コラム

 公開日: 2014-12-06 

グローバリゼーションは頼りになるのか? ―富の偏在と格差の拡大をもたらしたシステムについて―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈松本零士の招待券をお分けしています〉

 私たちの文明の行き詰まりはどこから来ているか?
 これほど成長!成長!のかけ声が世界中で叫ばれていながら、なぜ、ごく一部の人にのみ富が集中し、アメリカでも日本でもヨーロッパでも、民主主義を支えてきた中間層が没落し、格差が拡大し続けているのか?
 なぜ、先進国の背中を追いかけてきたはずの中国において、早くも、バブルがはじけかかっているのか?
 これまでの〈成長〉は、現実問題として、いったい、誰のためだったのか?
 
 そもそも、閉じられた世界であるはずの地球上で、限られた資源を用いた経済成長がどこの国でも、無限に成し遂げられるなどということがあり得るのか?
 限られた食糧は、科学力による増産だけで、増え続ける人口を満たし得るのか?
 ふり返ってみれば、私たちは、いつの間にか〈鼻の先にニンジンをぶら下げられた馬〉にさせられ、決して〈足を知る〉ことなく、〈もっと、もっと〉と、必要以上に貪るよう誰かから尻を叩かれているのではないか?

 こうした疑問へ見事に答えたのが、経済学博士水野和夫氏著『資本主義の終焉と歴史の危機』である。
 平成26年3月19日に発行され、8月現在ですでに第10刷となった隠れベストセラーである。
 豊富なデータと斬新な視点からの分析に満ちた同書を三度、読んだ。
 そして、多くの方々が参考にされればよいと思えてならない。
 なかなか専門書になじめない方や、読む時間のない方のために、データの分析といった部分を省き、前半の100ページにおけるポイントのみをいくつか紹介しておきたい。
 関心のある方は、ぜひ、全文を読んで見ていただきたい。

○新自由主義と金融帝国化との結合

「アメリカの金融帝国化は、決して中間層を豊かにすることはなく、むしろ格差拡大を押し進めてきました。
 この金融市場の拡大を後押ししたのが新自由主義だったからです。」

「新自由主義とは、政府よりも市場の方が正しい資本配分ができるという市場原理主義の考え方」

「資本配分を市場に任せれば、労働分配率を下げ、資本側のリターンを増しますから、富む者がより富み、貧しい者がより貧しくなっていくのは当然です。
 これはつまり、中間層のための成長を放棄することにほかなりません。」

 アメリカの金融審本はとっくに、モノづくりなどによる利益の追求から、お金そのものを秒刻みで転がすことによる利益の追求にシフトしています。
 強者に勝利が約束されている自由競争を唯一の正義とし、お金が世界中を自由に動き回れるようにするため、各国の〈事情〉をすべて排除しつつ、あっと言う間に、ここまで来ました。
 国民の安全と幸せに責任を持つ国家の縛りは、すでに、どこの国でも破壊されつつあります。
 自由競争は、地球上の地域それぞれに必ずあるあらゆる〈事情〉を許しません。
 そして、利益の〈分配〉が資本側の自由裁量に任されるなら、資本は原理的に資本の増殖を第一とするので、いつまで経っても、労働側を豊かにするために分配は起こりません。
 私たちが感じる現代の〈無慈悲さ〉はここから来ていると考えられます。

○「長い21世紀」の「空間革命」の罪

「グローバリゼーションが加速したことで、雇用者と資本家は切り離され、資本家だけに利益が集中していきます。
 21世紀の『空間革命』たるグローバリゼーションの帰結とは、中間層を没落させる成長にほかなりません。」

「資本主義は『周辺』が不可欠なのですから、途上国が成長し、新興国に転じれば、新たな『周辺』をつくる必要があります。
 それが、アメリカで言えば、サブプライム層であり、日本で言えば、非正規社員であり、EUで言えば、ギリシャやキプロスなのです。
 21世紀の新興国の台頭とアメリカのサブプライムローン問題、ギリシャ危機、日本の非正規社員化問題はコインの裏と表なのです。」

