コラム

 公開日: 2015-02-15 

サツマイモによる供養 ―戦争で生き残った親の思いを継ぐ―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈渡辺ひろし師の寺子屋における講話では、熱のこもったお話と活発な質疑応答がありました〉



 ご母堂様の月命日を迎える前日、大雪をものともせず、手紙を手にしたAさんがご来山された。
 印象的なことごとが縷々、綴られている中で、ぜひ、書きとめておきたい一事があった。

 A家では9月9にサツマイモを仏壇にお供えするというくだりに、菊をめでる重陽(チョウヨウ)の節句でイモも供える習わしがあったかと目を瞠った次の瞬間、さらに目は大きくなった。
 その日は、太平洋戦争中、亡父が南方の激戦で戦友を失った日であり、やがて米軍に投降した日でもあったという。
 父親は飢餓状態で逝った戦友のため、毎年一度、欠かさずサツマイモを供えて供養し、その心を継いだ母親も逝った今、Aさんご夫婦も同じ形で供養を続けておられる。

 重陽の節句において愛でられる菊は、中国伝来のものだが、後一条天皇が「花第一」とされ、藤原敏行は詠んだ。

「ひさかたの雲のうへにてみる菊はあまつほしとぞあやまたれける」

 宮中いっぱいに飾られた菊の花々は、まるで天空に広がる星々のようだ。
 なお「久方の」は雲にかかる枕詞であり、「雲の上」は、宮中を天上界になぞらえた表現である。
 源氏物語にもある。

「色まさるまがきの菊もをりをりに袖うちかけし秋をこふらし」

 ひときわ美しい籬(マガキ)の菊も、昔、共に舞ったあの秋の日を恋しく思っていることだろう。
 平安人は菊に深い情緒を覚え、菊は〈やまとだましい〉の形成に大きな役割を果たした。
 秋に咲く菊は春の桜と並んで、女花の代表とされている。
 英語の菊はchrythanthemum、〈MUM〉すなわちママが含まれており母の花でもあるのだ。

 さて、作家大岡昇平は『レイテ戦記』に書いた。

「人間の中の動物的なものの領域は広大である。
 平時の社会はそれを制御することによって成り立っているが、戦争はむしろそれを奨励し解放する」

 ここで言う「動物的なもの」とは、一つには、敵や競争相手を殺して自分が生き延びること、もう一つには、何としても自分の腹を満たして自分が生き延びることだろう。
 戦争で実際に殺し合いを行った兵のほとんどが黙して語らずにこの世を去りつつあるのは、自分にも戦友にも訪れた〈あの事態〉がとうてい言葉にできないからである。
 だから、自分なりのやり方で御霊へ語りかけ、思い余った人だけが最小限度の言葉で生者へ事実を伝え、「やっと俺も来たよ」と御霊の元へ逝く。
 確かに戦勝国による一方的な裁判はあったが、誰が殺したか、殺さなかったか、奪ったか、奪わなかったという膨大な事実は、現場を共にした戦友と仏神だけにしか、ほとんど知られない。
 私たちは感性と想像力を鈍らせず、こうして逝きつつある方々の思いを想わねばならない。
 さもないと再び戦争を繰り返し、〈あの事態〉が後の世代によって悲しくも追体験されることだろう。

 忘れられかけている先人、偉人方がいのちがけで守られたこの日本を物理的精神的に、いかにして守るか、文字どおり、叡智のすべてがかけられねばならない時に立ち至っているのではなかろうか。
 Aさんが言外に当山へ託されたものをよく考え、今日も不戦堂で祈りたい。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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