コラム

 公開日: 2015-03-22 

切り放つもの、結びつけるもの ―オウム真理教に学ぶ心の危機―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 オウム真理教は信者の思考を書き換えた。
 麻原彰晃は、家や社会、そして自分への不満や不安を解消するには、心のありようを変えねばならないと説いた。
 その結果、信者は家や社会、そしてそれまでの自分からも切り離された。
 行く先はどこだったか?
 み仏の世界ではなく、麻原彰晃の頭の中だった。

 正統な仏教経典も高度な修行法も、思いつきの似非科学的修行法も、あるいは監禁やLSDまでもが〈切り放ち〉に使われた。
 浮遊する心は、仏教経典の中身から外れ、教祖の妄想と欲望の世界へ引きずり込まれた。
 たとえば、本来「転移」を意味するポアである。
 迷いの世界から悟りの世界へと心を昇華させる修法は密教の根幹をなすものの一つだが、他人の心を強制的に動かそうという仏教とはかけ離れた用い方が説かれ、ついには、心がよりどころとしている肉体を苛め、破壊しようという虐待や殺人へと進んでしまった。
 オウム真理教末期の時点では仏教経典を正しく読める人間が教団内に一人もいなかったものと思われる。
 むしろ、仏教経典から離れて教祖の言葉と一体化することが強制され、そのためには教祖の頭髪や血液や風呂の水までもが神聖で救済力のあるものとして授けられ、売られた。
 仏教経典を学ぶ者として、「道具は使いよう」という古人の言い伝えに深く頷く。
 鋭利な包丁を本来の使用目的である調理に用いるか、それともまったく予定していなかった殺人に用いるかは、手にする人の心一つにかかっている。

 人生相談を受け、現代の世相を眺めていると、似たようなパターンがあちこちにあると気づく。
 子供たちを縛りつけるゲームの問題である。
 無料で誰とでも、何時間も際限なく遊び続けられるゲームが開発され、子供が一旦、ゲームを始めると思考も感情もすべてが動員され、時間が経つのを忘れるばかりでなく、止めに入る親や家族は邪魔ものでしかなくなる。
 自分がゲームを止め、ネット上の仲間たちから切り離されるのは何よりも耐え難いという心理になっているからだ。
 その結果、親は、思いがけない力と怒りで抵抗し、いつの間にか〈別人〉になってしまった我が子の様子に愕然とする。
 やがて、すなおだった我が子は気ままになり、凶暴になり、食事も勉強も疎かになり、部屋に閉じこもり、心身が成長すべき人生の時間を延々と空費してゆく。

 本来の居場所から〈切り離され〉、貴重な人生が〈費やされて行く〉状態と過程は、オウムのマインドコントロールに似てはいないか?
 オウムに我が息子を奪われ、親子の会話が通じなくなった父親は呻いた。
「すなおだった我が子はどこへ行ったのか?」
 これはそっくり、ゲームに毒された今現在の親子の姿ではないのか?

 オウムにおいては、切り離された信者の心は教祖の妄想へと吸収された。
 では、ゲームにおいてはどうか?
 親や兄弟や家庭や友人などと住む五感六根によって感得できる現実世界から、自分の欲望と感情のみの世界へ吸収される。
 中止させようとする親も家族も邪魔者となり、ゲームによって解放された欲望と感情は果てしなく膨張する。
 ゲームの道具と時間を確保するためには何でもやる。
 親に逆らい先生に逆らい、大人の言うことを聞かない。
 節度を失った欲望と感情は人間関係を損ない、粗暴な子供たちを近づけ、粗暴な集団では当然、ありとあらゆる悪事が行われ得る。
 欲望が爆発すれば万引きや強盗を行うだろう。
 感情が爆発すれば暴行や殺人を行うだろう。
 いずれもが、正常な思考の停止した状態で起こる。
 思考停止は何によってもたらされたか?
 ゲームの〈切り離し〉によってである。
 ゲームの弊害としてもう一つ深刻なのは依存症に陥ることである。
 異常な繰り返しは思考も行動も強烈に習慣づけ、潜在意識がゲームを避けられないように形づくられてしまう。
 人間がゲームロボット化するのである。

 私たちがオウム真理教事件に学ぶべきものはあまりにも大きく、多い。
 よくよく考えてみるべきであると思う。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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