コラム

 公開日: 2015-02-13 

映画「降りてゆく生き方」について

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





「降りてゆく生き方」という映画がある。
 縁あって、映画ができるまでの成り行きを知った。

 DVDの冒頭、武田鉄矢氏が言う。

「私たちは天下国家の話をしたがるが、一番大切なのは、ここちよい人と出会い、ここちよい会話ができるかどうかではないか」

「ミニチュアサイズの理想のモデルをつくれない人はどんな大型のモデルもつくれないという言葉を聞いたが、そのとおりだと思う」

 ここ黒川郡大和町に「寺院サービス」という神社仏閣専門の建築会社がある。
 そこで何度も〈ミニチュア〉の寺院を見た。
 四方八方から何度も眺め、どう造るかを決めてゆく。
 当山の講堂も、そうしてできた。
 全高五メートル近い当山のご本尊様もまた、10分の1の〈ミニチュア〉で表情や印の形などを考慮した上で発注し、途中で幾度も成り行きを確認し、理想のイメージどおりにできあがった。

 人の関係においてもそうではないか。
 信頼感を持てる者同士がいつしか集まり、周囲へ自然に輪ができる人であって初めて真のリーダーたり得るのではないか。
 小さな人間関係においてまっとうな人が社会という大きな人間関係をまっとうに動かしてこそ、人々は安心できるのではないか。

「この人の生き方、考え方、つくるもの、それが私にとってここちよい。そこに人がつながる。
 その手応えがあればよい」

 身近にある安心や信頼を大切にしようというところから、平和への思いが本当に湧いてくるのではないか。

 この映画のキーワードである。

「さまざまな場所で 空の下で さまざまな人人人 少しでも 暮らし つながる 生きる 活きる 日本 感性 いのち」

 映画の冒頭に登場するのは、車椅子のまちづくりリーダー清水義晴氏である。

「世の中をよくするのも、悪くすすのも、ただ、この一人からです」

 氏は病院のベッドで絶望し、ただただ神に祈っていたおり、奇跡的な出会いがあって、生きる世界を得た。
 今、人につながり、世界につながっているという不動の手応えがある日々を生きている。
 氏の姿勢は仏陀の姿勢そのものである。
 自らをどうするか、それがすべての始まりであり、そこからしか本当の救いへは入れない。

 最後に登場するのは、北海道浦河赤十字病院精神科神経科部長川村敏明医師である。

「病人をただ正常な人に近づければよいというものではなく、もっと複雑です。
 ただ治すのではなく、今の状態の中に苦しみがあるからこそ、何が大事かがが見える。
 彼等と一緒に考えていくことの中に、人間が生きることの本質が見えてくる」

「病気でない人だけが集まっても、表面的な見方しかできない。
 健常者自身が、表面的なことしか見ない中で行き詰まっているのではないか」

 病気の人と一緒に生きてみてようやく、本当に我が身がふり返られる場合がある。
 我が身に潜み、表面化していないだけのさまざまな心の病気が観える。
 行き詰まってなお生きる人の姿に、自分がまだまだ甘いことを知らされる。

 落ち着いて考えてみよう。
 私たちの誰一人として、姿形も心も〈理想型そのもの〉として存在してはいない。
 人気アニメどおりの肉体を持ち、同時にみ仏そのものの心を持った人は誰もいない。
 ヒットラーは、誰の目にも明らかな美や、混じり気のない純粋な血や、鉄の如く強い国家を求めた。
 そこではさまざまな〈理想的でないもの〉が排除された。
 私たちの社会は、はてしなく財物に恵まれ、健康を維持し、英語を駆使して世界のどこででも思いのままに生きられる人間像を理想としているように思えるが、同じ島国日本で生きている皆がそうした理想的存在になれると本気で思い、真剣にそこを目指しているだろうか。
 誰もがそうした方向を理想と信じているだろうか?
 一本道で競争していれば、やがてきっと皆が幸せがつかめると確信しているだろうか?
 そして、この世のそこここに、そうした成功例があるだろうか?
 あるいは、やがて成功者だらけになると思えるだろうか?
 今、現に苦しみ、悩み、夢が持てず、辛い日々を送っている多くの人々の思いにこそ、「何が大事か」、「人間が生きることの本質」は何か、が感得できるのではないか。

 最後に武田鉄矢氏が言う。

「私たちは、昇ってゆく生き方を探し求めてきて、その中にあまり幸せはないぞ……、真逆の降りてゆく生き方の中に、自分のいのちが輝く瞬間があるような気がする。
 人のいのちが燃えるような瞬間があるのではないか。
 この方角はきっとまちがっていない。
 この映画を通じて、降りてゆく生き方の気づきになればと思う」

 ご縁の方々と共に観たい映画である。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

この記事を書いたプロ

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