コラム

 公開日: 2014-12-13 

隠形流(オンギョウリュウ)居合の昇段試験 ―共にパッサーとなろう―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈高橋香温先生の書道教室における来年の書き初め(1月4日)は自分や家族などの守本尊様です。どなたも自由に参加できます〉

 隠形流(オンギョウリュウ)居合の昇段試験を行った。
 チャレンジしたのは60代の方と80代の男性である。
 いずれも剣を握ったこともないまま、還暦を過ぎてから入門された方々である。

 テストは25通りに剣を振るものだが、経文を暗誦する観想が楽ではない。
 じっと構えたまま、2分ほど続く観想もある。
 しかし、お二人共、見事、やり抜かれた。
 Aさんが笑顔で言われる。
「途中で、あっ、違う、と思ったらもう、どこをやっているのか、わからなくなりました。
 観想を口にしているうちに、足がプルプルになってきました」
 Bさんが深刻な顔で言われる。
「抜けた言葉に気づきませんでした。
 うーん、そうですか」
 
 テスト中、お二人は、気迫と尊厳に満ちた姿になっておられた。
 いい年をした男性が、自分に厳しい人、他人に優しい人、角張らない人、正義を貫く人、調和のとれた人になろうと真剣に過ごされたであろう準備期間は、見事な結実をもたらした。

 最近、読んだ神戸女学院大学名誉教授内田樹氏の著『街場の戦争論』にあるパッサーについて簡単な法話を行った。
「内田樹師は言います。
 月謝を払って伝授を受ける行為は、対価を払って商品を買う行為とは違う。
 買えば、買い手はエンドユーザーになります。
 しかし、弟子が師について学べば、師から何かを受け取り、自分もそれを誰かへ受け渡すパッサーになるのです。
 私はこの文章を読んで考えました。
 確かに私は師から受け取りお弟子さんたちへ渡しながらここまで来たパッサーである。
 しかし、お弟子さん方は、誰しもが道場を開いて〈伝授する人〉になるわけではない。
 私も引退したらどうなるのか?
 そしてこう気づきました。
 今、学んでいるとおり、実の良縁にめぐり会ったおりに、舞い上がらず、自分へ厳しく生きられる人間になれば、その生きざまそのものが、接する人々へ無言で大切なものを渡していることになるはずだ。
 実の悪縁に苦しむ人へ、『こういう時こそ、心のどこかに和やかさを保ちながら生きてみましょう。周囲の善行に手を貸してみましょう』と言えるはずだ。
 剣法そのものを教えずとも、立派なパッサーになっているではないか……。
 皆さんは、必ずや、仮の良縁にあってはこれまでより優しく、仮の悪縁にあってはこれまでよりも正しく対応できるはずです。
 人生が変わり、大切な何ものかのパッサーになりました。
 今日の日を忘れずに、次の段位を目指して励みましょう」

 人間をつくる隠形流居合の目的は、仏法と剣法に導かれてよきイメージを持ち、その方向へ向かって生きることである。
 通称「高齢者」である方々がテストで見せた青年のようなまじめさ、終わって隠しきれなかった弾ける嬉しさに接したひとときは、師として弟子から受け取ったこの上ない宝ものだった。
 Aさん、Bさん、本当にご苦労さまでした。
 そして、ありがとうございました。
 また、やりましょう!

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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