コラム

 公開日: 2015-06-19 

大調和と生類の話 ―佐伯剛氏と石牟礼道子氏んも対談に想う─

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 佐伯剛氏発行の『風の旅人』第48号に、氏と石牟礼道子氏の対談「生類の命と、大調和の世界」が載っている。
 佐伯剛氏は言う。

「2011年3月11日の大震災の後、日本の灯りは暗くなり、人びとの心は少し慎ましくなった。」

 私たちが生きている環境はあくまでも大自然の掌にあり、人間は脆弱な身体を持つ生きものの一種であることを再認識させられたからこそ、「慎ましく」なった。
 そして、日本の空気が変わった。

「しみじみと自分の人生と向き合う空気になっていた。」

 テレビに映し出される光景はあまりに圧倒的だったので、誰しもが〝ここは大丈夫〟と〈対岸の火事〉を決め込んでノウノウとしてはいられなかった。
 山に住めば崖崩れ、里に住めば洪水、街に住めばビルなどの倒壊、そして、狭い日本のどこにいようとも免れ得ない被曝が想像され、恐怖と不安を味わった。
 より大きな熊手を作ってモノ金を集め、世間でのし上がる意志などが哀れなほど小さなものでしかなく、今さらながらに、〈生きている自分〉の儚い確かさを愛おしんだ。

 被災地を訪れて茫漠たる泥地に立った小生は、人間の気配が消えただけでなく、あらゆる生きものの気配が消えた圧倒的静寂に立ちすくんだ。
 寄せては返す潮騒が耳に届いてはいるのだが、それはもはや、この世の音ではなかった。
 天地に満ちる陽光もまた、この世の光ではなかった。
 いのちの絶えた世界は、〈この世〉ではない。

 長くパーキンソン病を患い、90才を超えた石牟礼道子は「人間世界の現状を深く憂いつつ」、佐伯剛氏と語り合い、「生類(ショウルイ)」に言及した。
 佐伯剛氏。

「白川静さんか、風の旅人の連載の最後に書いてくださいました。
(風の旅人 第15号を見せながら)この部分です。
 天の命ずるところは、人にとってまったく所与的なものであり、絶対的なものである。
 そのことを無視して、恣意的な生活が可能であるとするのは、現代の人々の妄想に過ぎない。
 自然の秩序はあらゆる生物の世界に及んでおり、そこに大調和の世界がある。
 人間の思考は精彩を極めているが、それはこの大調和の世界から決して逸脱しうるものではない、という内容です。
 生類の都というのは、そういう大調和のなかで、人間がより良い世界への憧れを抱き、想像力豊かに、色々な物語を作り出しながら生きていくところなのでしょうね。」

 石牟礼道子氏。

「私は、人類という言葉は使いたくありません。
 人間も含めて全て生類で、私は生類たちには魂があると思っています。
 東京あたりの市民活動家の方と会うと、『石牟礼さんは、〝魂〟とよくおっしゃるけれど、眼に見えないものを信じるのか』って言われたことがありまして、びっくりしましてね。
 魂があるから、ご先祖を感じることができるでしょ。
 みんなご先祖を持っているわけですね。
 それは人間だけでなくて、草や木にも魂があって、いつでも先祖帰りをすることができる。
 それは、美に憧れるのと同じだと思います。
 美しいもの、より良いものに憧れる……、そう私は思っていまして。
 眼に見えないものをなぜ信じるのかと問われた時、答えにつまりまして、急には答えられなかったけれど、これは私に与えられたテーマだと思って、ずっと考えています。」

 大調和はそのまま大日如来の法界、マンダラの世界であり、生類はそのまま輪廻転生(リンネテンショウ)の世界ではなかろうか。
 お二人が言う「より良い」ものを求め、私たちは自然に真善美を目ざす。
 哲学も科学も宗教も芸術も、求めずにはいられない魂のはたらきから創造される。
 それらはすべて、生類のごくごく一部である人間の愛おしくも切ない生きざまが生む精華ではないか。
 ネコもアヤメも、生類は皆、それぞれに精華を示している。
 私たちも本ものの精華を求め、創りつつ生きたいものである。

 今日の守本尊虚空蔵菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IY7mdsDVBk8


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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