コラム

 公開日: 2015-03-25 

誰もが等しく宝ものを持っていることに気づけるか? ―テロリストの思考、仏教の思考(その1)―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 3月24日付の産経新聞は「テロリストの軌跡・チュニジア襲撃(下)」において、実行犯の心が急変していた様子を報じた。

「『あなた方は本当のイスラム教徒ではない』。
 チュニジア博物館襲撃事件を実行して射殺されたジャーベル・ハシュナーウィ(19)が、家族に言い放った。
 聖典コーランに極度に傾倒するようになって間もなくのことだ。

 イスラム過激派が広く共有する思想に、『タクフィール(不信仰者宣告)』がある。
 たとえ同じイスラム教徒でも、信仰が足りない人や『敵』に協力的な人を不信仰と決めつけ、殺害さえ正当化する。

 高校生のジャーベルは『普段は家族と言い争うことはなかった』(兄のムラード)。
 が、こと宗教に関しては家族さえも一方的に断じる教条的な言葉には、過激思想の萌芽(ほうが)がある。」

「後にジャーベルとともに射殺されるヤシン・アビーディ(27)にも、似た傾向があった。

 昨年、ヤシンの近所に住む幼なじみはガールフレンドとお茶を飲んでいたところ、ヤシンから『男女交際はハラーム(宗教上の禁忌)だ』と難詰された。
 周囲との交際を絶っていたヤシンから聞いた久しぶりの言葉は、極めて攻撃的なものだった。」

「比較的ゆとりのある家庭で不自由なく育ち、真面目との評価も受けてきた2人。
 だがその性格は、信仰心が強くなるに従い他者への不寛容につながっていった。」

 狂信者が他の価値観を認められなくなる典型的なパターンである。
 肉親の情や恩さえもが、たやすく見えなくなり、忘れ去られる。
 心の目に頑強なフィルターがかかったのである。
 このフィルターはどこから来るか?
 難問を解くカギが、お釈迦様の悟りにある。
 仏教思想の根幹をなす十二因縁である。

 密教研究の専門誌『密教メッセージ NO20』(「密教21フォーラム」発行)において、北尾克三郎師は、難解とされているこの理論をわかりやすく説かれた。

1 無明(ムミョウ)
 人間と生きとし生けるものはみな生存欲(個体維持と種族保存の欲求:呼吸・睡眠・飲食・生殖・群居・情動など)をもって生まれてくるが、生の始まりにおいて知識はない。
2 行(ギョウ)
 だからまず、その生存欲にもとづいて活動する。
3 識(シキ)
 活動することによって学習し、世界を識別する。
4 名識(ミョウシキ)
 識別された世界がイメージとなったファイルされる。
5 六処(ロクショ)
 それらの識別されたイメージファイルによって、眼・耳・鼻・舌。身体・意識がはたらく。
6 触(ショク)
 眼は色・かたち・動き、耳は声・音と音のリズム・メロディー、鼻は匂い、舌は味(甘味・辛味・苦味・酸味・塩味)、身体は感触(動作の機敏さと強さ、物質の重さと軽さ、硬さと軟らかさ、熱さと冷たさなど)、意識は意味をとらえる。
7 受(ジュ)
 感受されたイメージが快・不快を生む。
8 愛(アイ)
 その快・不快が対象への愛憎を生む。
9 取(シュ)
 愛憎が対象への執着(煩悩)を生む。
10 有(ウ)
 その執着があるから生存が生じる。
11 生(セイ)
 生存があるから生が生じる。
12 老死(ロウシ)
 その生があるから老いて死ぬ。

 その結論である。

「以上の考察によって、釈尊は『人間の煩悩が識別を因とし、執着を果としている』(縁起論)とし、そのことによって『印と果をもたらす識別は人間の意識がつくりだしたものに過ぎないから、もともとはなかったものである。因がなければ果は生じないし、果がなければ因もない』(縁滅論)と結論づけた。
 しかしまた、果としての執着があるから、その執着が因となって人間は生きることができると結論づけた。
 その『縁起論』と『縁滅論』が〝方便〟であり、また、執着によって生きることを認め、その執着を許す心が〝慈悲〟である。
 仏教の根幹がここに誕生した。」

 この世に生まれた私たちは否応なく、このように生きている。
 変えようのない事実であり、ここに観られるのが人生の真実である。
 お釈迦様はまず、この理を悟られた。
 しかし、私たち凡夫はなかなか理解できないので、身近に起こる事象に応じて、理解できる範囲をわかりやすく説かれた。
 それが対機説法(タイキセッポウ)である。
 事象は膨大であり、説法の解釈も時により、所により、人によりさまざまなので教典も膨大なものとなった。
 この全体像をまとめたのがお大師様の「十住心論(ジュウジュウシンロン)」である。
 「十住心論」の解説書としてお勧めなのは、古くは文豪菊地寛著「弘法大師とその宗教」(大東出版社刊)であり、最新かつ最奥と思われるのが、高野山開創1200年を記念して出版された満福寺住職長澤弘隆師著『空海の総合仏教学』(ノンブル社刊)である。

 さて、重大なポイントはここにある。
「執着によって生きることを認め、その執着を許す心が〝慈悲〟である」
 お互いが、生まれた瞬間から否応なく識別行為と執着によって生きている以上、同じ存在パターンを持ち、同時に、それぞれが皆、異なった心といのちで異なった人生を生きているという事実をそのままに観れば、自他の生はおのづから〈等しく〉〈愛しく〉感じられるではないか。
 また、ものごとが因縁によって起こる(縁起論)以上、起こって欲しくないものごとは原因を滅すればよい(縁滅論)という原理は、よりよい自分、よりよい世の中を創るための適切な方法を見つけ出そうという意欲をもたらす。
 この方法こそ、真の意味での「方便」である。
 方便を見つけ出させるはたらきを智慧という。
 だから仏教は慈悲と智慧の宗教である。
 心の目に頑強なフィルターがかからぬよう予防し、治療する方法が慈悲と智慧にありはしないか?

 以下、(その2)としたい。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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