コラム

 公開日: 2015-02-03 

善と悪とを分ける人生の薬はさまざまである ―今月の聖語─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 お大師様の言葉です。

「薬に貴賤あることなし、病(ヤマイ)を差(イヤ)すを即ち妙となす」

 お大師様は、あらゆる宗教の根源をたずね、密教を最高レベルのものとした一大体系を作り、今日にその修法のお次第が伝えられていますが、他の宗教宗派を否定することはありませんでした。
 それぞれ異なった視点から世界と人間をとらえ、異なった方法で苦しみや悲しみを解決しようとするのは当然です。
 誰しもがそれぞれの人生を生きており、苦しみも悲しみもそれぞれであり、教えの理解力も実践力もそれぞれだからです。

 たとえば、善と悪について考えてみましょう。
 世界的数学者であると同時に華厳宗の篤信者であった故岡潔博士は「敗るるも、またよき国へ」に書きました。

「善とはわかるが言えないものである。
 だから黙って実例を指し示すよりない。
 わかる人にはわかり、わからない人にはわからないのであるが、これが善である。
 仏教倫理は唯三行である。

 諸悪莫作(ショアクマクサ…諸々の悪を為すなかれ)
 諸善奉行(ショゼンブギョウ…諸々の善を行え)
 自浄其意(ジジョウゴイ…自ら心を浄めよ)

というのである。
 倫理を唯三行で言ってしまう所に、仏教の面目躍如たるものがある。
 その広大無辺さを知るべきである。
 諸悪莫作。
 善とは悪の反対ではない。
 初めは善はわからないのであるが悪はわかる。
 だから悪はするなというのである。」

「善は一つわかり始めると次々にいくらでもわかって来る。
 そのすべてをたたえて、少しでもそちらに向かって向上しようとしなければいけない。」

「だれかが、つまらない絵の掛け軸を知らずに大切にしているのを見せて呉れると、自分も知らず知らずその気になって、作意なく、結構でございますな挨拶する。
 これが真我(シンガ…自己本位の小さな我を離れた心)の意志である。
 こう行けばよい。
 もしひっかかるものがあればそれは意(ココロ)に濁りがあるからだとすぐ気付いてそれを取り去れというのである。」

 博士にとって日本人が真に手本とすべきは応神天皇(オウジンテンノウ)の末子である菟道稚郎子(ウジノワキイラツコ)でした。
 応神天皇が跡継ぎを定めないまま崩御されたため、衆望が優秀な稚郎子(イラツコ)へ集まりました。
 稚郎子は、長子で思いやりある大鷦鷯尊(オオサザキノミコト…後の仁徳天皇)が嗣ぐべきであると主張しましたが、混乱は収まりません。
 そこで、稚郎子は黙って自決しました。
 稚郎子を推しながら、自決によって即位した仁徳天皇は、民家から煮炊きする煙が少ししか上っていないのを見て生活が苦しかろうと3年間、租税を免除し、その間は宮殿の屋根の葺き替えさえ行わず、質素倹約を率先垂範(ソッセンスイハン)しました。
 博士は稚郎子こそ「日本民族の中核の人」であると説かれました。

 どうでしょうか?
 稚郎子は自分が即位すべきでなく、それは〈悪〉であると考え、至心に兄を推しました。
 当時の社会にあって、賢明な弟としては当然の判断です。
 博士の言うとおり「悪はわかる」のです。
 では、〈善〉がどこにあるかと言えば、たくさんの人々の考え方や立場や思惑がからんだ社会的大問題をどう収めるか、ことは決して簡単ではありません。
 行き着いたところが、自分の存在を消すという方法でした。

 これは仏教が渡来する前のできごとでした。
 歴史に学び、み仏の教えに学びつつ善と悪とを考え続けて行けば、恥ずかしくない判断をし、恥ずかしくない行動を選ぼうとするようになります。
 このように、私たちの苦しみや悲しみを解消する心の薬となるものはたくさんあり、どれが万能薬であるなどということは誰にも断定できません。
 私たちを悪へ向かわせず善へ向かわせ、浄めてくれるさまざまなものと感応する心の新鮮さだけは失いたくないものです。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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