コラム

 公開日: 2015-03-15 

お葬式って何ですか? ―お葬式が必要な理由―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈3月14日の寺子屋では、経済学博士・宮城県議会議員藤原のりすけ先生の講義が行われました〉

 これまで最も多いご質問の一つが「お葬式って何ですか?」でした。
 ご年配の方よりも、むしろ、親を送らねばならない状況に至った若年や中年の方から真剣な問いが問われました。
 それは、「本当のところ、住職は何を信じてお葬式をしているのですか?」という厳しい目で見られるということでもありました。
 国会の答弁で散見されるような通り一遍の〈公式的な文句〉や〈その場しのぎ〉は通じません。
 答える側の人間そのものが観察され、答が、本当に答える人間の存在をかけて発せられたものであるかどうかは、必ず見抜かれます。

 最近は、こんなふうに応じるケースが増えました。
「この世で開ききれなかった仏心を開くこの世で最後のチャンスです」

 私たちには善い心も悪しき心もあり、善悪こもごもの言葉を用い、善悪こもごもの行動をとります。
 誰かを深く怨みもすれば、見ず知らずの人の善行(ゼンギョウ)に目を瞠(ミハ)らされたり、唸らされたり、恥ずかしくなったり、希望を持ったり、発奮したりもします。
 そうした自分の心中をよく観察すると、人間の善き姿に接すれば心は爽やかで明るくなり、悪しき姿に接すれば心は乱れ暗くなることに気づきます。
 心身は明るい方向へ向かってこそ健全に保たれ、人間関係において互いの信頼感が増大します。
 つまり、私たちの心には、草花が自然に陽光へ向かって伸びるような〈ある力〉が具わっているのです。
 それが小生一人だけのありようだとは到底、思えません。
 この事実は、「万人の心中にみ仏がおられる」と説く仏教が真実であると信じさせます。
 もちろん、そうは思われない方もおられでしょうし、科学的に証明できるわけではなく、論理的に導き出せる結論でもありません。
 仏教を学び、実践し、考え続ける一行者の信念でしかなく、誰かと客観性を競うつもりはなく、誰かと議論して言い負かそうとするわけでもありません。

 こうした私たちは、仏心に添って善く生きる場面もあり、仏心を覆う煩悩(ボンノウ)に引っぱられて悪く生きる場面もあります。
 そういう一生の最後の最後に、複雑極まりない心の最奥にある仏心の扉を開け放ち、心の故郷へ還るチャンスが訪れます。
 それが死です。
 だから、お大師様は説かれました。

「阿字(アジ)の子が 阿字の古里たちい出て またたち還る阿字の古里」

 梵字(ボンジ)の「阿」に象徴される大日如来の世界を心の古里とし、この世へ修行の旅にやって来た私たちは、死によって古里へたち還り、輪廻転生(リンネテンショウ)を繰り返すのです。
 ダライ・ラマ法王も説かれました。

「自分の死は、修行の成果や信念を確認する貴重な機会なので楽しみである」

 さて、私たちは、母胎に宿ってからずっと、無数の人々のおかげ、自然のおかげ、社会のおかげでいのちを長らえます。
 最初は親が、そして家族や先生や先輩などが〈師〉となって導いてくださればこそ、人の間の存在すなわち人間としてまっとうに生きられます。
 生意気盛りになったり、少々、富や地位や名声を得たりすると自分の力だけで生きているような錯覚を起こす時期もありますが、あらゆる動植物も含めて〈師〉ならざるものはありません。
 踏まれても咲くタンポポに教えられ、堂々たる楠に教えられ、子を守るヒヨドリやスズメダイにも教えられます。
 思い上がった錯覚のままでは必ず、人生を誤ります。
 思い上がった人は、よしんば富や地位や名声を失わずとも、〈地〉を見抜いた人からは尊敬されず、軽蔑され、せいぜいが、利用したい人から仮そめに持ち上げられるのみであり、棺に冷たい視線を浴びるかも知れません。
 
