コラム

 公開日: 2015-05-08 

原発の原理的問題点は、事故を教訓として生かせないところにある

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈地震の多発地帯にたくさんの原発を持っているのは日本だけです〉

 いよいよ明日、映画『日本と原発』の鑑賞会を行います。
 この映画には、「これ一本で原発を取り巻くすべての問題を提起します」と宣言しているとおり、私たちが「原発とは何であるか?」を考えるための問題点がとてもわりやすく、かつ、客観的事実とデータに基づいて示されています。

1 科学の発展は、失敗と改良を繰り返す形でもたらされてきたが、原発においては、そうしたパターンが不可能である

 福島原発の事故には、次のステップへ進むための〈教訓〉とする余裕などありません。
 生活を奪われ、人と家の歴史を奪われ、希望を奪われ、病気や自殺などという形でいのちを奪われた膨大な被害者たちの人生を、いったい誰がどのように〈教訓〉として〈生かせる〉のでしょうか?
 個別的人間の生活が破壊されたというよりも、地域が根こそぎ破壊されたのです。

 被害が及ぶ範囲は、人間の生活上ほとんど〈無限定〉と言わねばなりません。
 放射線量が異常に高まり吉田所長以下が死を覚悟した状況から具体的対応へと進むことができたのは、まったく原因不明ながら放射線量が一時的に下がったからであり、もしもそうした奇跡的変化がなかったならば、手のつけようがない福島原発は放棄され、東京も人が住めない街となって日本は壊滅していたことでしょう。
 事実、そうなるだろうと覚悟したヨーロッパ圏の人々はいち早く日本を脱出しました。

 普通、事故死と言えば、事故によって誰かが亡くなる〈個別の死〉ですが、原発事故は、〈地域の死〉から〈国家の死〉へとつながり、最悪の場合は人間という〈種の死〉すらもたらす可能性を秘めています。
 避難した方々の病死や自殺は個別の死ですが、もはや人間が足を踏み入れることができなくなった山河や町は地域の死を表しており、現場放棄に至らなかった上記のできごとや燃料棒を貯蔵した場所への奇跡的水の流入など、いずれも人間の意志を超えた偶然が重なったために〈国家の死〉へ至らなかったことは忘れられません。
 もちろん、現場に踏みとどまり、今も汗を流している方々の姿勢と努力には感謝しきれません。
 しかしそれはいかに懸命であっても、与えられた土俵で相撲をとるようなものであり、土俵は私たちが科学的に作り上げたものでなく、偶然の重なりによってもたらされたという事実は動かし得ません。

2 原発事故は、検証不能であり、原因究明も困難である

 飛行機事故のような大事故でも必ず科学的方法による検証と原因究明が行われ、二度と繰り返さないための方策が練られ、責任の追及も法的に行われます。
 しかし、原発事故は放射能によってそうした科学的行動を許しません。
 事故から三年以上経った今なお警察も検察も現場検証ができぬままに、日々、病死や自殺などによっていのちを落とした方々のご遺族による訴訟が積み重なっています。
 そして、いったい、事故は地震によって起こったのか、津波によって起こったのか、あるいはいかなる複合によって起こったのか、原因の究明はなされておりません。

3 私たちのできることは、原発を続けるか、やめるかの選択しかない

 原発事故は起こるものであり、起こった時には手の施しようがなく、その被害は人類全体、生態系全体に及びかねません。
 今現在も、私たちの知らぬ間に、山や川や海や里にいる樹木も虫も獣も鳥も魚も、原発事故の放射能によって確実に影響を受けつつあるのです。
 これを繰り返すかどうか、二つに一つの選択は先延ばしできません。
 たとえば、この先30年の間に南海トラフ大地震が起こる可能性は87パーセントとされています。
 その際、真っ先に最も大きな事故が起こりかねないと想定されているのが中部電力浜岡原子力発電所ですが、やっていることと言えば、これまでと同じく防潮堤の建設です。
 そんなことよりも、早く廃炉を決め、いったん燃え出せば日本を壊滅させかねない大量の燃料棒を運び出すべきではないでしょうか。
 福島では、たまたま燃えずに済んだだけであることが、すでに忘れられているのでしょうか。
 そもそも、今現在行われている原発を再稼働させるかどうかの基準は、科学的に安全を保証するものではありません。
 原子力規制委員会の田中俊一委員長の言葉がそれを如実に物語っています。

「私たちは現行の規制基準に適合しているかどうかを判断しているだけであって、絶対安全ということで安全かどうかと言われるなら、それは私どもは否定しています」

 これが科学者の良心というものでしょう。

4 日本が原発を国策として動かし始めたのには二つの理由があった

 日本は資源小国なので、原発の開発による「自動完結型永久エネルギー構想」をもって世界に伍して行こうとしました。
 しかし、胆となる再処理も、高速増殖炉も、六ヶ所村ともんじゅで破綻していることは明白です。
 だから経済合理性を唯一のよりどころとしていますが、リスクが無限大に及ぶ以上、損得の計算は成り立ちません。
 これまでに生じ、これからも時々刻々と増えて行く福島原発の被害を正確に計算し、保証しようとするならば、東京電力はもちろん、日本国家すら成り立ち得ないかも知れません。

 もう一つの理由は、プルトニウム処理の技術を高めることによって核兵器をつくる力を養っておこうというところにありました。
 広島と長崎によって原爆の威力を知った各国首脳は、核兵器が世界を支配する最大の力であると考え、核ミサイルの開発に明け暮れてきました。
 しかし、一方では、核兵器があまりにも非人道的であるだけでなく、人類という「種」そのものを滅ぼしかねない恐ろしいものであるとの認識が広まり、核兵器廃絶は人類の悲願ともなりつつあります。
 被爆国である日本はさすがに表立った行動を控えてきましたが、原発を手放せない理由の一つがこの問題にあることは政府首脳の発言によっても明らかです。

 私たちの判断は子々孫々の生存に直接かかわる重大なものです。
 日本の原発政策がこのままでよいかどうか、目前の損得を離れ、事実をふまえた公の議論が高まるよう願ってやみません。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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