コラム

 公開日: 2015-04-24 

ご葬儀は卒業式 後輩へ何を受け継ぐか

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 出張で一日空きましたが、復活しました。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。



〈この世とあの世をつなぐかのような小野寺善秋氏(仙台市在住)の作品〉

 最近、A氏のご母堂様をお送りした。
 それは自宅を開け放ってのご葬儀だった。
 ひ孫のお別れの言葉は、朝の「行ってらっしゃい」と、帰宅しての「お帰り」に対する感謝が圧巻だった。
 ひ孫を産んだ孫は、自分をさて置いて若い者のためになろうとしてくれたことに涙し、言葉が詰まった。
 ごく普通の暮らしをしておられたご一家の慎ましい〈家族葬〉だったはずなのに、人又人、五月晴れを思わせる好天のもと、外に立ったままの参列者も少なくなかった。
 お線香を捧げる意味などの短い法話は、誰もが身を乗り出し、あるいは頷きながら真剣に聴いてくださった。
 人と人との〈まごころのつながり〉という私たちの手から零れ落ちつつつある宝ものが、あまりにも神々しく輝いていた。

 今の日本社会では、他者を自分以外の〈異物〉と感じ、カタツムリのように殻へ閉じこもって自分を守ろうとする過剰な〈個我〉の意識が肥大化し、結果的に誰しもが生きにくくなっている。
 人はバラバラになっているだけではない。
 不安な人々は敵を仮想する単純なイデオロギーや排他的な宗教を頼り、熱病に浮かされたように集まり、虚しい花火を打ち上げ、周囲の人々に火傷を負わせ、自分たちも花火が消えた後の闇に呑まれる。

 個人の心が乾き、社会もまた乾いてきたこの時代をどう生きればよいかは、とても難しい問題である。
 殻の中にいる〈楽〉を味わってしまった私たちは、容易に殻を手放せない。
 しかも、時流に乗る宗教学者や評論家たちなどは、もっとうまく〈楽〉が味わえそうなレシピを競って提供する。
 しかし、思いのままに味わえるのは一部の恵まれた人々だけであり、ほとんどの場合、自己流を通そうとする頑なな人々の周囲にはありがたくない影響に悩む膨大な人々が生じる。
 社会に生まれ落ちた私たちは、社会というネットワークの中でしか生きられないので、その糸から超然としようする人は、ネットワークにとって困りものの〈異物〉となりがちだからである。

 誰にとっても救いとなる解決法は、まずネットワークのありがたみに気づくことであり、究極的には、個我の殻そのものが空(クウ)であると気づくことではなかろうか。
 こうした気づきそのものはたやすく手に入っても、実際に自分の気分とぶつかるものに対しては反射的に戦闘的、あるいは逃避的になりがちではないか。
 私たちは子供の頃から、世代や思考や生活感覚の異なる多様な他者たちと自然に接し、鍛えられて柔軟で適応力に満ちた心性を育てる環境にない場合が多くなっている。
 だから、他者との具体的なやりとりの現場で、〈ネットワーク内存在〉であることに即した行動をとるには、自省と根気が欠かせない。
 失敗しても、失敗しても、諦めず、おかげさまとつぶやきながら殻を自在に出入りできる習慣をつくってゆくしかない。
 それには、まず家族、そして友人の存在は欠かせない。

 長澤弘隆師は『空海の仏教総合学』へ書かれた。
「葬儀とは、故人にとっては、家族や親しい人と別れあの世へ旅立つ式、この世の卒業式。」
「葬儀とは、故人が遺した物心両面のものを受け継ぐ式。」
 A氏のご母堂様は、練磨された美しいお人柄にふさわしい卒業式を終えられた。
 ご家族方は、「物」もさることながら、「心」を確かに受け継がれた。

 いったい何が本当に幸せで、何が本当に不幸なのか?
 今つかんでいるつもりの幸せは、欺瞞やその場しのぎの産物でなく、決して色あせない本ものなのか?
 今感じている不幸は、自分の勘違いや利己主義に気づかせてくれるきっかけではないのか?
 A氏のご母堂様は、90年にわたる人生の最後の最後に、送る人々へ人生の真実を見せ、一人一人の胸へ問う思いを起こさせてくださった。
 深く、深く感謝し、ご冥福を祈りたい。

 ひ孫さんからいただいたお別れの言葉の原稿(一部)である。
 慎んで記録しておきたい。
「~学校に行く時、げんかんまで来て、笑顔でみおくってくれたね。
 そのおかげで毎日楽しく学校に行けたよ。
 そして、帰って来た時も、大きな声で『おかえり!』って言ってくれてありがとう。」
「私が今宝物にしている物は、私が小さい時に家族でじょうげさんに言った時にばあちゃんに買ってもらったピンクのバックだよ!
 買ってもらった時、すごいうれしくて、どこにいくにもあのバッグをさげて出かけてたんだ。
 これからもずーっと大事にするね。」
「これからは空の上で私達を見守ってね。
毎日仏だんにかんかんしにくるね
 本当にいままでありがとう。
 ばあちゃんのこと大好きだよ。
 私はばあちゃんのひまごでとてもうれしいです。」

 お孫さんからいただいたお別れの言葉の原稿(一部)である。
「小さい頃、髪が長かった時に、ばあちゃんが毎日、髪飾りを変えながらゆってくれたり、廊下でひなたぼっこをしながらぬい物を教えてもらい、台所では二人で料理を作り、農協祭の料理部門で銀賞をとり、大喜びをしました。」
「一番の思い出は~号(※車)です。
 学校の送迎はもちろん、買い物にでかけたりしましたね。
 学校では~ちゃんのばあちゃんが来たよ!!って友だちが教えてくれるくらい~号は有名でした。」
「いくつになっても、ばあちゃんはばあちゃんのままでした。」 
「~育ててくれてありがとう。
 いっぱいの愛情をありがとう。
 そして、ばあちゃんの孫に生まれてきて本当に良かったと、今、心の底から思ってます。
 ばあちゃんが私達に教えてくれた事、それから先もみんなに伝えていきます。
 いつも笑顔でいてくれたばあちゃんが大好きです。」
「長い人生、お疲れ様でした。
 そして私達の『これからの人生』をばあちゃんの優しさで見守っていてください。」 

 今日の守本尊勢至菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=qp8h46u4Ja8


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。合掌

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