コラム

 公開日: 2015-06-16 

悪事に慣れてはいないだろうか ―ネット時代の悪、罪と罰―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 6月14日、27才の警察官が酒気帯び運転で事故を起こし、逮捕された。
 6月14日、47才の医師が、収賄の疑いで逮捕された。
 6月10日、24才の中学校教諭が痴漢の疑いで逮捕された。
 6月5日、29才の僧侶が昨年12月に女性を殺した疑いで逮捕された。
 6月5日、62才の弁護士が預かり金2500万円を着服した疑いで逮捕された。
 もはや私たちは、こうした報道、つまり誰でもどこでも行う悪事にほとんど〈慣れっこ〉になっているのではないか?

 日本年金機構が標的となった125万件もの個人情報流出事件に関して語られているのは、情報管理の甘さを指摘し対策を強化する必要性と、金子を騙し取られるなどの二次被害防止に尽きている。
 しかし、膨大な人びとの個人情報を盗んだ悪事そのものと、盗まれた管理者がどう責任をとるべきかという二点がほとんど問題にされていないのはどういうことか?
 そもそも、ネットを利用した各種の犯罪はもはや、単純な個人攻撃や小規模な詐欺などは別として、大規模になればなるほど、まるで起こって当然な〈事故〉であるかのごとき扱いしか受けず、犯罪者が行った〈悪〉そのものが私たちに強く認識されなくなりつつある。
 サイバー攻撃は無体な破壊行為であり明白な悪事なのに、国家すらも行うという事態、あるいは、攻撃法と防御法が公に論じられ競われもする時代にあっては、悪そのものが意識されにくい。
 本来、人間が行ってはならぬものであり、社会にあってはならぬものなのに、悪があまりに巨大なので、個人としてその正体を把握したり悪しき度合いを感得できにくい。

 罪と罰の関係がどうなっているのか、専門家でないのでよくわからないが、一人を殺してもなかなか死刑にならず、三人殺せば死刑になるなどの話を聞く。
 もしも殺人の悪が度合いとして1ならば、3つで〈悪度〉は3となり、死刑に値することになるのか?
 それならば、個人情報を盗む悪の度合いを仮に0・01とした場合、日本年金機構から情報を掠めとった〈悪度〉は12500となり、優に死刑となり得るのではないか?
 万分の1としても125、100万分の1としても無期懲役程度の重罰となろう。
 しかし、現実には、被害者個々人に悪事全体の影響力が感じられていないため、罪の大きさはなかなか認識されにくい。
 また、犯人が逮捕されても、現在の刑法によれば、他の悪事がからまなければきっと重罰は科せられないだろう。

 ネットの匿名性は、〈とりあえず〉隠れたままで、好き放題に他者を誹謗・中傷・攻撃することを容易にし、騙し、奪うことも容易にした。
 ばれないままで、好き放題ができるという安易性が礼儀や思いやりを容易に忘れさせ、他者が傷つくことへの想像力も実感も奪った。
 恥ずかしい、ばれるのが怖い、嘘を言えない、奪えない、こうした良心や良識や常識のリミッターが麻痺したまま、悪事が垂れ流し状態になっている。

 悪のわかりにくさは、戦争にも顕れている。
 かつてイラク戦争のおり、私たちは茶の間で「ピンポイント爆撃」の映像をごく普通に観ていた。
 食堂のテレビでも、あるいはデーとしながらも……。
 いったいどれほどの人が、爆撃される建物や車列の現場で人体が引き裂かれ、殺され、傷を負っているか、その現実を想像し得たろう。
 また、あたかもゲームのように引き金を引く兵士のどれだけが、自分の手で人殺しを行っているという実感を持っていたろうか。
 今や兵器の開発は急速に進み、無人のヘリコプターや戦車はもちろんロボット兵士まで登場しており、相手を殺すという実感から限りなく遠ざかりつつ大量の殺人を行うことが可能になっている。
 しかし、どのような過程をたどろうが、戦争を行えば必ず人間の柔らかな皮膚が破られ、硬い骨が砕かれ、手足や首がもぎ取られ、たくさんの死者が出る。
 5月27日、国会で在職中に自殺した自衛隊員の数が報告された。
 イラクに派遣された隊員は29人、インド洋での給油活動では25人である。
 そもそも自衛隊員の自殺率は平均の約1・5倍であり、派遣者に至っては10倍近くなる。
 しかも、勤務できなくなり退職してから自殺した元自衛隊員の実態がどうなのかは明らかにされていない。
 以上は非戦闘地域でのデータであり、実際に撃ち合いをすれば隊員の心はどうなるか、とても想像しきれるものではない。
 戦争は、いかにスマートさを装っても、必ず人間の心身を壊し、滅ぼす。
 殺し、殺される戦争は人間が行い得る最悪の行為である。
 私たちがこの事実を想像、実感できにくくなっていることは本当に恐ろしい。

 ブラックバイト、ブラック企業、派遣労働の問題もしかりである。
 ネットで集められた学生やはたらく人びとも経営者や幹部と同じく血の通った人間同士であり、共に向上しつつ安定した人生を歩んで行こうという社会の倫理的基盤がなくなっている。
 労働者は、企業が利益を生むための道具として、便利に安く使われる対象でしかない。
 人間性を無視するという根源的な悪が誰にも意識されていない。
 不幸にも、はたらかされている当事者もまた、必ずしも悪の倫理的・法的実体に気づかないまま、今を生きるために相手の悪行に荷担させられ、共に社会のシステムを構築しつつある。
 社会全体がこうも無慈悲で、はたらく多くの人びとがさしたる声も上げない時代はいつ、あったろうか?
 蔓延し空気ともなりつつある悪を見過ごせば、この国は成り立たなくなるのではないか。

 悪を悪と感じ、認識し、避け、糾弾し、防ぐ感性も意識も薄れさせられかけている私たちの心、私たちの文明を直視したい。
 自分の目をこすり、瞬きし、しっかり観たい。
 悪がもたらす罪と罰をよく考えたい。
 私たちが悪に慣れつつあるのは、知らぬ間に人間と社会への信頼を失いつつあることに他ならない。
 このまま鈍磨し続ける先には何が待っているのか、よくよく想像してみたい。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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