 迷い、誤りつつ生きる私たちは、その原因となっている肉体の束縛を離れる時、本来の「阿字の子」そのものになるチャンスを迎えますが、〈おかげ〉をきちんと理解し感得し、〈おかげ〉なるものに導かれるすなおな心を失わなければ、爽やかで明るい世界へと溶け込んで行けることでしょう。
 これが「仏心を開くこの世で最後のチャンス」の意味です。
 導き手はみ仏であり、み仏と去り行く人との糸を強化するのがお葬式の導師です。
 だから導師を務める行者は、み仏の世界への扉を開けるため、先んじてその世界へ入る力をつけねば役割を果たせません。
 
 では「み仏と去り行く人との糸」は具体的にどうやって強化されるか?
 それが引導(インドウ…引き導く)という作法です。
 導師は、お釈迦様が養母マハー・プラジャパティーを送るご葬儀で説かれた教えをお伝えし、一瞬で開扉します。
 扉の先はお釈迦様が悟られた境地であり、それは「阿」で表される大日如来の世界です。
 扉がしっかりと開く瞬間は、大日如来と行者が一体になっていなければなりません。
 これができるうちは導師としての資格があり、できなくなれば引退あるのみです。
 引導を渡す作法は単なる形式ではなく、誰をごまかせようと、み仏はごまかせず、逝く人もごまかせず、もちろん自分もごまかせません。

 群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡手術を受けた患者8人が平成22年から26年までの間に8人もに死亡し、3月3日、40代の男性医師が行った手術の「すべての事例において過失があった」という恐るべき調査報告が発表されました。
 この医師は手術前、いつも「すごく簡単な手術だから大丈夫」と言っていたそうです。
 目に見える科学の世界ではこうした〈その場しのぎ〉が明確な形で発覚しますが、目に見えない宗教の世界ではわかりにくいものです。
 しかし、ご遺族などが判別する方法はあります。
 それは、ご葬儀の現場で導師が法を結び創り出す異次元世界を感得することです。
 あるいは導師を務める僧侶と会って質問し、人物を確認することです。
  
 私たちは人間なので、〈おかげ〉が理解でき、感得もできます。
 仏神、自然、社会、あらゆるものの〈おかげ〉でこの世を生き抜く私たちは、あの世へ行く時も同じであり、〈おかげ〉によらず自分一人だけの力で行けるはずはありません。
 最後まで感謝を忘れず、〈おかげさま〉と手を合わせつつ、み仏のお導きによって安心世界を目ざしたいものです。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

  • 問い合わせ
  • 資料請求

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

0

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
お客様の声

○Aさん(中年女性)の場合 心身の不調を縁としてご加持を受け、自分の願いが通じると実感されました。 そして祈り方を覚え、商売や家庭にさまざまな問題を抱えなが...

 
このプロの紹介記事
遠藤龍地 えんどうりゅうち

人々が集い、拠り所となる本来の“寺”をめざして(1/3)

 七つ森を望む大和町の静かな山里に「大師山 法楽寺」はあります。2009年8月に建立されたばかりという真新しい本堂には、線香と新しい畳のいい香りが漂います。穏やかな笑顔で出迎えてくれた住職の遠藤龍地さんにはある願いがありました。それは「今の...

遠藤龍地プロに相談してみよう!

河北新報社 マイベストプロ

宗教宗派を問わず人生相談、ご祈祷、ご葬儀、ご供養、埋骨が可能

所属 : 大師山 法楽寺
住所 : 宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL : 022-346-2106

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

022-346-2106

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

遠藤龍地(えんどうりゅうち)

大師山 法楽寺

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる このプロに資料を請求する
プロのおすすめコラム
12月の守本尊様は千手観音菩薩です ─救われる時─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 今月の守本尊様・真言・聖語 ]

Q&A(その32)自業自得なら廻向で救われない? ─因果応報と空の話─
イメージ

 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故...

[ 仏教・密教 ]

一年と一周忌供養 ─あの世でもこの世でも救われる話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 葬儀・供養の安心 ]

消えた因縁 ─心の檻(オリ)から脱した話─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

「みやぎシルバーネット」20周年おめでとうございます ─無私の編集長につながる方々─
イメージ

 おはようございます。 皆さん、今日もお会いできましたね。 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被...

[ 世間は万華鏡 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