コラム

 公開日: 2015-02-09 

祈りで伸びる死者の腕 ―看取る人も納棺師も―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 納棺師Aさんは、祈りを欠かさない。
 仏様のお姿を整えるのは、自分の力だけではまっとうできない仕事だからだ。
 状態は多種多様、ご遺族の視線もあり、一瞬の気も抜けない。
 たとえば、死後硬直のため、お柩へきちんと入らないほど腕が曲がっている場合もある。
 その時は心中の祈りに一段と力を込める。
 すると、仏様の腕が徐々に柔らかく動き、まっすぐになってくれたりする。
 人知れず〈伝家の宝刀〉を磨いておかないと、納得できる仕事はできない。

 誰にでもこうした伝家の宝刀があるのではないか。
 たとえば小生の場合は、南無大師遍照金剛というお大師様のご宝号(ホウゴウ)や、お不動様の慈救呪(ジクジュ)、大日如来の光明真言、お地蔵様の真言、あるいは守本尊様の真言などである。
 善男善女の不安や迷いを取り除く際に、お大師様は必ずお力をお与えくださる。
 窮地に陥った時、幾度、慈救呪によって脱することができたか、数え切れない。
 光明真言のないご葬儀やご供養はあり得ない。
 最後のよりどころを求める方々をお地蔵様は必ず、母親のように包んでくださる。
 太平洋戦争で幾度となく出撃した戦闘機のパイロットBさんは、仲間たちが「母ちゃん!」と叫んだことを知っており、Bさんもまた、そう叫んで死地をくぐり抜けた。
 街の片隅で静かに不戦を説いた亡きBさんの面影は、「不戦日本」の祈りを支えてくださっている。
 時代劇の斬り合いで「なむさん!」という唸り声のようなものを発する場合がある。
 あれは「南無三宝(ナムサンポウ)」の略であり、「仏と法と僧へ帰依(キエ)します」という救いを求める誓いの言葉である。
 死を覚悟しつつ生きている侍も、もはやこれまでかという瞬間には、思わず、祈りが生ずるのだ。
 伝家の宝刀はありがたい。

 看護職のCさんは、最期に誰かへ何かをつぶやき、安心したように去る方が多いと言う。
 つぶやきを聴く瞬間は尊厳に打たれる。
 看取りは、仏様になって行く過程を目撃することであり、「ご苦労様でした」「お疲れ様でした」と労(イタワ)らずにはいられない。
 どなたもが、その人なりの形でこの世での人生修行をまっとうし、仏様となる――。
 等しく尊い。
 やはり、Aさんと同じく、祈りが欠かせない。
 そうでないと、ことの重さや大きさに圧倒されてしまいかねない。

 中島みゆきは『命のリレー』で唄っている。
「この一生だけでは辿(タド)り着けないとしても
 命のバトン掴んで 願いを引き継いでゆけ
 この一生だけでは辿り着けないとしても
 命のバトン掴んで 願いを引き継いでゆけ」

 心身を引き締め、願いを持って生きている人のいのちは、何らかの形でバトンタッチされ、終着点のない願いもまた、引き継いで行かれることだろう。
 願いと祈りの伴ったいのちは、もはや、一人の人間という身体的な限定条件を突破して、広大無辺ないのちの世界に通じている。
 そこはもはや、み仏の世界でもある。
 AさんもBさんもCさんも、即身成仏(ソクシンジョウブツ)の実践者である。
 今日も密かに伝家の宝刀を抜きつつ、法務に励みたい。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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