コラム

 公開日: 2014-11-23 

パチンコ依存症(その2) ―吉村昭著『夜光虫』と変えがたい自分―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 パチンコ依存症が抱える問題について「パチンコ依存症―始まった克服への取り組み―(その1)」で実態を見たが、今回は、生き方を変えることについて考えてみたい。

 私たちの生活は、ほとんど、習慣的な繰り返しによって紡がれている。
 昨日、生きたように、今日も生きる。
 もちろん、時々刻々と新たな事態がやってきて、その都度、受けとめ、判断し、行動するが、新たな事態に対応するやり方は、あまり変わらない。
 布団からの起き上がり方、トイレや洗面所の使い方、朝食の摂り方、などなど、ほとんどは無意識に近い形で行われることを見ても、人生は実に、繰り返しであると思える。

 故吉村昭に『夜光虫』という短編小説がある。
 図書館が行っている読書感想文のコンクールで優秀作に選ばれた田川は前科者である。
 出所後も女性に近づいては借金を繰り返しているという。
 そんな田川が、受賞をきっかけに、図書館主宰の読書会へ入会する。
 会の担当者松浦は危うさを感じたが、拒む理由がない。
「田川は、拘置所に勾留されたことで十分に反省しているとは思えるが、それは一時のことで月日がたてば再び同じ動きに出ることが十分に予想される。
 それは田川という人間の奧深く根ざしたもので、かれ自身にも抑制できぬ習性に近いものかも知れない。」
 やってきた田川について、係員速見は朴訥な感じで目だったところはないと報告し、松浦は懸念を深める。
「朴訥で口数も少ないらしい田川には、女は少しのためらいもなく近づき、身がまえるようなこともしないにちがいない。」
「朴訥さが女性を無警戒にさせ、そこに田川は巧みに入りこんでゆくのではないだろうか。」
 やがて退職し、新しい職場へ移った松浦を見知らぬ女性が訪ねてくる。
 読書会で知り合った田川が急に転居したが、行く先を知らないかと問う。
 松浦は知らないと答え、お互いに子細について話さないまま、女性は去る。
「その顔には田川に欺かれているという色は少しもうかんでいない。」

 決して前科者への偏見を助長するわけではないが、私たちは実に〈変わりにくい〉存在である。
 吉村昭が喝破したとおり、いかにも異性を惹きつけるような容姿や風貌を持った人だけが、異性との間で人生模様の彩りを深めるわけではない。
 何の変哲もないタイプの人でも、ふと、異性との関係の持ち方に気づき、自分なりのパターンをつかむと、よきにつけ悪しきにつけ、いつしかそれを続けていたりする。

 私たちは、このままの自分ではいけないと気づいたなら、強く意図して変えない限り必ず、いけないことを又、行ってしまいがちである。
 どうしても暴力的傾向を持った男性に近づいてしまい、離れるのに苦労する方。
 離婚が縁でパチンコと手を切ったはずなのに、再婚で生活が安定した途端に又、破綻へ向かった方。
 危険な目に遭ってアルコール依存を断とうとしながら、変わらぬ生活のリズムから又、アルコールへ手を出してしまった方。
 人生相談に来られたこうした方々のほとんどは、真の問題のありかに気づいておられない。
 それは、自分という「人間の奧深く根ざしたもの」が観えていないということである。
 観えてすら変えがたいのに、観えていなければすべてが対症療法でしかなく、大火事を起こしかねない埋もれ火はいつまでも消せないことになる。
 人生をふりかえり、繰り返してきた問題があれば、自分という「人間の奧深く根ざしたもの」をしっかりと問いたい。
 ただし、「朴訥さ」すらもが悪しき行為を生む原因の一つになりかねないのだから、ことは容易ではない。
 たとえば、今、手にしているものの範囲でことを行うタイプと、未来をあてにしてことを行うタイプがある。
 前者はお金を貯めてから家を建て、後者は借金して家を建てる。
 こうした人生への姿勢や感覚は容易に変えられないが、根ざしたものを観てゆくと、ここまで考えねばならない可能性もある。
 これでいいのか?これでよかったのか?これで大丈夫か?これをどうするか?

 どうにかして変えたいと願う方には、まず、生活上の小さな行為を意図して変えるようをお勧めする場合がある。
 食事の仕方や歩き方や話し方など、日々、繰り返す小さな行為を意図して変えてみることはバカにできない。
 努力を続けること、変えられる、変わった、という実感を持つことが肝腎。
 それは過去世の因縁、生まれと育ちの因縁、生き方の因縁などに対する小さな、しかし確かな挑戦である。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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