コラム

 公開日: 2015-06-21 

本の価値は?

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。






 最近、思うところがあり、何日もかけて蔵書の一部処分をはかった。
 ある巨大組織Aが送料無料で何でも買い取るサービスを始めたことにも背中を押された。
 ところが、買い取り価格の資料を確認して送ったところ、古びているなど現物評価が低いとされ、雀の涙ほどの価値しか認められず、大量に送り返されるという惨憺たる結果になった。
 しからばと老舗のB,Cへも書き込みなどの少ない本たちを送ってみた。
 まことに丁寧なる対応ではあったが、やはり、ほとんど〈無価値〉であることを悟らされた。

 こうして、本は、関心を持った人にとってしか価値がないというあたりまえの事実を再認識させられた。
 それは、関心のあるものしか買わない、関心を持たれるものしか売れないという流通上の事実とはちょっと異なる事情を意味する。
 たとえば目の前に200冊の本があるとする。
 これらの本が〈在る〉とはいかなることを意味するか?
 それは、表紙が目に入るという事実だけで無意識の回路がはたらくきっかけを確保し、頭のニューロンがピピッと反応して手に取れば、一気に膨大なニューロンたちの饗宴が始まってくれるという〈心の蔵〉の存在、あるいは、〈心の蔵〉へ入る扉の確保といったところだろうか。
 だから、お大師様や南方熊楠などを目標にするならいざ知らず、凡人にとっては全文を読み、全部を覚えている必要はないし、無論、そうはできもしない。

 たとえば、桜井哲夫著『廃墟の残響 戦後漫画の現像』が目に入れば、片腕を失いながら生き延びた水木しげる氏の見た戦場の現実が想起され、『ダライ・ラマ 生き方の探求』が目に入れば、祖国が消滅させられそうになってなお、敵国や敵国の指導者を憎まず、あくまでも慈悲心と智慧をもって解決しようとする聖者の日々に憧れる。
 そして手に取れば、若き日の石森章太郎が空腹のあまり倒れた話に涙し、人情家寺田ヒロオが商業主義についてゆけず、「ゆるやかに存在を消していき、六十一際で亡くなった」様子に合掌する。
 あるいは、ダライ・ラマ法王の呼びかけに背筋が伸びる。
「怠惰な態度はなくす必要があり、真摯な努力をなすべきです。
『善き心』をもち『悪しき心』は捨てる、この二つはとても大切です。
『善き心』をもってください。」
 こうして、この二冊は、関心を持つ小生にとってのみ価値を持つ。
 本は読者の人生と共にあり、共にしかない。
 こう書いているうちに、処分をやめる決心がついた。
 職員さんなどの邪魔にならないところへ移し、小生の頭がまともにはたらくうちは、背表紙を観ることにしよう。
 後のことは、後のこと……。

 皆さんご存じのとおり、ネットで検索し必要な情報として文章を読む作業と、本の背表紙が視界に入る空間で時間を過ごすことは、まったく別ものです。
 本を大切にしましょう。

 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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