コラム

 公開日: 2015-02-21 

最も大切なのは自分のいのちそのものではない ―思いやりのある子供に育てる―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈塩釜市在住の隠形流居合行者藁科昇氏が被災地を撮影しました。3月1日の供養会で会場に流れます〉

 信徒Aさんから質問がありました。
「毎日の報道には驚くばかりです。
 どうして普段は優しいはずの子供がとんでもない犯罪へ走るのでしょうか?」
 一つの面からお答えしました。

一 お釈迦様は何と説かれたか?

 意外に思われるかも知れませんが、お釈迦様は、「いのちを大切にしなさい」と説いてはおられません。
 お釈迦様には、輪廻転生(リンネテンショウ)にまつわる過去世の物語がたくさんあります。]
 それらは「本生譚(ホンジョウタン)」あるいは「本生経(ホンジョウキョウ)」と呼ばれ、主役であるお釈迦様は、動物や女性や国王などさまざまな姿で修行を重ねます。
 ここで実践される善行のどれもが、決して〈自分のいのち〉を大切にしてはいません。
 王子に生まれた時は、餓えた虎とその子供たち7匹のために、食べ物として我が身を崖から落とし、ウサギに生まれた時は、行者へ供養するために、やはり食べ物として我が身を火へ投じました。
 他の窮乏に耐えられず、尊き者へ供養しないでいられず、我がいのちを決然と捨てています。
 物語は、誰しもが最も手放したくない〈自分のいのち〉よりももっと大切なものがあることを教えています。
 それは何か?
 自分にある〈見捨てることができない心〉に従うこと、すなわち慈悲心と布施行です。

二 慈悲と布施について 

 見捨てておけないならば、どうするか?
 自然に、自分の何かを差し出さないではいられなくなります。
 これが本当の布施です。
 日本人が世界から尊敬されるのは、地震や津波や台風などに遭っても自然に助け合い、戦争で空襲に遭っても自然に助け合い、平時に路傍で倒れても自然に誰かの手で病院へ運ばれ治療を受けられるからです。
 高倉健はよく、強さと優しさを兼ね備えていたと評されますが、義侠心を持っていたとも言えそうです。
 彼はヤクザとして、男として、人として、〈決して見捨てることのできない人〉を演じ続けたのではないでしょうか。
 私たちが彼に憧れ、救われたのは、見捨てる自分や逃げる自分に対して感じている後ろめたさや恥ずかしさや悔しさを、銀幕でスカッと解き放ってくれたからでした。

三 自分可愛さに負けない

 私たちは自分が可愛く、自分のモノ金が惜しく、周囲の誰彼を〈見捨てながら〉日々、暮らしています。
 持っているモノ金には限度があり、ましてや自分のいのちは一つしかないので、やむを得ません。
 大切なのは、〈見捨てることができない心〉を錆び付かせないことです。
 見捨てつつ、自分を中心にして生きる自分への後ろめたさや恥ずかしさや悔しさを忘れないことです。
 それには、誰かの喜びを自分の喜びと感じ、他者を〈そちら側〉へ置かないようにする必要があります。

四 他の喜びを喜ぶ

 恋愛が成就した、受験に合格した、結婚した、就職した、病気が治った、仕事がうまくいった、雪が融けて福寿草が顔を出した、ネコがおいしそうにご飯を食べた、などなど、誰の何でも「ああ、よかったね」と心底から思い、温かな言葉が口から漏れ出る時、その人自身にもよいことが起こっています。
 感激や幸福感や安堵感があり、自分の不満や不幸や苦しみを忘れているではありませんか。
 慈悲心が起こると同時に、救われてもいるのです。
 こうして生きていれば、知らず知らずのうちに〈見捨てることができない心〉が保たれ、小さな何かは実践できるでしょう。
 そして、いざという時にはきっと、思い切った行動がとれるはずです。
 私たちは慈悲と救済の中で一歩づつ、お釈迦様へ近づいて行けます。

五 自分を可愛がる危険性

 さて、親は誰でも我が子を愛おしみます。
 そして、こう願い、語りかけ、いくら辛かろうと何でもやりながら必死に育てます。
「いのちを大事にしなさい」
 実は、この麗しい情愛に問題が潜んでいます。
 我が子を可愛がり、ガラス細工を扱うように育てていると、〈自分を可愛がる〉だけの子供ができあがってしまう可能性があるのです。
 そこで、小動物や草花などに接する機会をつくり、周囲にある〈いのちの尊さ〉を教えようとしますが、ネコやスミレが可愛らしく思えることと、慈悲心とはまったく別ものです。
 だから、周囲からは、あんなに優しいお子さんだったのに信じられない、と思われるような犯罪に走るケースが後を絶ちません。
 子供に分別がついてきたなら、どうか、いろいろな物語やできごと、あるいは親自身の実践を通じて、自分が持っているモノ金やいのちよりも大切なものがある、と教えてください。
 惜しむ心を抑え、他のために何かを差し出す喜びを実感させてください。
 その場しのぎの偽善的儀礼にとどまらず、本当に喜んでいるかどうか、よく観察してください。
 やがて、慈悲心による布施がなかなか思い通りに実践できないジレンマを体験することでしょう。
 そうすれば、大人をバカにせず、人間への信頼感を保ちつつ育って行くことでしょう。
 きっと、いくらかはお釈迦様に近づきつつ、大人になれることでしょう。

六 結論

 仏教は「いのちを大切にしなさい」といった単純な教えではなく、「他のためになるところに、人間が人間として尊いゆえんがある」と説いています。
 み仏が示す慈悲も智慧もここにあります。
 よくよく考えてみたいものです。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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