コラム

 公開日: 2015-04-28 

私利私欲、怒り、そして喜びの泉 ―ダライ・ラマ法王著『思いやること』について―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 ブログ「チベットを救う道はあるのか? ―ダライ・ラマ法王の悲痛―」を書いた日、平成26年10月2日に発売されたダライ・ラマ法王著『思いやること こころを育てるための小さなコツ』が届いた。
 以下、編者であるヴァージニア大学のジェフリー・ホプキンスチベット学・仏教学名誉教授の「序文」から抜粋した。

「ダライ・ラマ法王がある国に招聘(ショウヘイ)されている、という話題が持ち上がると、北京の中国共産党政権は、その国の指導者に異議申し立てを行います。
 するとたいていの国は、法王の訪問を不都合なものととらえ、訪問の規模を縮小したり、『個人的な』訪問に変えてしまいます。
 中国政府は、いったい何を恐れているのでしょう。
 ダライ・ラマは軍隊も、経済力も、政治的な切り札も持っていません。
 ただ非暴力と思いやりを説いているだけです。
 彼らは、何を恐れているのでしょうか。」

 案の定、と言うしかない。
 各国の政権は中国の意向に気兼ねし、国内でダライ・ラマ法王の存在が大きく注目されないようさまざまな手を打〉、きっとマスコミへも睨みを効かしていることだろう。
 すべては中国政府の〈恐れ〉による。 

「ダライ・ラマ法王は、、チベット以外の国々でチベット文化を再建すべく、影響力を及ぼしています。
 世界中の宗教的・政治的指導者たちに、『私利私欲を超えて、もっと大切なことに目を向けてほしい』と訴えてきました。
 思いやりと優しさの大切さを説きながら、宗教にしろ政治にしろ、『すべての人の最小限の要求に目を向けてほしい』と主張してきたのです。
 これが恐れられている理由でしょうか。」

 共産党政権は人間の集団である。
 チベット侵攻の目的が国家規模の私利私欲にあったことは史実が証明しており、半世紀以上にわたって殺人や拷問や略奪や破壊を重ねてきた事実は、かかわってきたすべての人々の胸中から消しようがない。
 チベット人はもちろん、農民や少数民族などが求める人間として「最小限の要求」を多分に無視しつつ国策を進めてきた人々に良心の呵責のないはずがあろうか。
 ダライ・ラマ法王の〈良心への呼びかけ〉によって世界中の人々が実態に気づき、人権蹂躙を糾弾する声が広がることを恐れているのだろう。

「毛沢東は『政権(パワー)は銃から生まれる』と言いましたが、ダライ・ラマはこうおっしゃっています。
『もっとも大きな力は、あなたの心に宿る思いやりから生まれる』と。
 その力があれば、世界中で少しづつ調和や平和をつむいでいくことができます。」

 銃で奪い銃で維持される政権は、やがて銃で倒されるだろう。
 お釈迦様は説かれた。

「人間が他の動物より上に立つ理由は、他の動物を冷酷に苦しめる力を持っているからではない。
 彼らを哀れむことができるからである」

 人間が他人を力でねじ伏せる時、人間として他の動物よりも勝れているのではない。
 力を放出して他人のためになれる時、真に人間たり得るのである。
 
「人々は法王の話に気づきをもらって、『ほかの人たちの幸福のために尽くしたい』という気持になるのです。
 世界史を振り返っても、これほど多くの人たちに、これほど多くの本を『一緒につくりたい』と思わせた指導者は、ほかにいないのではないかと思います。」

 他人のためになろうと思う時、虐(シイタ)げられている人々や、うちひしがれている人々の存在に気づく。
 あるいは、虐げられている人々や、うちひしがれている人々の存在に気づく時、〈見捨てられない〉心が起こる。
 ダライ・ラマ法王は、そうした気持にさせる。
 ダライ・ラマ法王は、世界中の人々が人間本来の思いやりを発揮することにより、すべての人々が救われ、結果的にチベットも救われることを願っておられる。

