コラム

 公開日: 2015-04-30 

謝罪と赦し ―ユダヤ人・アーミッシュ・イスラム法―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈4月26日、絶好の好天のもとで、お花見が無事、終わりました〉





 最近、新聞でよく目にする「謝罪」について少々、考えてみたい。
 
1 謝罪の当事者

 中国や韓国の人々は、70年前の太平洋戦争で自分たちへ被害を与えたことを謝れと要求し続けている。
 日本は国際法上、決着済みであるとの立場だが、両国は、納得できるような謝罪を得られるまで永久に要求し続ける構えを崩さない。
 では、そもそも謝罪とは何か?
 評論家曽野綾子氏は、4月26日付の産経新聞に『当事者でない者の謝罪』を書いている。

「謝罪ということは、直接の被害を受けた人と、与えた人とが、現在地そこに当事者としている場合にしか、なし得ないことではないだろうか。
 仮に私個人に、70年前に起きたことを今でも言い立てる人がいたら、付き合いたくないと思うに違いない。
 70年前、顔も見たこともない私の曽祖父が犯した悪事を、今普通の市民として生きている私に責められても、私としては謝りようがない。」

「ユダヤ人は、謝罪という点では私たちよりもっとはっきりした認識をしている。
 謝罪は、直接の加害者と被害者の間でしか成立しない。
 あるドイツ人が、一人のユダヤ人に『戦争中ナチスに加わった同胞の罪を赦してください』と言った。
 するとユダヤ人は答えた。
『私はあなたを裁くことも赦すこともできません』
 もし当事者でない者が謝ることができるなら、私たちは仮に殺人を犯しても、容易に代理人を立てて、謝罪をさせておけば済むようになるからであろう。」

 確かに、個人と個人の間では曽野氏やユダヤ人の考え方が妥当なのだろう。
 悪行を実行した〈罪の意識〉なしには真の謝罪が成り立たない以上、加害者本人以外の誰かが成り代わることはできない。
 血塗られた手に、倒れた相手に、愕然としてこそ贖罪の意識が生ずる。

 しかし、二つのできごとは忘れられない。

2 アーミッシュの悲劇と赦し

 平成18年10月2日、アメリカ東部ペンシルバニア州ランカスター郡において、アーミッシュの運営する学校が地元に住むトラック運転手チャールズ・カール・ロバーツ4世容疑者(32才)に襲われ、女子児童5人が射殺されるという事件が起こった。
 男は事件後、自殺した。
 死亡した13才の少女に次いで、11才の妹も「私から撃って。ほかの子は解放して」と男に告げていた。
 そして、現場へかけつけた男の妻マリー・ロバーツさんと3人の子供たちは、罪を許すアーミッシュたちに抱擁して慰められ、妻は葬儀にも招かれたという。
 妻は共犯者でなく、事件そのものに関わりはなかった。
 しかし、駆けつけて詫びた。
 夫が犯した取り返しようのない罪を詫び、子供や仲間を殺されたアーミッシュたちは赦し、慰めた。
 それだけではない。
 男の葬儀に参加した75人前後のうち約半数はアーミッシュであり、妻と3人の子供たちなど遺族へ赦しの言葉をかけた。
 その様子は全米へ報道され、大きな反響を呼んだ。
 後に、マリー・ロバーツさんは書簡を発表した。

「わたしたち家族は皆さんの愛で、強く求めていた癒しを得ることができた。
 皆さんの贈り物に、ことばで表せないほど感動した」

 アーミッシュであるヘンリー・フィッシャー氏(元農夫)は語っている。

「怒りは私たちの手段ではありません。
 怒りは無意味です」

 同じくアーミッシュのフラン・ベイラー氏。

「アーミッシュの共同体は疑いを持たず外部から銃で襲撃することなど考えません」
「私達は赦したい。
 そのように育ってきましたから。
『善をもって悪に答えよ』です」

3 イスラムの掟と赦し

 平成26年4月、イラン北部ヌールで、死刑囚が公開処刑される寸前、殺人事件で殺された被害者の母親が公衆の面前で罪を許したため、彼は首からロープを外され、禁固刑となった。
 平成18年にけんか相手を殺し、死刑判決を受けた男が公開処刑を受けるため、絞首台に立った時、被害者の母親が公衆へ赦しの言葉を告げ、男を平手打ちし、夫と2人で首のロープを外した。
 夫は元サッカー選手で指導者、死刑囚は教え子だった。
 イスラム法(シャリア)は、被害者の家族側からの求めがあれば、刑の執行延期や軽減が認められると定めている。

 なお、イスラムの「眼には眼を」の掟に関しては、こうしたできごともある。
 平成23年7月、イランにおいて、求婚相手アメネ・バフラミさんに断られた大学の同級生が腹いせに顔へ硫酸をかけ、失明させた罪により、同じく失明させられることになった。
 しかし、実際に手をくだす直前、国際人権団体からの申し入れもあり、アメネ・バフラミさんは男を赦した。

「この7年間、硫酸をかけた者はキサースの罰を受けるべきだと思い続けてきました。
 でも私は今日、自分の権利を行使して彼を許しました。
 神はコーランの中でキサースを説かれましたが、キサースより許すほうが立派なことだとも説かれています。
 私のしたことは国のためでもあります。
 いろんな国が、私たちがどうするか見守っていましたから」

 アメネ・バフラミさんの母親も語った。

「娘を誇りに思います。
 彼を許すことができたアメネは強い子です。
 おかげで娘も私たち家族も心の平安が得られることでしょう」

3 結論

 謝罪と赦しは、法的問題以前のところに発し、法律を超えた範囲で私たちの心へ大きな影響を及ぼす。
 謝罪は、犯罪者そのものであろうとなかろうと、〈自分は人間として罪を犯しつつここまで生きてきた存在である〉という意識があれば、何らかの形で、いつでも行われ得るのではないか。
 そして、「赦し」も、そこに〈根〉をもっているのではないか。
 だから、当山の修法はここから始まる。

「我れ昔より造りし所の諸(モロモロ)の悪業(アクゴウ)は
 皆な無始(ムシ)の貪瞋癡(トンジンチ)に由(ヨ)る
 身語意(シンゴイ)より生ずる所なり
 一切我れ今、皆な懺悔(サンゲ)したてまつる」

 謝罪は、愚かな自分が行わないではいられないし、相手のためは、そうするしかない。
 赦しもまた、愚かな自分が赦さぬ者ではいられないし、相手のためを思えば、そうするしかない。
 よく考えてみたい。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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