コラム

 公開日: 2015-05-12 

「むかしの仲間」と「陶の器」 ―葉桜の頃に想う─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





 大正から昭和にかけて活躍した医学者、詩人、劇作家木下杢太郎(モクタロウ)の『むかしの仲間 (ふるき仲間)』は山田耕筰の作曲によって広く知られている。

「ふるき仲間も遠く去れば、また日頃顔合せねば、知らぬ昔とかはりなきはかなさよ。
 春になれば草の雨。
 三月、桜。
 四月、すかんぽの花のくれなゐ。
 また五月にはかきつばた。
 花とりどり、人ちりぢりの眺め。
 窓の外の入日雲。」

 大学を卒業して学問の生活へ入った杢太郎は、「専門の学問と日々の業務」で過ごすようになってほどなく、絵や文学や酒を楽しんできた仲間たちがそれぞれの任地へと去り、会者定離(エシャジョウリ)の悲哀に促され、綴った。
 密かにこの歌を献じた友人とはその後二度、遭遇しただけであり、「一生のうちにもう一度会えるかどうか疑わしい」と書いた2ヶ月後、60才でこの世を去った。
 20代の若さで儚さを痛感した杢太郎は30代になると、ここまで行く。

「その昔の夢が、よしや譬(タト)ひ秋の日の
 大(オオ)な樟(クスノキ)の梢のやうに實(マコト)になつたからと云つて、
 それが何になる。
 それが爲めに今の此(コノ)おれが
 どれだけ幸福になつてゐる。
 どれだけ價値(ネウチ)を増してゐる。
 大都東京の街(マチナカ)で人が後を見返って、
 あれこそあの人だとささやき合つたからと云つて、それが何になる。
 人の金を借りて大きな地面を買ひ、
 それをまた人に賣る仲買人の榮耀(エイヨウ)は、
 それは取りたい人に取らせておけ、生から死までただ自分の本当の楽しみの為に本を読め
 ただ自分の本當(ホントウ)の樂しみの爲に本を讀め、
 生きろ、恨むな、悲しむな。
 空(クウ)の上に空(クウ)を建てるな。
 思ひ煩(ワズラ)ふな。
 かの昔の青い陶(トウ)の器(ウツワ)の
 地の底に埋れながら青い色で居る――
 樂しめ、その陶(トウ)の器(ウツワ)の
 青い『無名』、青い『沈默』。」

 何かで成功して財物を貯め、有名になったとて、人間の〈値打ち〉とは無関係である。
 浮き世の栄華や立身出世などに何の価値もない。
 そんなものに煩わされず、地中に埋もれた青磁が何百年経とうと、人知れぬまま、じっと青さに深みや味わいを加えてゆくさまを観よと言う。
 私たちが珍重する古代の青磁は、虐げられた無名の人々が黙々と作業した結果、その人生と汗と精進の結晶として残っている。
 私たちは、何か青磁のような〈本もの〉や〈値打ちあるもの〉を紡ぎ出しつつ生きているだろうか?
 約150年前、こう書いた人がいる。
「事物世界の価値増大にぴったり比例して、人間世界の価値低下が酷くなる」
 
 さて、還暦を過ぎると、仲間たちは加速度的に遠くなる。
 まるで「知らぬ昔とかはりなきはかなさ」で遠くなる。
 もう、死んでいて、さらに遠くなってしまっているかも知れない。
 ――お互い、何か〈青磁〉をつくっているか、あるいは何か〈青磁〉を眺めているか……。
 こうした姿勢と眼だけは失わずに老い、死んでゆきたいと願う。

 木下杢太郎が「むかしの仲間」を書いた「葉桜の頃」になると、こんなことを想う。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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