コラム

 公開日: 2015-01-09 

ケイタイデンワで みんな 虫になっていく ―携帯電話・虫・幽霊・言霊―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 平成17年に発行された水無田気流(ミナシタ キリウ)氏の詩集『音速平和』を読んだ。
 巻頭の作品『電球体』にいきなり、ノックアウトされた。

「~

 今日もケイタイデンワで
 みんな
 虫になっていく
 虫になってみる
 虫の思想の羽音が
 青い闇の沸点を突き抜け
 
 『言葉が電磁波ともにフルエルノダ』

 ~」

 ここで言う「虫の思想」とは、言霊を失った自己完結的な〈つぶやき〉のことではないか。
 そそかしくケイタイデンワに文字を打ち込んでみると、それは目に見えぬ膨大な情報の闇へ吸い込まれる。
 相手へ届くはずの電磁波とはなったものの、受け取られるか、それとも受け取られないか、自分の手を離れて二者択一のデジタル世界へ投げ込まれた孤独な言葉は、自らの生と死に何らの決定権も持たず、ただ、震えているしかない。

 東日本大震災の被災地でジャーナリスト奥野修司氏が行っている〈幽霊の取材〉を思い出した。
 1月4日付の河北新報上で氏は言う。

「岡部病院(宮城県名取市)の看取り医療の取材で『お迎え』の重要性に気づいた。
 いまわの際に、亡くなった両親や親類を見る人は死に方が穏やか。
 その延長線で霊を見た人が被災地に多いと聞いた。
『うちの患者は2割くらい見ている』と言う医師もいた。
 もう特殊な現象ではないと感じた。」

 決して「いまわの際」だけの問題ではない。
 お年寄りが、「死んだ妻が時々現れるようになりました。すぐ来いとは言いませんが、もうすぐ逝くことが怖くはありません」などと言う。
 会うことによって、あるいは語りかけられることによって、今を穏やかに生きられ、死を迎える気持にも惑乱がなくなる。
 奥さんを亡くし、独り暮らしをするAさんは、妻に語りかけられもするが、無言で教えられる場合もある。
 ある時、節変わりを迎えるので箪笥を開け、ゴソゴソやっていたら、誰かがドンドンと箪笥を叩く。
 また、妻か、と思った瞬間、時分がトンチンカンなことをやっているのに気づき、「お前がいないとこうなんだよな」と苦笑しながら作業をやめたという。

「幽霊がいるかいないかを議論すると泥沼に入る。
 その人が見たという事実だけを素直に受け止めようと考えた。
 犠牲者と残された人の物語を、幽霊を軸に書きたい。」

 震災後たくさんの方々が霊的現象に悩み、ご来山された。
 幽霊を見たと怯える幼児たちへ大丈夫よと声をかけながら、本当は自分も見た恐ろしさに耐えられなかった保母さん。
 寺務所の奧に佇む幽霊の気配を所員皆が感じ、ご供養を申し出られた現場の所長。
 津波に母親が呑み込まれる瞬間のリアルなイメージから立ち直れない娘さん。
 ある橋へ車を乗り入れるたびにハンドルを取られる運転手さん。
 氏が言うとおり、皆さんが経験された「事実だけ」が真実なのだ。
 他者がとやこう言っても何ら救いにはならない。

「例えば、最愛の夫を亡くした妻の話。
 自暴自棄に陥り、死にたいと思う毎日。
 車で自損の重傷事故を起こしたりもした。
 ある時、夫の霊に会う。
 見守られている感覚が芽生え、お父ちゃんと一緒に生きようと思い直した。
 私はとても感動した。
 他にも犠牲者の霊の存在を感じ、生きる勇気をもらう話が多かった。」

 霊性を持ったあの世の存在を感得することは自然であり、その真実とどう向き合うかが、その後の生き方を動かす。
 もちろん、死に方をも動かす。

 幽霊との交感を行う人はきっと誰一人、〈虫〉になってはいない。
 言葉が介在しようとしまいと、言霊(コトダマ)が確かに行き来しているからだ。
 言霊は、この世の人々同士の間でも通じ、あの世とも通じ合う。
 言霊が伴う言葉には、孤独な「フルエ」がない。
 だからといって、ケイタイデンワを全否定する必要はないし、できもしない。
 ただ、すがる自分が〈虫〉の言葉しか知らなくなっていないかどうか、たまに、ふり返る必要はあるだろう。
 また、言葉に言霊を込め、霊性同士が交感できる言霊を用い、「青い闇」へ霧消しない言葉をきちんとキャッチできているかどうかも、考えてみる必要はあるだろう。
 
 平成18年、『音速平和』が第11回中原中也賞に耀いたことがとてもよく納得できた。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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