コラム

 公開日: 2015-03-17 

魂入れって何ですか?お焚きあげって何ですか? ―〈かけがえのなさ〉や〈聖性〉の世界へ―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈笑いかけてくる花〉

 これまで最も多いご質問の一つが「魂入れって何ですか?」でした。

 お墓を建てたり、ご本尊様やお位牌を作ったりした善男善女は「魂入れをしてください」とご来山されます。
 そして、修法が終わると皆さんとても安心され、修法した小生も「ご安心なことでしたね」と、我がことのように嬉しくなります。
 どこにあるお墓であれ、どのように入手されたいかなるご本尊様であれ、特別な支障のない限り、分け隔て無く法を結びます。
 では、魂入れとは何でしょうか?

1 一つのモノに二つの世界を共存させる

 イメージとしては、一つのモノに二つの世界を共存させることです。
 たとえば、お墓は、いかに丹念に造られたとしても、できあがったままでは、目に見えるモノという世界の存在に過ぎません。
 法を結んだお墓は、モノであると同時に、目に見えぬみ仏の世界にある存在となります。
 だから、開眼供養(カイゲンクヨウ)が終わると、このように申しあげたりします。
「これでお墓は、み仏に守っていただく聖地になりました。
 ここで眠る御霊が守られるだけでなく、訪れ合掌する方も、あるいは遠方の地にあって瞼の裏へ思い描きつつ合掌する方も、等しく守られます。
 どうぞ、末永く、大切にしてください」

 もしも「一つのモノに二つの世界」がイメージできない方は、身近にある何かを考えてみてください。
 たとえば、長年、そばにおいた人形は、いつしか自分が眺めるだけでなく、人形も自分へ視線を向け、励ましてくれるように思われたりします。
 それが小さなお地蔵様だったりすると余計に、相手の存在感が増すものです。
 もはや、一般的商品としての人形、お地蔵様ではありません。
 そこに観じる〈かけがえのなさ〉は、単なる愛着心を超え、ある種の〈聖性〉をまとう場合もあります。
 この〈聖性〉こそがモノとは異なる世界の顕れであり、自分の霊性がはたらいて〈聖性〉をきちんと感じとった方にとっては、人形もお地蔵様も、決してうち捨てにしてはおけません。
 大切に扱い、どうにもならぬ状況になれば、お焚きあげを申し込まれます。

2 聖性の付与が魂入れ、聖性を抜くのがお焚きあげである

 つまり魂入れとは、修法の世界でみ仏と一体になった行者による〈聖性〉の付与に他なりません。
 お焚きあげとは、〈聖性〉を抜き、単なるモノとなった仏像やお位牌を燃やして天地へ還す修法なのです。
 相手が亡くなった人間の場合には、火葬炉へ入れる前に必ず、この修法を行います。
 人間が人間たる尊厳そのものをきちんと〈その世界〉へ還した後、モノとなった身体を燃やすのです。
 それなのに、大震災から4年が過ぎた昨今、またまた、大震災以前のようにあれも要らない、これも要らないと、経済第一の世相に合わせた論調を振りかざす人々が増えました。
 そして、便利に、簡単に、お金をかけないで済まそうと、火葬する前の大切な修法までもが疎(オロソ)かにされ始めました。

 皆さんによく考えていただきたいのです。
 いつも自分をじっと眺めてくれていた人形を、もう要らないと焚き火へ放り込めますか?
 心が乱れた時に合掌し、深呼吸してはお救いいただいたお地蔵様を、もう要らないとゴミ収集に出せますか?
 有名な人がああ言ったから、こう言ったから、と他人の話や流行の情報に流されず、胸に手を当て、ご自身の頭でよく考えていただきたいのです。

3 宗教の発祥を想う

 母を失い、友人を失い、恩人を失い、日々、大切な人を失った方々の側に座る小生は、人間が宗教心に目覚めたのは、人の死がきっかけであったに違いないと感じています。
 私たちの「誕生」とは、まぎれもなく、どこからか〈やって来た〉できごとです。
 また、私たちの「死」とは、まぎれもなく、どこかへ〈還って行く〉できごとです。
 それに気づき、送り、悼む心が歴史と共に深まり、宗教が形成されました。
 送り、悼む行為が、民族なりに、地域なりに、宗教なりに洗練され、現在の日本において結実したのがご葬儀であり、ご供養です。
 そこにあるのは、縁者たちが心から同じ〈行為〉を行うことによって、亡き人の安心を願うと同時に、互いを思いやる尊い時間です。
 この〈行為〉を気まぐれに行うか、それとも歴史と文化をふまえた伝統的方法で行うか、もしくは何もやらないか。
 これは私たち一人一人の心のありようにとって、あるいは文化や社会のありようにとって、あるいは国の未来にとって小さくない分かれ目ではないでしょうか?

 もう一度、問わせてください。
 あなたは、使わなくなった人形やお地蔵様をどう、処置しますか?
 あなたは、かけがえのない家族や友人の亡骸(ナキガラ)をどう、天地へ還しますか?
 本当に「どうせモノだから」と思えますか?

4 魂入れ、お焚きあげ、ご葬儀、ご供養はつながっている

 上記のように、魂入れ、お焚きあげ、ご葬儀、ご供養はつながっています。
 モノの世界以外に、私たちが〈かけがえのなさ〉や〈聖性〉を感じる世界があり、その世界こそ私たち人間にとって霊性の故郷であり、わたしたちが人間としてまっとうに生きるには、その世界を忘れてはならないと思います。
 時として、私たちの心にこうした疑問が湧いてはこないでしょうか?
「どうしてこんな世の中になったのか?」
 その時はまず、自分自身が〈かけがえのなさ〉や〈聖性〉を感じる世界にどう向き合っているか、考えてみましょう。
 世の中を変えようとするならば、世の中に変わって欲しいと願うならば、そこが第一歩ではないでしょうか?

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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