コラム

 公開日: 2014-11-25 

古き代の呪文の針のきしむ壁 篠原鳳作

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






〈紅葉をまとう共同墓『法楽の礎』〉

 明治39年生まれの俳人篠原鳳作は、東大卒業後、中学校で英語と公民を教えていたが、美術の指導も行ったところ、美術は大ブームとなった。
 無季の俳句を探求しつつ、30才で世を去った。

「古き代(ヨ)の呪文の針のきしむ壁」

 鳳作は神社か寺院か、あるいは古民家の古い壁に小さく開いた釘の穴を見つけたのだろう。
 そして、釘で留られたであろう呪の書かれた紙と、釘を打つ音と、呪う思いを感じとった。
 紙は塵となり、釘は崩れ落ち、人もいなくなったが、壁はいまだに打たれた時の軋(キシ)みを失っていない。
 なにしろ、穴は開けられたままなのだ。
 呪いをかけた人間の心に分け入ろうとするのでなく、釘を打たれる際の壁そのものにまで達している感性のはたらきには驚嘆する。
 もしかすると、鳳作の心にもこうした〈穴〉があったのかも知れない。

「うるはしき入水図あり月照忌(ゲッショウキ)」

 僧月照は、幕末期に生きた法相宗の僧侶である。
 西郷隆盛が薩摩藩主島津斉彬の死に伴い殉死しようとするのを止めたが、安政の大獄にからみ、錦江湾で入水した。
 『十善戒歌』を作り、十善戒に生きた。
 第一不殺生戒である。
 「世の中に 生きとし生けるものは皆 ただ玉の緒の 永かれとこそ」
 いのちあるものはすべて、生きたいという切なる願いを持っているというストレートな表現だが、それだけにいっそう、〈願い〉を漏らさず映し出す月照の純粋で温かな心がありありと感じられる。
 月照を悼む供養会で入水図を目にした鳳作には、僧侶でありながら西郷を高く評価して動乱に身を投じた月照の思いが「うるはしき」と偲ばれたのだろう。
 麗しい死の場面。
 やはり、鳳作の世界である。

「我も亦ラッシュアワーのうたかたか」

 大正時代のラッシュアワーとはいかなるものか見当もつかないが、「うたかた」とは、ただごとではない。
 今から100年も前、通勤バスや電車に揺れる人々が〈運ばれる大衆の一人〉という意識を持っていたのだろうか。
 水に浮かんでは消えるアブクとして自分を観ている鳳作は、生徒たちの心へ何を与え、美術への関心を高めたのだろうか?

「ふるぼけしセロ一丁の僕の冬」

 セロは今で言うチェロである。
 宮澤賢治の『セロ弾きのゴーシュ』でわかるとおり、当時はセロと呼ぶのが一般的だった。
 冬のガランとした居室は殺風景で、相棒は古いセロ一丁しかいない。
 セロの巨大さが他の小物たちを背景へ追いやり、空間がガランと感じられる。
 セロの持つ古さ、時間の積み重なりが作者の孤独をやや、和らげている。

「しんしんと 肺碧きまで 海の旅」

 鳳作の句として最も有名なものである。
 海を眺めている作者の「心」でなく「肺」へ碧さが浸透するという感覚と表現は凄まじい。
 肺から息が出て行き、新たな空気が肺へ入って来る一息ごとに、碧さが全存在を染めて行く。
 仏教の瞑想に、ありありと観る「観」の方法がある。
 鳳作はどこかで体験したのだろうか。

 自分と世界の存在をどう、とらえるか。
 鳳作の視点には考えさせられる。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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