コラム

 公開日: 2015-01-14 

イスラム教徒も菩薩(ボサツ)になれる? ―『安心章』について―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈ユダヤ人をテロリストから救ったイスラム教徒ラッサナ・バシリー氏〉

 1月10日に開催した寺子屋のテキスト『安心章』の第八章「女人(ニョニン)成仏(ジョウブツ)」について、簡単に記しておきます。

 今回は、一部の経典によって女性が往生しにくいとされていた問題がテーマです。
 あまりにも当然ながら、お釈迦様にも女性の弟子がおり、お大師様も又、男女の分け隔てなく、ご縁に応じてお救いになられました。
 お釈迦様については、我が子を失って半狂乱になった母親キーサゴータミーが悟りを開いた話が有名であり、お大師様については、修行しても悟られずに苦しむ真井御前(マナイゴゼン)を救われた話が広く知られています。
 かつて、ブログ「仏法と男女の区別について」(http://hourakuji.blog115.fc2.com/blog-entry-4087.html)に書いたとおりです。
 み仏は、生きとし生けるものを「一子のごとく」区別なく救われ、仏法は男女の別なく救う教えです。
 
 そもそも論としては、一切のものは根本的に平等な存在であることが挙げられます。
 経典は説きます。

「一切衆生の色身(シキシン…物質的な身体)は常に此れ毘盧遮那(ビルシャナ…大日如来)の智身(チシン…精神的な心)と判し、男女(ナンニョ)等しく菩提(ボダイ)の益(ヤク)を被(コウム)る」

(一切の人々の身体と心は常に、大日如来のすべてを平等に観る智慧の顕れであり、男性であると女性であるとを問わず、平等に悟りを得られるという救いの中にある)

 地・水・火・風・空・識の六大(ロクダイ)によって成立している根本のありようをみ仏の目から見れば、人は等しく仏性(ブッショウ)を有する存在であって、転迷開悟(テンメイカイゴ…迷いを転じて悟りを開く)する資格や資質において何ら差別はありません。

 お大師様は説かれました。

「もし、信修するあれば、男女を論ぜず皆其人なり」

(もしも、信じ修行する者があれば、男であろうと女であろうと、等しくみ仏の子である本姿が顕れる)

 興教大師様は説かれました。

「破戒の僧尼も必ず往生を得、造悪(ゾウオ)の男女(ナンニョ)も定めて極楽に生ず」

(戒律を破った僧侶や尼僧も心がけと努力次第では、必ず苦を脱し、悪行を犯した男女にもまた、極楽へ行ける可能性が必ずある)

 なぜ、「根本的に平等な存在」であるのかは、在るものを在りのままに観ればわかります。
 お大師様は、在りようを3つの面から明らかにされました。
 一つは、存在するものの〈構成要素〉です。
 もう一つは、存在するものの〈姿〉です。
 もう一つは、存在するものの〈はたらき〉です。

 構成要素は、前述のとおり、地・水・火・風・空・識の六大(ロクダイ)です。
 このうち、「地・水・火・風・空」は目に見える現象世界を構成し、「識」は精神世界を表しています。
 現象世界を徳という宗教眼で観たのが胎蔵界マンダラであり、精神世界を観たのが金剛界マンダラです。
 また、両方の徳、すなわち、考えられる限りのあらゆる徳を集めて供養するために作るのがお塔婆です。
 だから、お塔婆の表面には必ず「地・水・火・風・空」を示す梵字(ボンジ)の「ア・バ・ラ・カ・キャ」が書かれており、裏面には「識」を示す「バン」が書かれています。
 こうした世界へ通じる真言が大日如来の「オン ア ビ ラ ウン ケン バザラ ダト バン」なのです。

 姿は、4種類のマンダラで表されます。
 まず、全体は「大マンダラ」です。
 すべてが普遍的なものとして、あますところなく網羅されています。
 もう一つは、それぞれの特殊性を表した「三摩耶(サマヤ)マンダラ」です。
 私たちの個別的な願いや理想が、み仏の持ちものに象徴されています。
 もう一つは、価値や意味を表した「法マンダラ」です。
 それらは文字に象徴されています。
 もう一つは、活動や作用を表した「羯磨(カツマ)マンダラ」です。
 それらはポーズや手に結ぶ印などで象徴されています。

 はたらきは、身体の面と、言葉の面と、心の面に表れています。
 宇宙万物をお身体とするみ仏の三つは、私たち凡夫にとってうかがい知ることが困難です。
 お身体も秘密、お言葉も秘密、ご意志も秘密なので、それを三密(サンミツ)と言います。
 一方、私たちの三つは、それぞれに善悪こもごもの内容で、善き結果をもたらす影響力も、悪しき結果をもたらす影響力を秘めています。
 だから三業(サンゴウ)と言います。
 仏道修行は何のために行うかと言えば、凡夫の三業をみ仏の三密に合致させるために他なりません。
 その境地が入我我入(ニュウガガニュウ)と言われるもので、正しい修行をしていると、ご本尊様が行者へ入りこみ、行者も又、ご本尊様へ入りこみます。
 これが即身成仏(ソクシンジョウブツ)です。
 それはすなわち、〈構成要素〉と〈姿〉と〈はたらき〉において、み仏の世界が凡夫の世界となり、凡夫の世界がそのままみ仏の世界となることを意味します。

 こうした真理からすれば、男女の別や、国籍や人種の別、あるいは信仰や思想の別によって成仏できる人、できない人などと区別のできようはずがありません。
 迷いを転じて悟りを開く転迷開悟(テンメイカイゴ)は万人に可能なのです。
 1月7日にフランスで発生したイスラム過激派によるテロ事件は9日のユダヤ人向けスーパーに拡大しました。
 テロリストが侵入したことを知った店員イスラム教徒ラッサナ・バシリー氏(24才)は勇敢にも、客たちを地下の冷蔵庫へと誘導して救いました。
 氏はその時、まぎれもなく、身体と言葉と心のすべてが他のためにならんとする菩薩(ボサツ)であり、即身成仏しておられたに違いありません。
 この世の〈構成要素〉と〈姿〉と〈はたらき〉、そして、ともすると悪業(アクゴウ)をつくりがちな私たちはどう生きれば良いのか、よく考えてみたいものです。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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