 ここで言う「周辺」とは、資本側に利益をもたらす地域であり、階層です。
 労働者は見事に道具となってしまいました。
 資本家によって自由に動かされる企業と派遣会社が、生殺与奪の絶対権力を持って支配しています。

○「資本のための資本主義」が民主主義を破壊する

「国境の内側で格差を広げることも厭わない『資本のための資本主義』は、民主主義も同時に破壊することになります。
 民主主義は価値観を同じくする中間層があってはじめて機能するのであり、多くの人の所得が減少する中間層の没落は、民主主義の基盤を破壊することにほかならないからです。」

 中間層がしっかり存在し、力を持っていればこそ、資本家と経営者と労働者との三者によって、三方共に妥当な利益を手にする健全なシステムが構築されます。
 しかし、資本が資本の論理のみで自由に活動する社会になれば、健全な民主主義は消えてしまうしかありません。 

○先進国の過剰マネーと新興国の過剰設備

「そもそも、グローバリゼーションとは、『中心』と『周辺』の組み替え作業なのであって、ヒト・モノ・カネが国境を自由に越え世界全体を繁栄に導くなどといった表層的な言説に惑わされてはいけないのです。」

「中間層が没落した先進国で、消費ブームが戻ってくるはずがありません。」

「現在の課題は、先進国の過剰マネーと新興国の過剰設備をどう解消するか、なのです。
 この問題の困難さは、このふたつの過剰の是正が信用収縮と失業を生み出すことにあります。
 時間をかけるしかないのです。
 そしてこの間、先進国ではゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレが続くことになります。」

 資本主義は、発生以来、地球上のどこかに必ず、そこから儲けるための地域を探しつつ膨張してきました。
 かつては、海上の覇権を握ったイギリスなどが世界をまたにかけて儲けました。
 こうした構造を、「中心」、「周辺」と言います。
 現在のグローバリゼーションにあっては、空間的な「地域」はなくなりつつあります。
 新たな「地域」として、日本においては非正規雇用の労働者という〈階層〉が作られたのです。
 
○現代の「価格革命」が引き起こした実質賃金の低下

「1970年代半ばに現代の『価格革命』が起こりました。
 すなわち資源価格が高騰したせいで、企業はそれまでのように利潤をあげることができなくなり、その利潤の減少分を賃金カットによって補おうとしたのです。」

「企業の利益と雇用者報酬とが分離し、2006年に至っては企業の利益はあがっているのに、雇用者報酬が減少するという現象が起きてしまったのです。
 こうした傾向は、データが存在する130年間の歴史において初めてのことです。」

「資本側はグローバリゼーションを推進することによって、資本と労働の分配構造を破壊しました。
 グローバリゼーションを進めた資本側は、国境に捉われることなく生産拠点を選ぶことができるようになったのです。
 資本側の完勝と言ってもいいでしょう。
 景気回復も資本家のためのものとなり、民主主義であったはずの各国の政治も資本家のために法人税率を下げたり、雇用の流動化といって解雇をしやすい環境を整えたりしているのです。」

 世界をまたにかける大企業が空前の利益を上げている一方で、労働者の実質賃金が下がっているのは、資本と労働の健全な分配構造がなくなり、資本の都合第一のシステムがどんどん進んでいるためです。
 そもそも、完全な自由競争の社会になれば〈分配〉という理念自体が邪魔ものでしかありません。
 資本家にとっての労働者の価値とは、安い賃金ではたらいてくれること、そして、モノを継続的に消費してくれることの二つです。
 大企業が果てしなく儲かれば、やがて社会の隅々まで潤うなどということは、原理上、あり得ないのではないでしょうか。
 多くの国民が潤い、希望の持てる生活をするためには、国民の生活に責任を持つ国家による適切な〈分配〉が欠かせないと考えられます。

○新興国の近代化がもたらす近代の限界

「13.6億人の中国人全員が、あるいは12.1億人のインド人全員が豊かになるわけではない」

「16世紀に近代が幕を開けて以来、約500年をかけて、2010年時点の先進国12.4億人は豊かになりました。
 この近代資本主義の特徴は、およそ全人口の2割弱にあたる先進国が、独占的に地球上の資源を安く手に入れられることを前提としています。」

