コラム

 公開日: 2014-12-07 

年末、年始の過ごし方 ―種田山頭火に1万2千年の伝統を想う─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈タンポポの綿毛のように日々、托鉢を行っていた時代〉

 いよいよ年の瀬です。
 日本人が古来、御霊(ミタマ)祀りを行い、厳粛な気持で新たな年を迎えたことを思い出しておきたいものです。

 日本の仏教は、西から入ってきてすぐ、縄文時代に発すると思われる神道の祖霊信仰と融合し、氏寺(ウジデラ…同じ氏姓を持った一族の祖霊を祀る寺院)として寺院建築が始まりました。
 それ以来、「死ねば仏になり、やがては神になる」という祖霊信仰が連綿として続いてきました。
 庶民は、明治の廃仏毀釈(ハイブツキシャク)によって仏教が弾圧を受けるまでずっと「仏神」と呼んで両方を尊び、家々に仏壇と神棚が設けられました。
 仏は無用という国家神道の暴風後、「神仏」と言葉が変わってから、わずか250年しか経っていません。

 およそ人類は、いかなる時代にあっても、いかなる国家にあっても、いかなる民族にあっても、必ず、先に逝く血縁者を手篤く葬る葬送儀礼を行い、血のつながりと心のつながりを尊んできました。
 因果応報と輪廻転生(リンネテンショウ)を根本真理とする仏教は、儀礼を深化させ、この世とあの世のつながりを前提とする追善供養という精緻な形を創り上げました。
 他のためになることを、み仏の慈悲の顕れとし、菩薩(ボサツ)の心ともする大乗仏教(ダイジョウブッキョウ)は、この世の私たちが行う善行(ゼンギョウ)の功徳を、祈りによってあの世へも分かち合い、先に逝った同族などの安心を願うようになったのです。
 原始仏教にあっては、因果応報を信じ、善き結果をもたらす善き行為を行うのは、何よりもまず、自分自身が苦を脱するためでした。
 それが時代と共に、善き行為の根本は他のためになることであると気づかれ、自己中心を離れて他のためになろうとする存在こそ観音菩薩であり、地蔵菩薩であり、あるいは大日如来の使者である不動明王であると信じられるようになりました。

 ところで、最近は「日本の心を取り戻そう」という思潮に乗って、教育のありようなどが論じられています。
 最も取り戻したいものの一つが、いのちへの感謝です。
 それは、空間的に広げれば生きとし生けるもの、あるいは大自然や地球への感謝となり、時間的に遡ればご先祖様への感謝となります。
 空間的、時間的に隔っている存在への想像力がなければ、いのちへの感謝は深まらず、どこまで行っても〈今、ここにいる自分〉を可愛がる自己本位から抜け出せません。
 日本の心を考える時、1万2千年以上の伝統がある神道による祖霊信仰、千5百年に及ぼうとする仏教による追善供養を抜きにするわけにはゆきません。

 ちなみに、57才になった流浪の俳人種田山頭火は、母親の47回忌を迎え、詠みました。

「うどん供へて、母よ、わたくしもいただきまする」

「窓あけて窓いっぱいの春」

 母親の死後46年目の命日を迎え、うどんをお供えして年忌供養とし、それを自分も食べました。
 また、春の気配と共に母の気配もたくさん訪れてくれるように願い、居室の窓を大きく開け放ちました。

 49回忌にはこう詠みました。

「たんぽぽちるやしきりにおもふ母の死のこと」

「けふはよいたよりがありさうな障子あけとく」

 綿毛になったタンポポが、たちまちのうちに散ってしまう様子を眺め、突然、この世を去った母親のことごとが思い出されました。
 また、命日には、母親の思いが気配となって自分を訪れてくれるのではないかと期待して、障子を開けておいたのです。

 他界する半年前にまとめた句集『草木塔』の冒頭です。

「若うして死をいそぎたまへる母上の霊前に本書を供へまつる」

 わずか10才で失った母なる祖霊と共に生きた山頭火のまごころは、70年経った今も、私たちの心をとらえて離しません。

 新たな年を迎えるこの時期には、静かに自分のいのちと心をルーツを想い、自分を支えてくださっている無限のいのちあるものを想い、感謝しつつ合掌したいものです。
 そして、そのような者として、新たな夢や希望を描きたいものです。
 これこそが日本本来の年末、年始の過ごし方です。
 人と人との距離がどんどん遠くなり、淋しく、乾いた心になりつつあるこの時勢にあってこそ、時間的、空間的な縁を想って感謝し、麗しく、潤いに満ちたこの世、すなわち本来の日本を取り戻そうではありませんか。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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