コラム

 公開日: 2015-06-09 

稲妻に道きく女はだしかな ―恐怖と悲しみと―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈当山で安産・子育て・不戦を祈る摩耶夫人様〉

 雨の降る暗い朝となった。
 一句を思い出した。

「稲妻に道きく女はだしかな 泉鏡花」

 稲妻は暗い空間を一気に切り裂き、天地が崩れるような轟音を伴う。
 何をしている人も一瞬、手を止める。
 どこへも逃げようがないのに、子供の頃は蚊帳へ逃げ込んだりした。
 現代の子供はどうするのだろう?

 子供の頃の小生は稲妻を観て、天地がつながるという感じを持ち、不思議だった。
 学校で雲と地表とが電気のやりとりをすると習い、とても納得できた。
 居合を始めてからは、妙なことを考えるようになった。
 雲から発生した稲妻の糸が、地表から迎える稲妻につながって強烈に光るさまは、刀を納める際に、鞘を少し引き出して鍔(ツバ)を受ける作法に似ていると思う。
 いわば〈迎える〉動きがあってスムーズにつながるのだ。

 さて、俳句である。
 稲妻の光る中で、道を訊く女がすでに異様である。
 普通は家や車の中などに避難しており、傘をさして外を歩くのはよほどの事情がある人だ。
 忙しい現代ならば約束の時間があり、何があっても急ぎ足で歩くかも知れないが、泉鏡花の時代は明治から大正である。
 雷雨の中を歩く女性はとてつもない危機、激しい狂気、あるいは異界の気配をまとっている。

 仏壇の前に座り「なんまんだぶ、なんまんだぶ」などと唱えていた人にしても、あるいは軒下で小さくなって隠れていた人にしても、こうした女性に道を訊ねられたなら、ビクッとするのではないか?
 雨宿りを申し込むのではなく、雷雨をものともせず、どこかを目ざしているとはあまりにも異常だ。
 エッと聴き耳を立て相手を見たら、はだしだった。
 もしも、息せき切っていれば、男に殺されかけたか、あるいは殺してきたか。
 もしも、ぼうっと現れたならば、亡霊か。
 いずれにしても、日常世界が突然、崩れかけた状況である。

 10才で母親を亡くした泉鏡花は、11才を迎える年に摩耶夫人(マヤブニン…お釈迦様を産んでまもなく亡くなった生母)像を観て激しい衝撃を受け、生涯、信仰し続けた。
 彼が描いた女性像は、この世ならぬ聖性や、禍々(マガマガ)しいほどの美しさや、神聖に近い狂気などを帯びている。
 幼くして母親を失った喪失感と、母なるものとしてたち顕れた摩耶夫人の神聖とが、彼独特の女性観をつくったのだろう。

 この一句は、雷鳴という破壊と喪失の予兆の中で、再来し得ない母を限りない悲しみと共に感じとったのではなかろうか。
 恐ろしくはあるが、彼の身になってみると、去る母と去られた子の悲しみも緊迫感を伴い、迫ってくる。
 芸術の力は凄まじい。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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