コラム

 公開日: 2014-12-18 

骨葬、共同墓、そして失った〈家族〉感覚について ―捨て去ったり、忘れたりしていたものは何か?―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈今日は好天、自然墓をお見守りくださる笹倉山がはっきとり見えます〉


〈正面のお大師様から縁結びの紐が延びています〉

 雪が降りしきる中で『自然墓』への埋骨を行いました。
 他県から連れてこられたのです。
 ほとんど、物音のしない世界で唱えた般若心経は、灰色になった視界の向こうにそびえる笹倉山へも届くかと思われました。
 本堂で熱いお茶をいただきながら、ご当主が言われます。
「みんなにも正面のお山を見せたかったけど、今日は残念だな。
 実に、『山へ還る』という感じになるんだ。
 来春、また、みんなでお参りに来よう」
 中学生の娘さんが、ストーブに手をかざしながら、明るく応えます。
「うん、来ようね。
 また、来よう」
 帰りしな、奥さんが入り口にある塗香(ヅコウ)に目をとめ、全員が作法どおりに心を清めました。
 本当は入堂する前に行うものですが、いつ、行ってはいけないという決まりはありません。
 きっと、桜の咲く頃にまたご一同で、ご来山され、今度は塗香の作法を終えてからご本尊様へお詣りされることでしょう。

 最近は共同墓への埋骨が増えています。
 名前を貼り出したりしなくてもよい方は『自然墓』、表札のように名前や戒名などを明確に示したい方は『法楽の礎』を選ばれることが多いようです。
 また、骨葬(コツソウ)も多くなりました。
 とにかく斎場でご焼骨をしておき、本堂でご葬儀と百か日までのご供養を行い、そのままお骨を預かったり、あるいは共同墓へお納骨したりと、一日で済まされるのです。

・当山でのご葬儀を求めておられながら、御尊家様と当山の日程がなかなか合わない。
・枕経、お通夜、ご葬儀、納骨、と休日がとれない。
・ご遺族間で宗教の違いなどがあり、一連の流れでお送りできない。
・一連の流れを行う資金的余裕がない。
・まったく不意のできごとで、何もできないままに、ずっとお骨を置いてある。

 こうした方々が、本堂で引導が渡されたことを確認し、お骨が自然へ還る形を見届けて安心されます。
 ご葬儀を行わず、共同墓前でのご供養のみにてお納骨されるのも自由です。

 施設の方や役場の方や、あるいは司法書士の方からのご質問も相継いでいます。
「葬儀をして納骨するのに、いくら用意すれば間に合いますか?」
 いつも、このようにお答えしています。
「いずれも共同墓ですが、『自然墓』へのお納骨は10万円、お名前を貼り出す『法楽の礎』へのお納骨は20万円、年間管理料など、その後でかかる費用は何もありません。
 ご葬儀については、戒名料も含め、みなさんの良識や常識へお任せしています。
 戒名を求めるかどうかも、みなさん次第です」

 立教大学の特任教授平川克美氏は、これからの日本について、こう指摘しています。

「人口が減少し、経済がシュリンク(縮小)していくこれからの日本では、おカネに頼ってばかりではいられなくなります。
 近くにいる人どうしが、助け合わなければ生きていけない時代が訪れつつあるのです」

「おカネだけが飢えから逃れる手段ではありません。
 コミュニティをつくるのも飢えから逃れるひとつの手段です」

「おカネがなくなる、あるいは無価値になる可能性は、現代においても誰にも起こりうることです。
 そうなったときにどうやって生き延びるか――。
 シンプルにいえば、まわりに助けてくれる人がいれば生きていけます」

「最後は、人間ひとりでは生きられません。
 縁を大切にして生きていけば、人生そんなに悪いものにはならないと思うのです」

「家族制度の歴史は、国家や企業の歴史代もずっと長く、人間の歴史と同じぐらい古いものだと考えることができます」

「わたしたちは、再び家族制度を復活させたり、因習的な世界に戻っていくことはできないでしょう。
 個人という概念、人権という考え方に目覚め、それらを克ちとってきた歴史を巻き戻すことなどできない相談です」

「この壊れた家族制度に代わりうるものを見出していく必要がある」

「家族制度に代わりうるものが何かを簡単に名指すことはできません。
 まだ、それがどんなものであるのかは、誰も知らず、誰も実践してはいないのです。
 そういった新たな共同体が簡単に根付くことができるとも思いません。
 わたしたちは、現代文明の恩恵を受けすぎており、その利便性や心地よさを簡単に手放すことはできないからです。
 それでもわたしはもう一度、わたしたちが捨て去ったり、忘れたりしていたものを思い出しながら、どこかに漂流しているそれらの切片を寄せ集めることぐらいならできそうな気がしています」

 東日本大震災の直後から、さまざまな方々がご来山されました。
「水を分けてください」
 このあたりは、電気も電話もダメでしたが、水道だけは生きていました。
「ローソクを分けてください」
 明かりを求めて来られました。
 また、全国各地から支援物資が届き、ご来山される方々へもお分けしました。
 長蛇の列に並び、ガソリンを届けてくださったご夫婦もおられます。
 ご不幸があった時は、ガソリンがなく、初めてご遺族の送迎を受け、ホコリと格闘している葬祭会館さんや、被災したご自宅でも引導を渡しました。
 やがて、お骨やお位牌を預ける方々が相継ぐようになりました。

 ここに来て今、思います。
 寺院とご縁を結ぶ方々は、知らず知らずのうちに、ある種の〈家族〉になっておられるのではないか。
 失った身内を思い出しながら足を運び、日常的な〈追われる〉意識から離れてゆったりとした時間を過ごす方々は、淋しさや悔しさなどの度合いはそれぞれ異なっていても、一つの〈場〉に佇む人として、いっとき、同じ世界の住人になっておられるのではないでしょうか?
 そうした方々が言葉を交わし合い、自分のご先祖様だけでなく隣のお墓へもお線香を捧げ、あるいは寺子屋やお花見や芋煮会などで談笑するお姿を目にすると心の底から嬉しくなり、寺院を開基した甲斐があったとみ仏へ感謝する思いが強まります。
 皆さんと共に、「わたしたちが捨て去ったり、忘れたりしていたものを思い出しながら」やって行きたいと願っています。
 骨葬も共同墓も一代墓も、逝かれたお身内の安心を求めることが縁となり、新しい時代にふさわしい緩やかで温かなつながりを創り出すきっかけになって欲しいと願っています。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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