コラム

 公開日: 2014-12-11 

美智子さまの以心伝心と、宝もののパッサーについて

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 12月7日、BS朝日は 「皇室スペシャル 美智子さま 傘寿に込められた想い 秘蔵映像で綴る愛と苦悩の80年」を放映した。
 同番組を観たA氏から連絡が入った。
「美智子様は、ご自身が失語症になっていた間も、天皇陛下と共に各種被災地の慰問などにでかけられました。
 そのシーンで目を疑う場面がありました。
 美智子様は当然、言葉を発することができなかったのに、幾人かの人々は、はっきりと自分を励ます声を聴き、それが支えになったと証言していたのです。
 和尚が時々『通じる』と言うのは、ああいうことですか?」

 武道と哲学のための学塾『凱風館』を主催している内田樹氏は『街場の戦争論』において、演出家だった故竹内敏晴の言葉を紹介している。

「私たちのからだは、聞く、つまり音を選んでいるのであって、無差別に音が飛びこんでくるわけではない。」

 聴覚の弱い竹内敏晴は、自分の魂と五感を総動員して〈聴く〉という能力を高めていた。
 それは、そこへある種の共振を起こさせるものにのみ反応するということでもあり、共振を発し沁み通ってこない言葉たちはただ、通り過ぎていった。

 内田樹氏は言う。

「僕たちは心に思ったことを適切な言葉に翻訳して口に出せば言葉が届くだろうと漠然と信じています。
 でも、それは違う。
 皮膚はある種の境界線として機能している。
 その境界線を超えることのできる言葉しか僕たちには届かない。」

 また、内田樹氏は、こうも言う。

「僕が門人に要求するのは、僕の身体に感覚的に同期することと、僕の話す言葉が直接身体に触れるのを経験してほしいということ、それだけです。」

 思えば、私が密教と居合の伝授を受ける道場でもそうだった。
 他の行者や門人がどうだったかはわからないが、師の前では、全存在を目と耳と皮膚に特化し、あらゆる情報を残らず記憶しておきたいと願っていた。
 観たとおりに動きたいと願った。
 聴いたとおりに読誦したいと願った。
 受け取ったとおりに観想したいと願った。
 通じてくるように生きたい、そして、求める人には自分も通じさせたいと願いつつ、ここまで来た。
 内田樹氏と同じく、「学ぶ」とは、商品を買うことによって「エンドユーザー」になるのとは異なり、得たものを誰かに、何らかの形でバトンタッチする「パッサー」になることであると思っている。

 美智子さまはずっと、辛い境遇に陥った人々のすぐそばへ出かけ、思いやる心を言葉や表情や仕草や佇まいで表現してこられた。
 だから、慰問の場にあって、失語症のために物理的な喉の振動を起こせなくとも、心と全身から思いが発せられた時、それは〈境界線〉を超え、魂と五感を総動員して〈聴く〉ことに集中していた聴衆に伝わったのだろう。
 聴いた方々は、まぎれもなく、幻ではない宝ものを受け取られた。
 その宝ものはきっと、生きることに根本からかかわってくれるに違いない。

 教育も医療も宗教も何もかもが商品化される時代にあって、私たちは〈魂と五感を総動員して〉何を受け取るべきか?
 あぶくのように軽い言葉たちに満ちた情報に惑わされず、何を宝ものとして生き、何を「パッサー」としてパスするか?
 よく考えてみたい。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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