コラム

 公開日: 2015-06-28 

詩と歌の自動演奏 ―「秋の日のヴァイオリン」と「夕焼け小焼け」について―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈雨の中、『法楽農園』の草取りは続いています〉



 言葉、詩、歌は不思議だ。
 魂から発せられたそれらは、発した当人の想像を絶する世界へと広がる。
 たとえば、落伍者を自認した小生はしばらく夢遊病者のようになり、ポール・ヴェルレーヌの『落葉(秋の歌)』から離れられなかった。
 満開の桜が人々の目線を上げさせる時も、カンカン照りの東京でバイクにまたがり酒の配達をしている最中も、学友と井上孚麿(タカマロ)教授の『憲法研究』について議論していても、あるいは高倉健扮する花田秀次郎に成り切って地下の映画館から朝の薄明かりへ出た時も、不意に、それはやってきた。
「秋の日の ヰ゛オロン(ヴァイオリン)の ためいきの ひたぶるに 身にしみて うら悲し。」
 さまざまな翻訳を読んでみたが、上田敏をしのぐものはないように思える。

「秋の日の
 ヰ゛オロンの
 ためいきの
 ひたぶるに
 身にしみて
 うら悲し。

 鐘のおとに
 胸ふたぎ
 色かへて
 涙ぐむ
 過ぎし日の
 おもひでや。

 げにわれは
 うらぶれて
 ここかしこ
 さだめなく
 とび散らふ
 落葉かな。」

 ただし、誰ともこの詩について語り合ったことはない。
 酒を酌み交わしてすら……。

 一方、夜になるとひんぱんに口をついて出る歌詞はひところ、周囲の人々と共有した。
 鶴田浩二の『赤と黒のブルース』である。
「夢をなくした奈落の底で、何をあえぐか影法師♪」
 奈落から離れた今、切なさはほとんど消え、ただ、懐かしさだけを伴って思い出される。

 最近、童謡『夕焼け小焼け』のエピソードを耳にして、調べてみた。
 大正12年(1923年)、教員のかたわら詩作を行っていた中村雨紅(ウコウ)の『夕焼け小焼け』は、草川信作曲で発表された。
 直後の関東大震災によって資料はほとんど消失したが、焼け残った13部の楽譜をもとに、雨紅夫人千代子の妹下田梅子(小学校教諭)が子供たちに唄って聴かせ、歌はたちまちに広まった。

「夕焼け 小焼けで 日が暮れて
 山のお寺の 鐘がなる
 おててつないで みなかえろう
 からすと いっしょに かえりましょ

 子供が かえった あとからは
 まるい大きな お月さま
 小鳥が夢を 見るころは
 空には きらきら 金の星」

 亡くなり、もう、家に帰れない無数の子供たち……。
 しかし、歌の中では手をつなぎ、仲良くみ仏の世界へ、心の故郷へと帰って行く。
 満月に迎えられた子供たちは、星々になり、夜空いっぱいにまたたいている。
 子供も、大人も、誰か彼かを失った当時の人々はいかなる思いでこの歌を唄ったのか?

 できごとはこれで終わらない。
 太平洋戦争が起こり、身体が弱かった中村雨紅の長男、喬(タカシ)は学徒動員に耐え終戦まで頑張ったが、翌昭和21年、23才の若さで他界した。
 その時、中村雨紅はようやく、大震災の後で『夕焼け小焼け』が人口に膾炙(カイシャ)した本当の理由を知ったという。
 自分が創った詩であり、歌でありながら、その世界をつかむために我が子を失わねばならなかったとは……。
 3年後、歌は小学校の教科書に推薦された。

 当山のある田舎町周辺では、いまだに、カラスが帰る夕刻、この曲を耳にする。
 そういえば、娑婆にいたころ、酒場で盛んに気炎を上げていた男たちはこのメロディーが流れると、急に里心がついたように酒と女たちから離れ、家路を急いだものだった。
 
 皆さんは朝起きた時、頭の芯でゆったりと何か、詩や歌が流れていませんか?
 それら人生の伴走者が動く朝は少々、ゆとりがあるのかも知れません。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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