コラム

 公開日: 2015-01-26  最終更新日: 2015-02-20

イスラムにおける思想と信教の自由 ―「イスラームとキリスト教間初の会合」小考―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 ジャパン・イスラミック・トラスト発行の「イスラーム:包括的な生活様式」を読んだ。
 アハマド・ファリード・ムスタファー博士が1978年にメルボルンで作り、2005年に改訂された70ページに満たない小冊子である。
 しかし、副題に「イスラームとキリスト教間初の会合」とあり、「イスラームの主要な諸側面を直接かつ集中的にお見せしよう」という目的で綴られた貴重な資料は、世界各国で翻訳されている。
 この中にある思想、信教の自由に関する文章の一部をとりあげてみたい。

1 思想の自由

「聖クルアーン(聖典)は一人一人が天地創造と、見聞きする事柄どもを考えてみるように求めている。」

 その典拠である。

『かれらに《アッラーに啓示されたところに従え》といえば、彼らは《いや、私たちは祖先の道に従う》と言う。
 なんと、彼らの祖先は全く蒙昧で、(正しく)導かれなかったではないか。』(雄牛章2:170)

 確かに、自分で考えるように勧めている。
 しかし、神の言葉を聞かないうちは愚かなままであるという前提がある。
 つまり、ここで言う自由には方向性が定められている。
 事実、こう述べる。

「人間は際限なく好きなように物事を考える自由がある。
 しかし誠実で有徳な事柄を思考するように勧められ指導されているのである。」

 私たち欧米流の「自由」という観念にあっては、どの方向へであれ「際限なく」広がるイメージがある。
 しかし、イスラムでは、神が定めた「誠実」で「有徳」な方向へと歩む自由意志こそが「自由」の中身なのだろう。

 では、そうした自由ではない方向へ思考が進んだ場合はどうなるか?

「従ってもし人の考えが間違って悪に向かう場合でも、シャリーア(イスラム法)はその考えが行動に現れない限りは処罰することは求めない。」

 心の中まではチェックされないが、神の定めた方向に向かわない行動は「悪」となり、「処罰」される。
 では、無制限ではない自由の中で、なぜ、科学をリードできたのか?
 イスラミック・センター・ジャパン発行の「図解イスラームガイド」は指摘する。

「イスラームは人々に知性と観察力を駆使するように教えている。
 それゆえイスラーム拡大期のわ僅か数年で、偉大な文明や研究施設が隆盛を見た。
 東洋思想と西洋思想の統合、新旧思想の統合は医学、数学、物理学、天文学、地質学、建築、芸術、文学、歴史などの学問に多大な進歩をもたらした。」

 確かに、代数やアラビア数字やゼロの観念など、私たちが恩恵をこうむっている無数のものがイスラム文化から生まれた。
 自由というものについてイスラムの方々と話をしてみたい。

2 信教の自由

「シャリーアは信教の自由を宣言し認め、その保護を確保した最初の法的制度である。
 非ムスリムはその信教を選ぶ自由があり、それに従って信仰生活を展開できる。
 イスラームに帰依するのは、強制ではなく自発的な改宗によってである。」

 その典拠である。

『宗教に強制があってはならない。
 まさに正しい道は迷誤から明らかに(分別)されている。
 それで邪神を退けてアッラーを信仰するものは、決して壊れることのない、堅固な取っ手を握ったものである。
 アッラーは全聴にして全知であられる。』(雄牛章2:256)

 神は善悪を明確に示すが、それを「強制」的に信じさせようとはしない。
 こうした点からすれば、暴力的、軍事的に人々へローラーをかけるイスラム原理主義の行動には、正統性に問題がある。

 次に、信者が迫害された場合に移住するという考え方を見よう。

『自分自身を損なっているところを天使に召された人々に(天使は)言う。
《あなた方はどうしていたのか。》
 かれらは(答えて)言う。
《わたしたちは地上で弱く、痛めつけられていました。》
 その時かれら(天使は)言う。
《アッラーの国土は広大ではなかったのか、あなた方はそこに移り住めたではないか。》
 これらのものの住まいは地獄であろう。
 何と悪い帰りどころであることよ。
 ただ(本当に)弱かった男女と子供たちは別である。
 かれらは(自ら避難する)手段を見出すことも出来ず、また道へも導かれなかった。』(婦人章4:97、98)

 博士は主張する。

「もしもイスラームの本来として信教の自由を阻害するということであったならば、すべての宗教的少数派はこの14世紀間に一掃されていたことであろう。
 しかしそのような事例は一つも伝えられてはいない。
 預言者(平安あれ)は一度も侵攻を開始したことはなかった。
 彼とその初期の信者たちは、マッカの偶像崇拝者たちに激しく迫害され、また社会的に疎外されていた。
 しかし、武器を手にするのは、武器で挑戦されたり、その家族や信徒と共に住まいから追い出されようとしていた時に限られていた。」

 その一方で、自省もしている。

「以上のようなすばらしい歴史にもかかわらず、中には不正のムスリム支配者も居たことは認めざるを得ず、またこの不正は調査研究し分析もされるべきであろう。
 それらについての真実は明らかにされ、公表されるべきだ。
 ただしそれはイスラームが推進し信者の心の中に植え付けようとする正義と寛容の精神とは、無縁のものなのである。」

 この本が書かれた後も「不正のムスリム支配者」であろう指導者が世界中で非人道的な行動を煽り、戦乱と混乱は膨大な人々を苦しませ、死に追いやっている。
 彼らは非ムスリムによる神への冒瀆やムスリムへの差別などを戦いの根拠としているが、その根には地球規模の格差社会があり、抑圧から抜け出しようのない人々の怒りがある。
 いつの世も貧困と病気は人間の二大苦であり、それがイスラム原理主義のみならずさまざまな極論的思想や行動を生み、果ては最悪の苦をもたらす戦争へとつながり、戦争は人々を必ず二大苦へ陥れ、悪循環は後を絶たない。
 何としてもムスリム社会が本来の「正義と寛容の精神」を取り戻されるよう、世界中がよくよく考えねばならないのではなかろうか。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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