コラム

 公開日: 2015-04-17 

原発事故の現場を漫画で知らせる竜田一人氏 ―【現代の偉人伝】第206話―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 1年前の4月29日、福島原発で廃炉作業に従事する漫画家竜田一人氏(当時49才)の話が朝日新聞の「廃炉の現実」へ掲載された。
 氏は現場での体験を描く漫画『いちえふ』を平成25年の秋から雑誌へ連載中であり、「連載を終えたら再び、現場で働きたい」と願い、顔を公表していない。
 それ以来、ずっと気になっていた方である。

 氏は「もともと福島には何の縁も」なく、「被災地のために何かできないかと仕事を探して」いて福島第一原発(通称1F)の作業員募集を知り、「好奇心とちょっぴりの義侠心から」就職した。
 以後、さまざまなプロたちがはたらくさまに「あこがれ」ているが、「40年かかると言われる廃炉完了まで、こうした『原発職人』を確保し続けられるかと考えると、不安」であるという。
 理由は年間20シーベルトとされる被曝量の制限である。
 そこに達した人は現場から外され、年度替わりを待つしかない。
 そうして実働時間が限られ、リセットが繰り返されると廃炉作業は危うくなる。

「職人たちの技術を生かしきれないうえ、後継者を育成する時間も足りません。
 1Fの中だけで技術者や作業員の技量を維持するのは、無理なんです。
 いま日本の原発は全部止まっていますが、私は原発作業の技量と人員を確保するために、当面、安全な原発の再稼働は必要だと感じています。
 稼働する原発があれば、1Fで線量がいっぱいに近づいた技術者や作業員は線量が少ない他の原発で働いて食いつなげるし、若手を連れていって修業もさせられます。
 原発事故後、一部のメディアや市民団体は放射線の危険をあおり、収束について悲観論を言い募りました。
 でも、どんな意見を持つ人であれ、日本に暮らす人はみな、廃炉に挑まないといけない事実は変わりません。
 脱原発の理念を振りかざすだけではなく、1Fの現実に向き合うべきだと思います。」

「自分ができることは知れているし、廃炉を見届けられないかもしれない。
 それでも1Fにかかわり続けたい。
 若い人たちにも放射線を過剰に恐れず、福島の再生にかかわってほしいですね。」

 一年経った今年の3月10日、氏は毎日新聞のインタビューで語っている。

「うそは書かないように徹底しています。」

「大所高所からの物言いはしないようにしよう。」

「作業員としての『下から目線』は外さないようにしています。
 あくまで私個人の視点で語れればと思っています。」

「あそこで働いた者の誰かが、何らかの形で(記録を)残す必要があると感じています。」

「マスコミの方が見学ツアーで来て、東京電力さんにバスで一周させられて『いまだに大変だ』と言われても、あなたたちが見たところはそうかもしれないけど、他にもいっぱい現場はあるんだよって言いたくなります。」

「東京では想像できなかったけど、1Fで働く人と補償を求める人がすっぱり分かれているわけではない現実があります。
 避難して交渉している人の中に、あそこで働いている人もいるんですよ。」

「雇用主(東電)を徹底的に悪者にするのも違うし、だからといって事故を起こした企業ですから、その相手に対して、仕事をくれてありがとうと感謝するわけでもない。
 人間の気持ちはそんなにきれいに分けられないと思う。」

「自分の中にはよそから来ているという自覚は常にありましたよ。
 自宅が避難区域にあり避難した人、津波に遭った人、余震に遭った人……。
 自分は同じような経験をしたわけではないので同列には語れないですよね。」

「日本に住む人なら皆事故とは無縁ではないと思いますが、福島や被災地を代表して何かを語れる当事者ではないということです。
 半年間、働いたからといって自分が何かを代弁できるとはまったく思えません。」

「とかく二極化された論争になりがちですが、そういった論争に拘りすぎて、現場がないがしろになるのだけは避けてほしいと思います。」

「作業員の年間被ばく限度量を20ミリシーベルト弱に定めている会社が多いので、線量をきちんと管理しないとすぐに人が足りなくなってしまいます。」

「放射線よりも直接的に身体にこたえるのはなんといっても暑さです。
 とくに夏場は熱中症が頻出します。」

「1Fで作業する人数だけなら待遇が良ければ確保できるでしょうが、このままでは経験や技術のある作業員が足りなくなるというのが一番の問題なんだと思います。
 新しい職人を育てようにも、高線量の建屋内では、ネジをゆるめる仕事でも1時間でその日の作業は終わりです。
 1Fで技術の継承は難しい。
 東京でも建設的な議論がなされるといいと思っています。」

「ここまで漫画をちゃんと描くと分かっていたら、現場をもっと丁寧にいろんな角度から見てきたのにと思っています。
 覚えていないところを想像では描けないですから。」

「1人1人が期待する原発像がありますよね。
 ある新聞はいかに労働環境が悲惨だったかを徹底的に聞こうとしました。
 確かにひどい目にも遭いましたけど、個人的にはそれでも面白い経験だったと言えます。
 語弊があるかもしれないけど。
 あとはやたらと身体を心配する質問ばかりだったり、再稼働や原発推進と言わせようというご質問もいただくこともあります。
 皆さん、いろんな読み方をされますよね。
 いかに原発を巡る議論が複雑化しているかを身をもって思い知りました。」

「『真実』が何かなんて私にはわからないし、現場にぱっと行って『真実』を私が掴んでしまうなんてことはあり得ないと思います。
 繰り返しになりますが、この漫画においては『真実』を探ることよりも、私が見てきたことを描くことが重要だと思っています。
 福島なり1Fの一側面を記録することが全てなんです。」

「一つ、これが『真実』と決めてしまうと他のものが見えなくなる可能性があります。」

「四六時中緊張して働いているわけではないですよ。
 ギスギスしてもしょうがないし、リラックスして働ける環境も大事です。
 やっぱり、廃炉作業を終わらせるためには誰かが働き続けないといけないので。」

「この漫画を通じて、現場で働いている人の顔が想像できるようになってほしいなと思っています。
 親近感とは違いますけど、どういう環境で働いているかは分かってほしいという思いは込めています。
 レッテル貼りをしたり、大所高所に立ったりしているだけでは解決しない問題が現場にはまだまだあると思うのです。」

「国の政策を議論するより先に、目の前の現場を片付けたり、作業員が自分の境遇をどうするかを考えるので精いっぱいという場所が1Fなんだ、と私は思っています。
 もう少し連載を続けて、また1Fに戻ろうと考えています。
 廃炉の行方を自分の目で確かめたいのです。」

 氏は「真実なんてわからない」と言うが、読む者は〈真実の声〉と感じる。
 確かな現実があることをそのまま告げている貴重な資料と言えるのではないか。
 現場を体験できない私たちは、こうした現場の報告によって日々、無事に処理作業を続けねばならない〈現実〉がいくばくかは想像できる。
 その先に、原発は何であり、どうあるべきかが、それぞれなりに考えられ、語られ、選択する行動が生まれるのではないか。
 理想だけで現実を無視すれば明日が危ういし、現実を言いわけにして理想を捨てれば未来が危うい。

 氏は平成26年4月23日、『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) 』を出版し、今年の2月23日、『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(2) 』を出版された。
 また、ぜひ1Fにかかわり、現実を広く伝えて欲しい。
(氏の漫画には、一部の医師などから、放射能の危険性に関する姿勢について批判がある)

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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