コラム

 公開日: 2015-04-21 

ギブアンドテイクと宗教あれこれ

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 お一人で暮らしておられるAさんがご兄弟たちと二度目のご来山をされた。
 お兄さんは、なかなか歯切れの良い方だ。

「妹からご住職の方針を聞いて思ったのは『そんなうまい話はないだろう』ということでした。
 私たちは娑婆でずいぶん苦労をしてきました。
 だから、世の中はギブアンドテイクだと身に沁みています。
 きちんともらうべきものをもらえないと、とんでもないことになります。
 人がよいと泣きを見るのです。
 ご住職のところと共同墓の永代供養契約をしても、年間管理料はないし、檀家にならなくてもいいし、何十万円出してくれといきなり請求も来ないなら、いったい、どうやって妹は守ってもらえるんですか?」

 お応えした。

「私も娑婆で失敗してこの道へ入ったので、疑うお気持ちはわかります。
 しかし、お寺は娑婆ではありません。
 行者である僧侶は出家者です。
 そして、み仏は契約する相手ではないのです。
 そもそも、お釈迦様はどうやって教えを伝え、修法したのでしょう?
 あちこちと歩いては教えを必要とする人々と出会い、感謝の表現としての食べものや着るものや寝床を受け取り、また、歩かれました。
 お大師様も同じく、托鉢が出発点でした。
 小生もそうです。
 托鉢は、ギブアンドテイクではありません。
 ご縁となる方のために、ただ祈り、法を説き、法を修するというギブあるのみです。
 それを受けて〈救い〉と感じる方の心にある仏心(ブッシン)が動けば、おのづから、行者にとって必要なものを与えないではいられなくなります。
 ご縁の方と行者の間には何らの契約もありません。
 ご葬儀でも同じです。
 当山の修法によって死後が安心であると考え、生前に、あるいはご不幸の発生後に申し込まれた方のため、ただただ、お大師様から伝わるやり方で引導(インドウ)を渡すのみであり、一連の修法に値段のつけようはありません。
 人は皆、み仏の子であり、仏心が魂の中核にあるので、人間社会のお寺は結果的に成り立ち、今日も法務を続けていられます。
 み仏の〈おかげ〉で皆さんは救われ、救いの場も保たれる、ただ、それだけです。
 もしも、こうした宗教の場がなくなるとすれば、それには二つの理由しか考えられません。
 一つは宗教者がギブアンドテイクという方法に走り、み仏の〈おかげ〉を信じなくなること。
 もう一つは、娑婆の方々が、み仏の〈おかげ〉を感じなくなること。
 いずれも宗教心の消滅を意味します。
 お大師様が説かれたとおり、宗教は心によって興り、心によって滅ぶのでしょう。」

 ただし、宗教といってもさまざまである。
 4月19日付の産経新聞『読書』の欄で、情報学者吉田一彦神戸大名誉教授は、森本あんり著『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』について書いている。

「アメリカに移植されたキリスト教は、神と人間が対等な契約関係に立つというところから出発した。
 そうなると互いに権利と義務を有する結果になる。
『つまり、人間が信仰という義務を果たせば、神は祝福を与える義務を負い、人間はそれを権利として要求できる』(24ページ)。
 神の前で人は全て平等であり、学歴や教会の認知がなくても伝道者になれる。
 これがアメリカの反知性主義の根源である。」

 こうして「信じる者には必ず願う結果がもたらされる」と考え、〈結果〉が得られるまでお金も武器もいのちもかけて、どこまででも突っ走る。
 ――明るく、希望に満ちながら……。
 何しろ、約束してくれる相手は信用ならない人間ではなく、神なのだから、無敵の戦車に乗っているのと同じく、どこまで行こうと心配はないのだ。
 何とわかりやすい道筋だろう。
 日本でもこれまで、似たようなパターンで人々を熱狂させつつ新興宗教が勃興した。

 その点、仏教寺院は娑婆の方々から疑われて当然だ。
 娑婆的な契約と無縁の世界なのだから。
 すぐには理解していただきにくいが、理解してくださる方々がおられるので成り立っているだけのことである。
 み仏の〈おかげ〉と言うしかない。

 今日の守本尊文殊菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=WCO8x2q3oeM


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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