コラム

 公開日: 2015-04-13  最終更新日: 2015-06-21

ご葬儀のお布施はどうやって決めるのか ―お布施に込められるもの―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 ご葬儀の際に「失礼ですが、お布施はおいくらほど用意すればよいでしょうか?」と、よく訊かれます。いつも答は同じです。
「ご葬儀の価値をどう考えるか、そして懐具合がどうか、ポイントは二つです。
 お布施は請求されて支払うものではありません。
 まごころから、自主的にご本尊様へ差し出されるものです」
 これで普段は終わりますが、ご尊家様からのお話が深まると、そもそも、ご葬儀のお布施にはどういう意味合いがあるのか?というところまで行く場合があります。
 葬祭会館ではしばしば「それでは読経をお願いします」とアナウンスされますが、お布施は〈読経料〉なのでしょうか?
 お布施の意義を考えるポイントは大きく二つに分けられます。

一 ご葬儀とは何か?

 これまで何度も書いたとおり、ご葬儀とは、み仏のお導きにより、感謝と尊崇をもってこの世からあの世へと確実に旅立っていただくための儀式です。
 この儀式は文明のスタート以来、世界中でずっと深められ、洗練され続けてきました。
 たとえば、日本では、古墳への副葬品が宝器から祭器へと変化しますが、それは死に際して〈この世の幸せをあの世までそのまま持って行きたい〉という願いが、〈あの世できちんと霊界や仏界や神界へ行きたい〉と変化したことを意味します。
 この世とあの世はつながっていても同じではなく、あの世への切り替わりによって霊的感覚が高まるという意識の飛躍があり、宗教心が深められてきました。
 宗教行為の役割は潔斎(ケッサイ)すなわち、仏神の世界にかかわるために心身を慎みつつ日々を過ごす宗教者へ委ねられました。

 現代の日本では、お釈迦様が養母を送るご葬儀で説かれた教えをお伝えし、故人の心にある〈み仏の世界へ入る扉〉を開けて安心世界へお導きする修法を行うところまで来ました。
 導師となった行者は、ご本尊様と一体になる法を結び、ご本尊様のお力で扉を開き、御霊が安心の世界へ飛翔されるよう全身全霊をかけます。
 ご葬儀で聞かれる「かーっ」という気合の瞬間がそうです。
 出家し、生涯にわたって潔斎の生活を送るのは、プロとしての能力を高め続け、守り続け、役割を果たすためです。読経はこの修法を支える力であり、〈お経の朗読〉は決して、お葬式の主役でも根本でもありません。

 故人となられた方がご本尊様に導かれるのは、新入社員が責任者によって会社員としての心構えやふるまい方を指導されるのと似ています。
 この世で親や家族や先生や先輩や各種の指導者たちに導かれ、〈おかげさま〉によって生き抜く私たちが、あの世へ行けば急に超能力者になり、極楽行きなど何でも意のままになるとは到底考えられません。
 この世で人としての道を踏みはずさぬよう精進するのと同じく、あの世でもまた〈おかげさま〉によって迷わぬよう気をつけたいものです。

二 送る人の心はどうか? 

 私たちは、身近な誰かが亡くなった時、いかに嘆こうが、悲しもうが、悔やもうが、御霊へ直接つながる何ごともできません。
 死は普段の生活で用いるいかなる手段をも超えた世界です。
 故人の御霊に安心世界へと〈渡っていただく〉ご葬儀の修法は、日々修練を積み、み仏の世界やあの世と感応できる法力を持った行者のみに可能な仕事です。
 だから思い余った近親者は、感謝や懺悔や称賛や慰撫や追悼や慚愧など、自分ではどうにもならない煩悶を抱えながら行者へお布施を渡し、安心世界への導きを依頼します。
 やるせなく、どうにもならない思いはプロへ委ねるしかありません。

 たとえば我が子が重い病気に罹った時、たとえ親といえどもどうすることもできず、信頼できる医師や病院を探すのと同じです。
 何が何でも回復させたいと願い、託すではありませんか。
 死者に何が何でも安心の世界へ旅立って欲しいと願うならば当然、同じような思いになるはずです。
 医師というプロを探すのと同じく、行者というプロを求めるのは当然です。

三 結論

 このように、お布施は決して読経の手数料などではありません。
 もちろん、料金として計算する根拠もありません。
 近親者の死を前にした人は人間性が問われており、いかに願い、いかに託すかは、まごころと財布の事情とによって考えるのみです。
 もしも誰かの〈死〉を、早く、安く、簡単にといった便利な作法のみでサラリとやり過ごすならば、それは〈生〉をも軽んずることであり、心から大切なものが滑り落ちてしまうのではないでしょうか。

 目に見えない部分をすべて削ぎ落とし、〈ご遺体とお骨を適法に処置すればそれでよい〉という〈モノの世界ですべてを処理する〉風潮には大変恐ろしいものがあります。
 御霊やみ仏に尊さを感じない心は畏れを知らず、自分の浅知恵とささやかな体力のみを頼る高慢な生き方をすれば、誰しもの人生に伴う根源的哀しみを知り得ず(み仏の微笑は哀しみの池に咲く蓮華です)、真の思いやりもまた知らぬままに自他を傷つけながら生き、死んでしまうからです。
 何と情けない干からびた人生でしょうか?

 当山は以上の理由により、何よりも人の死、自分の心、おかげさま、などをよく考えていただくようお勧めし、金額を決めた請求はしておりません。

四 最後に

 最近多くなっている「自分と伴侶の死後を自分たちで」という形について触れておきます。
 子供などへ負担をかけないため、お墓の準備や共同墓での永代供養契約はもちろん、生前戒名やご葬儀費用の前納などを行う方が増えています。
 人口減少となる後の世代は、収入や社会保障といった面において、現在、高齢者に分類されている方々よりも厳しい時代を生きねばならないと予想されており、とうとう「終活」という流行語まで登場しました。
 もしも、ご自身と伴侶の生涯をふり返り、「ご本尊様のお導きで、ぜひ安心世界へ送って欲しい」と願うならば、そのために行われる修法の価値を身近なものに置き換えてみてはいかがでしょうか。

 こうしたご自身なりの価値判断と財布の事情を勘案してご自身が決められれば、それはその方なりの尊い宗教行為になるはずです。
 死と向き合い、あの世の向き合って行うことごとは、決して単なる経済行為ではなく、人間の尊厳をかけた宗教行為に他なりません。
 まごころをこめて行えば、必ず、み仏は安心世界へお導きくださることでしょう。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

この記事を書いたプロ

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