「70億人のエネルギー消費をまかなえるだけの化石燃料は地球上にないのですから、全世界の近代化というのは不可能なシナリオです。」

 閉じられて限りある地球上の資源を有利に用いてきた一部の国のみが、ここまで豊かになりました。
 全世界の国がそうした先進国と同じように資源を用いて豊かになるための資源的余裕はもはや、地球のどこにもありません。

○グローバル化と格差の拡大

「現在のグローバリゼーションで何が起きるかというと、豊かな国と貧しい国という二極化が、国境を越えて国家の中に現れることになります。」

「バブル崩壊のたびに企業がリストラを進めるため、先進国では中間層が最大の被害者となるのです。」

「現代のグローバル資本主義では、必然的に格差が国境を越えてしまうので、民主主義とは齟齬(ソゴ)をきたします。」

 このまま進めば、資本はますます膨れ上がるでしょう。
 格差は「豊かな国」と「貧しい国」という国家間だけでなく、同一国内の「豊かな人々」と「貧しい人々」の間にも存在し、これからますます大きくなることでしょう。
 グローバル資本主義の〈原理〉によってもたらされた格差を、〈原理〉をそのままにして解消できましょうか?
 ましてや、〈原理〉をより、押し進めることによって解消できるなどということがあり得ましょうか?

○中国バブルは必ず崩壊する

「余剰マネーは少しでも利潤の多く得られるところを目指して世界中を駆け巡りますから、どうしても新興国に過剰な投資が集まります。
 すでに中国では誰も住まないようなマンションが建ち並んでいるようですし、景気の減速によって過剰投資が危険視されています。」

「過剰生産となれば、中国の外側に中国の過剰投資を受け入れることのできる国はないので日本以上のバブル崩壊が起きるのは必然だと思われます。」

「17世紀のイギリスがそうであったように、21世紀の中国も供給力過剰の『デフレの時代』を迎えることになることでしょう。」

「資本主義は内在的に『過剰・飽満・過多』を有するシステムなのです。」

「もはやグローバル資本主義に対して、国民国家は対応不全に陥っている状態なのです。」

 膨れ上がり、国家の枠を超えた資本が「余剰マネー」となって、世界中に「過剰」な状態をもたらしています。
 それぞれ異なった〈事情〉を持つ「国民国家」が、こうした気ままな行動を、自分たちの安全と幸せのために統御できないとは、何と恐ろしい事態でしょうか。

○資本主義システムの覇権交代はもう起きない

「近代を延命させようとする21世紀のグローバリゼーションは、エネルギーが無限に消費できることを前提としていますから、16世紀以来の近代の理念と何ら変わりがありません。」

「近代の延長線上で成長を続けている限りは、新興国もいずれ現在の先進国と同じ課題に直面していきます。
 むしろ、グローバリゼーションによって成長が加速している分、遠くない将来に同様の危機が訪れるでしょう。
 すでに、現在、少子高齢化やバブル危機、国内格差、環境問題などが新興国で危ぶまれていることからも、それは明らかです。」

「もはや近代資本主義の土俵のうえで、覇権交代があるとは考えられません。
 次の覇権は、資本主義とは異なるシステムを構築した国が握ることになります。
 そして、その可能性をもっとも秘めている国が近代のピークを極めて最先端を走る日本なのです」

 これまでと同じく、グローバル資本主義を押し進めることによって本当に、私たちは安全と幸せが得られるのでしょうか?
 破綻し、高齢化率が45パーセントとなった北海道の夕張市では、お金をかける医療行為がガクンと減ったのに、市民の工夫と助け合いにより、お年寄りも病人も希望を持ち、見事に長生きしています。
 ローラーをかけるように〈事情〉を押し潰すグローバル資本主義的発想へ任せるのではなく、〈事情〉に対応する現場の人々の思いやりと叡智が生きるシステムによってこそ、私たちの困難は根本から解決され、安全と幸せを求める確かな歩みが可能になるのではないでしょうか。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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