コラム

 公開日: 2014-12-31 

真智の開発をめざして(その12) ─親とご先祖様の恩を考えつつ新年を迎えましょう─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 今年最後のブログです。
 親やご先祖様に感謝しつつ、年を越えようではありませんか。

「五智」とは、優しさ・厳しさ・正しさ・優雅さ・尊さであり、その五光により、妄知(モウチ…おかげさまと心の底から思えない惑った心)も邪知(ジャチ…万事を我がためとするよこしまな心)も消え失せます。

 さて、「正しさ」は、五つの恩を深く想う時に実現されます。
 それは、国家社会の恩、親とご先祖様の恩、人間や生きとし生けるものの恩、師や教え導いてくださる方の恩、仏法僧の恩です。
 今回は、親とご先祖様の恩を考えてみましょう。

1 ザビエルの困惑

 今から450年以上前、キリスト教による世界制覇を目指して日本へやってきたフランシスコ・ザビエルは当惑しました。
 日本人は、善人であれ、悪人であれ、逝った人を等しく悼むからです。
 神を信じて天国へ行き、信じないで地獄へ堕ちるだけでは済まされないからです。
 そして、故国スペインへ書き送りました。

「日本の信者には一つの悲嘆がある。
 それは、私たち(キリスト教の宣教師)が教えること、すなわち、死後、地獄に堕ちた人は全然救われないことを非常に悲しむのである。
 亡くなった両親をはじめ、祭祀や先祖への愛ゆえに、彼らの悲しんでいる様子は哀れである。
 死んだ人のためにおおぜいの人が泣く、そして私に尋ねる。
 祈りをもって死んだ人を助ける方法はないものか……と、しかし、私はただ、助ける方法はないと答えるのみである。」

 あの時代も、仏教を信じる日本人には追善供養という「助けられる方法」がありました。
 そして、現代人もまた、迷うことなくこの宗教行為であり文化的美風を実践していますが、それは、決して一朝一夕に成ったものではありません。

2 縄文時代

 亡くなった人を悼む日本人は縄文時代、死者のために土偶を壊して地中へ埋めました。
 そして、新たな土偶を作りました。
 大地へ還し、大地から創るという象徴的行為を行いました。
 死者がきちんと〈あの世〉へ行き、いつか又、この世へ再生できるよう、手助けしないではいられなかったのです。
 この世で人としての役割を果たした存在は、死によってこの世から消えたからといって、私たちと無関係になるのではありません。
 縄文時代に生きたご先祖様の心を想うと涙が溢れそうになります。

3 弥生時代

 『古事記』は、天照大神(アマテラスオオミカミ)出現の様子を記しています。
 伊弉諾尊(イザナギノミコト)が、自分の首にかけていた頚珠(クビタマ)をとって、珠の音をさせながら天照大神へ渡すのです。
 御倉挙神(ミクラタナノカミ)と呼ばれるこの頚珠こそ、穀倉に祀られた稲の精霊の依り代であるとされています。
 珠(タマ)は霊(タマ)であり、弥生時代の人々は珠祀り(タママツリ=霊祀り)を行うことにより、穀霊や地霊などの力を受ける一方、人そのものもまた、珠から力を授かって無事安全に過ごせるよう祈りました。
 人がこの世とあの世を行き来するのと同じように、神々もまた、常世の国から珠の音などを縁としてこの世に顕れてくださるという感覚が生まれました。

4 古墳時代

 時代が下り、三世紀の日本人の様子は『魏志倭人伝(ギシワジンデン)』に書かれています。
 死者が出れば葬儀を行い、沐浴を行った近親者などは10日間、喪に服します。
 喪主は泣き、肉食は避けられ、他人は歌舞飲食を行いました。
 造られた古墳は穢れなき聖なる世界、すなわち神の世界であり、死者の霊は神に昇華するという感覚が生まれました。
 この頃に生まれた黄泉(ヨミ…あの世)という言葉について、国文学者の中西進氏は指摘しました。
 「ヨ」は「世」や「代」であって生命を意味し、「ミ」は海神(ワタツミ)に通じる神霊を意味するので、黄泉は「生命を支配する神の世界」ではないか。
「人間は生きているから死ぬのであって、そういう意味では生は一時的な世界である。
 それに対して死の世界は永遠であり、死ねばさらに死ぬことはない。」
「永遠の生命つまり常世(トコヨ)が宿っている。」

 こうして私たち日本人は、二つの〈あの世観〉を熟成させてきました。
「人は死んで清まり、やがては神になる」
「人は永遠なるみ仏の世界からこの世へやってきた旅人であり、やがて故郷であるあの世へ還る」
 そして、悼み、供養し、あの世の御霊もこの世の私たちも深い安寧を得られる繊細で精緻な日本的方法を創造してきました。

5 トルストイの天使

 かつて、トルストイは指摘しました。
「人生における行動の最も重大な問題は、合理的な人間によって決定的に解決されない。
 なぜかと言うと、そこには彼の知ることのできない多くの結果があるからだ」
「人生の最も重大な問題は、個人的衝動によって導かれることも、情動の結果を考量することによっても導かれない」
「彼の先見し得る結果は多種複雑であって、時としては自分にも他人にも有益であり、無益であり、相互矛盾しているように見える」
 次に、決定的な寓話を挙げます。

「一人の天使が地上に降りて来て、揺りかごに眠っている子供を殺した。
 なぜそんなことをしたかと訊かれた天使は、この子は成長して非常な罪人になり、この家の幸福を破壊するからであると答えた。」
 私たち人間は、決して〈合理性〉だけでは耐えられず、生きられない存在です。
 トルストイの結論です。

「宗教は合理的な人間及び一切の合理的人類の生活上、欠くことのできないものであった。」

6 親とご先祖様の恩

 私たちは、神道と仏教という二つの基本的宗教によって、〈耐えきれず、生きられない〉という状況を克服しつつ、明日を目ざすことができます。
 今年も、家族や恩人や知人の死に打ちのめされ、崩れそうな方々と共に悼み、供養することによって、立ち直り、救われる数多くの現場を体験してきました。
 遙かな時代から、ご先祖様方は尊い感覚を深めて来られ、両親は、いのちと共に、ご先祖様から受け継いだ感覚とそれに導かれた具体的行動の方法を子供へつなぎます。
 子供が成長し社会的役割を果たす過程において、合理的思考だけでなく、こうした感覚もはたらかせられれば、まっとうに生きて、大きく道を誤らないことでしょう。
 お父さん、お母さん、お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、そしてご先祖様、ありがとうございます。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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