コラム

 公開日: 2015-06-29 

過去に学ぶ難しさ ―「これを教訓として」とは言うものの―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 私たちはよく「これを教訓として」と口にする。
 自分の体験や見聞きしたことをあらためて振り返り、事実を単に事実として終わらせず、そこに意味や意義を見出そうとする。
 そうして初めて、何かを「教」えられ、「訓(サト)」される。
 しかし、ことはそう簡単ではない。
 まず、煩悩(ボンノウ)が全面に出てくるからだ。

 好き、嫌い、無関心、楽しい、苦しい、どうでもよい。
 これが6つの煩悩である。

 たとえば、うっかり誰かの悪口を言った時、相手と通じている人に聴かれてしまい、表面をとり繕って成り立たせていた相手との関係が険悪になったとしよう。
 ここでは大きく分けて4つの選択肢がある。

 1 他人の悪口を言ってしまう自分の生き方を省みる。
 2 言いたい悪口は本音なので、これからも同じようにする。
 3 悪口に結びついた相手への評価をこの際、省みる。
 4 気分が悪いし、相手への悪い評価をますます募らせる。

 そして、具体的な行動としても4つが考えられる。

 A 自分の愚かさを心から詫び、相手との関係を修復し、深化させる。
 B こうなったのは元々、相手のせいだと考え、立ち聞きした人も含めてますます嫌いになる。
 C 相手をこの先も利用したいならば、謝るなどして何とかとり繕う。
 D 謝ってまで利用する必要がなければ、放置してしまうか、ますます悪口を言う。

 こう考えてみると、煩悩の恐ろしさがわかる。
 もしも、「あいつが嫌いだから」となれば、おのづから、2、4、B、Dとなることだろう。
 感情に流されている最中は気づかないだろうが、明らかに〈愚かな選択肢〉である。
 ちょっと落ち着けば、Cも選択肢へ入るかも知れない。

 ことほど左様に、過去を教訓とするには、自分の煩悩に流されないことが絶対の条件となる。

 昔、A君とB君はとても仲の良い間柄だった。
 ところがある時、皆で酒を飲んでいる最中、ふとした拍子にA君がB君へ面と向かって言う。
「俺、お前を嫌いなんだ」
 B君はその場を笑ってやり過ごしたが、その後、二人は二度と顔を合わせなくなった。
 B君は当初、〝あの野郎!〟と怒りが収まらなかった。
 しかし、このできごとをよく考えたらしい。
 そして気づく。
〝仲がよいふりをしていたが、本心では自分がA君を侮っていた。
 A君はそれをわかっていたにもかかわらず、つき合ってくれていたのだろう。
 済まなかった……。〟
 そのうち会って謝ろうとしていたが、A君が突然、死んでしまい、機会を逸した。
 B君は今でも、手を合わせては謝っているという。

 何かを教訓としたならば、ただちに実行したり、生き方を変えたりした方がよい。
 諸行(ショギョウ…現象世界のありとあらゆるもの)は無常である。
 『法句経(ホックキョウ)』の「無常品(ムジョウホン)」は説く。
 
「河の駛(スミヤカ)に流れて、往(ユ)いて返(カエ)らざるが如(ゴト)く、人命(ニンミョウ)も是(カク)の如(ゴト)く、逝(ユ)く者は還(カエ)らず。」

(川の水が絶え間なく流れ行き、二度と戻らないように、人のいのちもまた死へ向かって進みつつあり、死した者は二度と帰ってこない)
 
「是(コノ)日(ヒ)已(スデ)に過(ス)ぐれば、命(イノチ)則ち随って減(ゲン)ず、少水(ショウスイ)の魚(ウオ)の如(ゴト)し、斯(コ)れ何の楽みか有(ア)らん。」

(今日という一日が過ぎ行けば、それだけ寿命がすり減り、それはいつ干上がってもおかしくない小さな水たまりに小魚が住んでいるのと変わりなく、目前のわずかな楽しみなど、何と儚いものであろうか) 

 お釈迦様は、とうの昔に「今、やるしかない」と説かれた。
 本当に過去に学びたいならば、今、やるしかない。
 自分の煩悩を見すえつつ。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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