コラム

 公開日: 2015-06-17 

『死者のざわめき』に想う(その1) ―耐えかねる重み―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 国際日本文化研究センター教授磯前順一氏は、東日本大震災発生から約4年間、被災地に通い、『死者のざわめき』を綴った。

 氏は仙台市若林区荒浜地区の観音像を訪れる。

「言葉にならない思いの重みに耐えかねたとき、人は神仏に救いを求めることになる。」

 言葉は思考を整理してくれる。
 しかし、整理できない「思い」を抱え続けていると、通常、用いている日常的思考の〈外側〉にまで、思いは滲み出ようとする。
 すがり、救いを求める。
 こうして宗教的感覚がはたらき出す。
 その最大のきっかけとなるのは死である。
 誰かの死であろうが、自分の死であろうが、本当に死を前にした時、日常的思考は役に立たなくなる。
 死は日常生活の〈外側〉にある、あるいは、〈外側〉にまたがっているからである。

 そもそも、生きようがなくなって救いを求め、この道に入り、「思いの重みに耐えかねた」方々と膝を交える日々を過ごしている者の実感としては、ご葬儀から宗教色が薄れつつある現実を眺め、死が「耐えかねたとき」を迎えさせないことをいささか不気味に感じる。
 死がたやすく日常生活に呑み込まれるならば、生もまた、日常生活を超えた次元へチャレンジするダイナミズムを失うのではなかろうかと危惧する。
 こうした人生の〈平板化〉は何を意味しているのだろうか?

「思い出すことが困難な出来事だけれど、捨ててしまうことはできない。
 しかし、その闇をえぐり出して白日のもとにさらすこともできない。
 だからこそ、人間の代わりに、神仏にその思いや感情を預けて、祀りあげてもらおうと願うのだろう。
 そして荒浜の観音の場合のように、その神仏のもとを人びとが訪れ、自分が担える範囲ですこしづつ、その記憶に触れていくのだ。」

 思い出したくない、しかし、圧倒的にそのことは〈在る〉。
 だから、自分だけでは思い出せないけれど、思い出しつつ昇華してゆかねば、苦しさは消えない。
 だから、負いきれない部分をきっと背負ってくださる観音様と一緒に昇華作用をする。
 こう、書きつつ、涙が滲んでくることを禁じ得ない。
 小生もまた、被災地の観音様やお地蔵様に頽れそうになる膝頭をお支えいただきつつ、祈ってきたからだ。
 いかに托鉢で歩き、生かしていただいた地域であれ、あくまで部外者であり、大した被災者でもない小生ごときですらこうである。
 被災された方々の「思い出すことが困難な出来事だけれど、捨ててしまうことはできない」お心の状態は、察するに余りあるとしか言いようがない。

 ご来山される方々のお察ししきれない思いを前にしつつ、今日も祈る。
 どうか、善男善女が担う荷を少しでも軽くしていただきますよう。 

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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