジゼッペ・ペノーネの『小径1』 歩いているのは人間か、植物か?〉

 11月8日のNHKテレビ「ジャパンブランド(第一回)」は、ショッピングモール、回転寿司、外食店、100円ショップ、旅館、美容院などの「日本式サービス」が世界中へ広がっている実態を報じた。

 大阪の「サカモト セミナー」は坂本英雄氏が一人で行う小さな学習塾だが、アジアに進出して1万人もの生徒を擁するまでになった。
 それは、一人一人を徹底してレベルアップさせる坂本式という独特の勉強法が支持されたためである。
 氏は、生徒が学力をつけて喜ぶよう精魂を傾け、工夫し続けている。

 旅館の経営者星野佳路氏は、西洋式のサービスと日本式サービスの根本的違いを見つけ、出迎えから見送りまで一人のスタッフが客へ対してすべてのサービスを行う方法で事業を展開している。
 考えに考えた末、氏は気づいた。
 信頼される西洋式ホテルは、世界中どこでも同じサービスを確実に受けられ、客が上でスタッフは下という上下関係が徹底されている。
 それに対して、日本式旅館は、客とスタッフは対等で、客が期待するのは、スタッフのもてなしに表れる旅館と主人の〈文化度〉である。

 番組では、一人の女性スタッフが一組の夫婦をもてなすシーンが放映された。
 出迎えたスタッフは、筆を用い、カタカナで名前を書く体験を勧め一言、添えた。
「日本では古来、『書は人を表す』と言われています」
 そして夫婦が外出中に、一人、残った部屋でイスの位置を変えるなどあれこれと気を配る。
 最後に、奥さんがカタカナで名前を書いた短冊を色紙で包み、そっとテーブルへ置いた。
 戻った夫婦の驚き、そして「――イロガミ……」と呟きつつ開いて見た奥さんが泣きそうなほど感激し、続けた言葉は耳から離れない。
「オー・マイ・ゴッド!ソー・ビューティフル!」
 別れの時が来て、スタッフは感謝を込めた笑顔でちぎれんばかりに手を振り、客を送った。
 夫婦はきっと、日本で過ごした時間を忘れられないだろう。
 スタッフの心にも、かけがえのない手応えが残ったことだろう。

 西洋式にあっては、客は王であり、スタッフは僕(シモベ)である。
 客の〈王様気分〉をつくれるかどうかが勝負であり、客とスタッフの距離は、神と人間のように遠ければ遠いほど、客の満足度が高まる。
 こうした方法は、世界中のどこでも効果を発揮できるので、スタッフは便利で使いやすい〈道具〉となり切ることを求められ、訓練させられる。

 日本式にあっては、その〈場〉に責任を持つ〈主人〉としてのスタッフが客を迎え入れる。
 主人は客の意志に忠実なだけの僕でなく、客に真の満足を得てもらうために客をよく観察し、客の内心から新鮮な喜びを引き出す方法を主体的に考え、実践する。
 客が反応し、深い満足を覚えてくれるかどうか、人と人との魂をかけた勝負である。
 そこには基本的な接客態度の準備はあっても、従っておけば成功を保証するマニュアルはない。
 一期一会(イチゴイチエ)は常に白紙である。
 スタッフにとって厳しいと言えば厳しいが、道具としてでなく、想像力と創造力を持った人間として仕事ができ、仕事は知性と感性に磨きをかけ、人間性を豊かにする。

 そもそも、日本式の「おもてなし」とは、相手の喜びと満足感を創造し、相手の喜びと満足感を自分のそれと感じるところに生まれるのではないか。
 最近、外国人と接する機会の多い経営者から聞かされた。
「日本に来た人々が一様に驚くのは、どこででも、誰でもきちんと並ぶ姿です」
 それは、駐車場にある車イス用のスペースが、施設の入り口近くにあってとても便利なのに、見事なほど空けられていることに通じている。
 見張りがいるわけでなく、罰則もないにもかかわらず、自然にそうする。
 寒風の中で長い行列に並び整然と建物へ入る時、あるいは、遠くに駐車し、空っぽになっている車イス用のスペースを横目に見ながら建物へ入る時、心には、ほとんど意識されないほど微かな矜恃や、誇りや、納得感や、満足感などが生じている。
 それは、まぎれもなく倫理的行動をとったせいであろう。

 日本人は、〈社会内的存在〉としてのふるまい方を独自の文化として創ってきたのではないか。
 自分は常に他者と共にあり、社会にあっては自分も〈他者〉の一員であるという感覚は、私たちが真に誇るべきものではなかろうか。
 こうした感覚が、各種の商売においても生きており、その価値が世界に認められることは本当に嬉しい。
 相手の気持を真剣におもんばかり、真剣に工夫を重ね、相手の喜びを心から喜ぶ文化が世界的に共有されつつあることはすばらしい。
 私たちが誇るべきもの、守るべきものは何であるか、よく考えてみたい。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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