コラム

 公開日: 2015-06-07 

天災と思いやりと ―東日本大震災被災の記 第167回―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 東日本大震災から1500日が過ぎてなお、ご遺骨を手放せない方々がおられる。
 人生相談に来られたAさんは呟く。

「主人は海が生きがい、というより、海そのもののような人でした。
 しかし、私は今でも自分から海を眺める気にはなれません。
 こうしてウグイスの声を聴くと、ずうっとここにいたいと思ってしまいます。
 毎日、夫のお骨に語りかけます。
 あなたはどこで眠りたいの?
 私はまだ、夢遊病者のようです」

 一緒に考えた。

「そもそも、東日本大震災とは何だったのでしょうね」

 あれは天災だった。
 世界中のあらゆるものは、因果応報の原理によって、生まれ、留まり、崩れ、消えて行く。
 人もネコも、家も山も。
 世界は単純でなく、二つの要素が絡み合っている。
 一つは、それ自身の力が動き、変化してやまない「自然」というモノの世界。
 もう一つは、無限の過去から無限の未来までつながる業(ゴウ)という影響力の糸を紡いでやまない「生」の世界。
 天災は、あらゆる業を無化しようとするかのように襲い来る凄まじい自然の牙である。
 噛まれたならばそれまで――、無常である。
 5月30日、異常震域というタイプの地震が発生し、日本全国が揺れた。
 北海道から九州まで、免れられる場所はなかった。
 6月5日、マレーシアのボルネオ島でマグニチュード6.0の地震が起き、日本人を含む17人の安否がわからない。
 マレーシアは、タイ、シンガポールと並んで地震の起きない国とされてきたが、地球の〈皺〉はすべて地殻変動の結果なので、そもそも地震とまったく関係のない場所はどこにもない。
 私たちはこうして時折、自然から峻厳な事実を突きつけられる。

 さて、業の話である。
 免れ得ない自然現象が発生した時、私たちはそこでいかに行動し、そしてその後、いかに行動したか。
 ここでは生が主人公であり、業が動く。
 あるいは逃げ切り、あるいは逃げ切れなかった。
 結果は生と死とに分かれたが、人間がつくる業は複雑だ。
 いずれにしてもはっきりしているのは、私たちが〈助け合った〉ということである。
 宗教も信条も人種も超えた思いやりが主人公となり、私たちは支え合ってここまで来ている。

 平成23年6月、被災証明書があれば高速道路を無料で通行できることになった措置に伴い、種々の問題が発生したおり、岩手県住田町長多田欽一氏は、「被災証明書はやみくもに出さない」という方針を表明した。
「国が東北地方の高速道路無料化を制度化したのは、大きな被害を受けた人の復興支援という趣旨のはずです。
 津波ですべてを流された人と、半日停電しただけで物的被害もない人が、同じレベルで復興支援の恩恵を受けるのは、本当に正しいかと考えました」
 最初は不満もあったが、方針を丁寧に説明することによって理解が広まり、町民の多くは無料通行を遠慮した。

 平成24年12月、静岡県島田市の桜井勝郎町長は、岩手県山田町の瓦礫を試験焼却することにした。
 静岡県知事川勝平太氏の「ゴミ処理能力の1パーセントで震災瓦礫の受け入れをしよう」という呼びかけに応じたのだ。
「被災者の苦境を思えば、援助できる者が援助するのは当たり前。
 自治体のトップは余裕があるなら腹をくくって、がれきを受け入れるべきだ。
 最終処分場がないというのはいい訳。
 必要なのは気持だ。
 この際、首長の独断でがれきの処理をやるべきだ」
 風評被害の怖れなどから、当初は賛成するメールは2パーセントほどだったが、やがて、賛成が多くなり、事業は動き出した。

 私たちは自然の力によって〈無常〉の現実を突きつけられた。
 しかし、危機に瀕した私たちは隠れていた霊性を発揮し、すばらしい善業(ゼンゴウ)を積みつつここまで来た。
 最近では、その二つとも、忘れかけてはいないだろうか?
 無常を忘れ、過剰な欲に走ってはいないか?
 霊性を忘れ、自己中心、地域エゴに走ってはいないか?
 大切なことを忘れず精進し、生者の側に残った者としての役割を果たしたい。

 Aさんは、被災した仲間と一緒に小さな活動をしておられる。
「そうですよね。
 相手は自然だから、どうしようもなかったんですよね……。
 寒い中を焚き火や炊き出しで過ごしたのは、思いやりがあったからなんですよね……。」
 ご主人のお骨の行方についても整理がついてきたような気がしますと言い、笑顔で帰られた。
 あれは何だったのか、私たちはどう行動しながらここまで来たのか。
 考え、忘れずに過ごしてゆきたい。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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