コラム

 公開日: 2015-01-15 

表現の自由と宗教的信念の〈戦争〉を超えさせるものは何か? ―人類の叡智を思う―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈他を害さず、自他のためになり、己を清める祈り〉

 1月14日、仏週刊新聞「シャルリー・エブド」は、特別号にイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画「涙のムハンマド」を掲載した。
 フランスのバルス首相が宣言した「戦争」は、第2幕を開けようとしている。

 1月7日に発生したイスラム過激派によるテロ事件は、「フランスの9・11」と称されるほど衝撃的な事件だった。
 方や言論の自由、方や宗教上の信念、この二つが二者択一を迫られる事態となり、一方では西洋的自由に馴染まないイスラム教への排斥、一方では神聖な神を冒涜する者への攻撃と、互いに相手を許せない迷路へ入りつつあるように見える。
 自由の実現を価値観の筆頭として文化を紡いできたヨーロッパ文化圏の国々では、偏狭なナショナリズムの台頭に拍車をかける気配があり、イスラム教を絶対の真理とする文化圏の国々においては、より先鋭な宗教国家の樹立へと国家や国境を変える動きが強まり、国際的火種がばらまかれつつある。

 1月12日付の河北新報は、パリ政治大学院教授パスカル・ペリノー氏のコメントを報じた。
「フランス共和国の民主主義に不可欠な表現の自由を攻撃した初めてのテロだ。
 フランス革命や人権宣言以来、表現の自由、思想の自由は全ての自由の基盤であり、民主主義の契約に必要な要素。
 表現の自由は、政治権力と宗教権力を分離するという『政教分離』の意志と結び付く。
 民主主義は過去、ファシズムや共産主義という全体主義からの挑戦を受け、現在はイスラム過激派の挑戦に直面している。
 (民主主義の伝統がある)パリは、人権と自由の象徴。
 事件はフランス人にとっての9・11といえる」。

 フランス人のみならず、ヨーロッパの歴史が挑戦を受けていると感じる人々も少なくないことだろう。
 さて、言論の自由が西洋文化圏の人々にとって絶対的価値であり、またそれが実現される社会のために行動することが正義ならば、イスラム文化圏の人々にとっては、経典に示された神の意志にのみ絶対的価値があり、それに合わせて生きることが正義である。
 それがぶつかる場合、二つの正義のどちらかに軍配を上げる一段次元の高い存在は想定し得るだろうか?
 いずれもが<絶対>と信じて疑わない以上、軍配はあり得ない。
 それなら、巷間言われるように、対話が突破口になるのだろうか?

 仏教徒である小生は、<正義以前のもの>があると考える。
 それは「他者を傷つけない」という人間社会が存続して行く上での暗黙のルール、人間が人間として生きるために欠かせないベースとでも言うしかない万人共通のふるまい方である。
 サルの世界にも、メダカの世界にも、アリの世界にも必ずそうしたものがあるからこそ、それぞれの世界が成り立ち、存続している。
 サルがメダカのふるまいに走り、アリがサルのようにふるまうことはない。
 生きものそれぞれの世界におけるルールは〈おのづから〉存在に伴っており、誰かが決めたわけではなく、すべての生きものは、そうした目に見えぬルールに従って存在している。
 当然、人間という生きものにもそれがあって当然であり、おのづからなるものは、決して人間が多数決などで決められはしない。

 そもそも、人間社会のいかなるルールも、決められる際にエゴを離れることはできない。
 たとえば、平成4年、G10によって突然、決められたBIS(国際決済銀行)規制により、日本の金融機関は貸し出しの縮小に走らざるを得なくなり、経済が大打撃を受けた。
 また、平成10年の長野オリンピックで日本選手が抜群の成績を残した直後から、スキー板の使用にさまざまな国際ルールが設けられ始め、結果的に体力に劣る日本人選手を直撃した。
 いかに正義を標榜しようと、ルールづくりは必ずエゴが主導権を握り、結果的に強者が得をし、弱者が損をする。
 反対の結果は出ようがない。

 しかし、傷つけられたい人がいない以上、「他者を傷つけない」ふるまい方は否定し得ず、傷つけない行為によって得する人も損する人もおらず、エゴがしゃしゃり出る幕もない。
 人間が定めたルールではなく、法律的な罰則もないので、どの程度のふるまい方をするかは個々人の自由である。
 また、その程度は、社会の成熟度を示すバロメーターとも言える。
 なぜなら、互いに傷つけ合わない社会へ向かうことは、誰にも否定できない一つの理想的方向だからである。

 それならば、この問題の根本的解決法が一つ、見えて来はしないか。
 すなわち、表現の自由は、表現によって傷つけられる可能性のある人の気持を具体的に想定した上で慎重に行使され、宗教上の信念は周囲の人々を傷つけない範囲で表現し、行動に反映させればよい。
 当然と言うしかない方法だが、ここにある〈おのづからなるリミッター〉にはまぎれもなく人類共通の叡智がはたらいている。
 対話もさることながら、正義や理論を携えて相手との妥協点を見出す努力をするよりも先に、自分の心をふり返り、「傷つけたくない」という良心の声に耳を傾け、他者を傷つけない存在であろうとすることの方が、早く、確実に事態を沈静化させるのではなかろうか?

 ちなみに仏教徒の基本的な三つのふるまい方はこうである。
 まず、他を害さない。
 できれば他のためになる。
 そのために清らかな心をつくる。
 他を害しようとする、あるいは害しても恬淡としているなら、いかなる修行に励もうと仏教徒たる資格はない。

 しかし、この際、仏教という宗教を持ち出すまでもない。
 何を信じていようといまいと、とにかく、互いに傷つけられず安心な日常生活を送るため、自己中心的で他者を傷つけようとする心や、自分の言動が他者を傷つけることに鈍感な迂闊さを見つめようではないか。
 その大切さは、自分が害意を向けられたり、鈍感さのゆえに傷つけられたりする場面を想像してみれば、すぐにわかるはずだ。
 共に、傷つけない存在、害さない存在であるよう努力しようではないか。
 頑なな正義の蓋を外し、魂の内奥から発せられる良心の声に耳を傾けながら……。

 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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