「ダライ・ラマ法王を思うとき、私たちは、法王が体現するおもいやりをすぐ思い浮かべます。
 法王は思いやりに、生涯を捧げてきたのです。」

 ダライ・ラマ法王は、まさに、観音菩薩の化身である。

 以下は、本文中にあるダライ・ラマ法王ご自身の言葉である。

「愛情と思いやりが怒りに支配されるのを許せば、人間の知性の中でもっとも素晴らしい『智慧』を犠牲にすることになります。
 智慧とは善悪を判断する力のことです。
 怒りは利己主義と並んで、今日の世界が抱えているもっとも深刻な問題のひとつです。
 怒りは、アジアや中東、アフリカ、されには先進工業国と開発途上国との間で起こっている対立を主導しています。
 こうした対立が起こるのは、お互いの間にどれほど多くの共通点があるか、理解できていないからです。」

 金銭トラブルを起こした少女が、友人を殺すよう少年たちに頼む。
 対立する勢力に家族を殺された人が、復讐のテロを起こす。
 不正や不実を暴かれた政治家が、相手を社会から抹殺しようとする。
 いずれも怒りによって智慧が覆われ、人間として、社会人として、あまりにも不適切な行動に走っている。
 こうした形が暴力的紛争や戦争にまで及んでいる。
 お互いが〈苦しみを離れることと、幸せをつかむことを求めている人間同士〉であるという真実が見えなくなり、〈平穏な日常生活を求める人びとによって成り立っている国家同士〉であるという真実を忘れている。

「世界の指導者たちを含め、誰もが、人類や文化、イデオロギーの違いを超えるすべをそろそろ学ぶときです。
 人類は共通の課題を抱えているわけですから、お互いを大切に思うべきなのです。
 そうすることで、個人も、家族も、地域社会も、国家も、世界全体も、向上していきます。」

 私たちはいかに〈違い〉を競い、誇り、主張し、ぶつけ、争っていることか。
 紛争や戦争は、「違いを超える」智慧がはたらかねば解決しない。

「チベット仏教の経典によると、利他主義を身につけるには、幸せなときはあまり有頂天にならず、幸せを生むよいカルマを、命を持つすべてのものの幸福に捧げること。
 そして苦しいときは、ほかの者たちの苦しみをすべて引き受けることです。
 人生にはよいときも悪いときもありますが、このようにすれば、勇気が保てますし、運不運に心の平和を乱されずにすみます。
 幸せすぎず、悲しすぎず、安定していられるでしょう。」

 私たちはともすると、幸運は自分だけのものにしておきたい。
 そして、利己主義と煩悩の肥大が幸運の女神を追いやる。
 だから幸運は喜んで誰かへ回し向けること。
 私たちはともすると、不運を誰かに引き受けてもらいたい。
 そして、他人へ不幸を回し向けたい心は不運の力を強め、新たな不運を招きかねない。
 だから、不運の苦しみを知った時こそ、他人の苦しみを放置せぬこと。
 こうした心構えで生活すれば、運不運に一喜一憂せず、周囲の人々と信頼関係を築きながら落ち着いた日々が送られる。
 国家間も、民族間も、異なる宗教間も同様である。
 ダライ・ラマ法王の「幸せすぎず、悲しすぎず」は至言である。

「明らかに、地上のあらゆるトラブルは結局、エゴイズムと自分だけを慈しむ心から生じています。
 心に留めておいてほしいのです。
『自分に親切にしなくては』などと思わなくとも、あなたは自然と自分自身を大切にしています。
 人生を大切にしているからこそ、『苦しみから解放されて、幸せを手にしたい』と望むのです。
 同じように、命を持つものはすべて、当然ながら自分を大切にしています。
 それを見れば、彼らも苦しみから解放されて、幸せを手にしたいのだとわかります。
 私たちはみな同じなのです。
 違いがあるとすれば、他者はたくさんいるけれど、あなたはたった一人だ、ということ。
 自分の目的を果たすために、ほかのすべての者を利用したところで、幸せにはなれないでしょう。
 しかし、たった一人しかいないあなたが、全力で他者に尽くしたとしたら、その取り組みは、あなたの心の中で喜びの泉となってくれるでしょう。」

 私たちはいかに「自分の目的を果たすために、ほかのすべての者を利用」しようとしているか。
 いかに「すべての人の最小限の要求」が見えなくなっているか。
 自他の心中に真の喜びをもたらすため、何をすべきか、よく考えつつ、かけがえのない一日、一日を生きたい。

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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