コラム

 公開日: 2015-05-05 

殺した敵の遺品で食事をする慰霊者 ―戦場のナイフ・フォーク・スプーン―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈ネット上にある同形の三点セット〉

 ある日、戦友ならぬ敵の遺品を大切にしておられた元日本兵Aさんのご遺族から、お焚きあげのご相談があった。
 戦艦に乗っていたAさんは太平洋戦争中、さる海域で、捕虜となった牧師を海へ突き落とすよう命じられ、心ならずも実行した。
 牧師の遺体へ太刀魚が群がり食い尽くすありさまは強く目に焼きついた。
 上官へ願い出た。
「牧師の食事道具を遺品として預からせてください」
 無事、戦争を生き抜いたAさんは、生涯、そのナイフ・フォーク・スプーンで食事をした。
 
 それぞれ長さは19センチメートル弱、銀色に光っている。
 いずれも使い込まれており、やや大ぶりのスプーンを手に取ってみると、大柄な人が急いで食べる雰囲気を感じる。
 4本あるフォークの歯は外側の2本がやや手前へ折れ曲がっている。
 こうしたのは牧師か、それともAさんか。
 ステンレス製のナイフは刃が磨き出されており、何度も何度も手がかけられたらしい。
 フォークとスプーンの手元には「U・S・」と彫られている。
 柄が分厚いナイフは同じ書体で浮き彫りになっている。
 ナイフだけは裏面に1945の数字もあるが、製造年なのだろうか。
 軍人はこれに用い、食事をして生きながら、戦場で敵のいのちを奪う。
 3つの道具が果たす役割をどう考えればよいのだろう。

 それにしても、これを使い続けたAさんの気持は、第三者が忖度できる域を超えている。
 息子さんへだけはこう言っていた。
「人殺しの私は長生きできない。
 早死にするだろう」
 事実、早過ぎる死となり、道具に込められた思いは次の世代へと伝えられたが、さらに、その次の世代が深い因縁のまつわるモノを引き継ぐにはあまりに荷が重すぎると判断され、当山へ納められた。

 因縁を解く修法が終わり、眺めてみたが、使う気にはなれない。
 ネットで調べると、こうした現場の気配を持つミリタリー・グッズは人気があるらしい。
 いったい、いかなる目的で手に入れ、使うのか?
 想像できない。
 今、三点セットはモノそのものとして鈍い銀色を放ち、黙したまま、目の前でじっと並んでいる。
 このモノたちは、このままモノとして天地へ還る工程へ入れられるべきか、それとも、まだ、何らかの形で誰かの心に関わってゆくべきか。
 よくわからない。

 戦争にまつわるお焚きあげのお品は、手紙であれ、軍刀であれ、勲章であれ、いつもこうなる。
 しばらく、祈りを続けようと思う。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

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