コラム

 公開日: 2015-07-09 

7月11日に開催する第六十五回寺子屋『法楽館』について

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 法話と座談の寺子屋に関するご質問が相次いでおり、内容を少々、書いておきます。

1 私たちは今、〈東日本大震災後〉を生きている者としてどう生きればよいか?

 ある歴史家は、東日本大震災が持つ意味を10年かけて考えねばならないと言いました。
 人や家や仕事や生活を失った方々にとっては、10年かけようと〈ことは終わらない〉に違いありません。
 
 地震や台風や津波などに襲われる日本は、災害に遭う可能性という点では世界で最も危険な国に分類されます。
 そこで生きてきた私たちは、いつしか、災害はあって当然と受け止めるようになり、人がつくった世界は自然の前ではどうにもならないという死生観を紡いできました。
 京大教授大石久和氏は、『国土が日本人の謎を解く』においてそこを明確に説きました。

「大災害を経ることで、この国では過去は現在や未来につながらない。
 努力の結果であったり、思い出深いものであったりする過去は、流れ去り崩れ去って現在に至らない。
 時間は災害とともに流れ去ってしまうのである。」

「現在のパリの市民は、1851年にはすでに存在していた、あふれるほどの建物の隣で暮らしていることを自覚しているのである。
 パリの街区割や多くの町並みは、この頃に活躍したナポレオン三世によるパリ改造の姿をほとんどそのままとどめているのである。」

「(災害が少ない西欧では)変わらないからこそ、変わらないことを大切にする文化が育ったわけであり、変わりもしないのに変わらないことを嘆く文化が育つはずがない。
 したがって彼らには景観をきわめて大切にするという文化が育ったのである。
 変わらないから変わらないことを大切にする西欧の文化とは逆に、わが国では変わってしまうから変わることを喜ぶ文化が育ったのである。」

「私たちの死は、普段は恵みをもたらしてくれる自然の気まぐれで死んでいったのだから、恨む相手がいないし、復讐のしようがない死である。
 これは、無理やりもたらされた死への怒りをぶつける対象がないという、本当に悲劇的な死の受容である。
 この受け入れるしかないという厳しい死の受け止め方が私たちに、東日本大震災の際でも阪神淡路大震災の際にも、世界中の人々が驚愕するような、冷静な死の受け止め方と見えるような態度をもたらしたのである。」

 そして、氏は、日本人は「災害死史観」を持ち、想像も破壊もすべて人間が世界の主人公であり、モノも歴史も積み重なって行くという生活環境に暮らす西欧の人々は「紛争死史観」を持っていると分類しました。
 確かに私たちには、〈流れゆく〉という生活感覚があり、「水に流す」ことを美徳として自然に納得する感性があります。
 鴨長明の「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」は誰の心にもすんなりと入り、忘れられません。

 その一方で、流される存在でありながら儚く屹立しようとするものへの共感もまた独特の美意識をつくっています。
 新撰組、忠臣蔵、あるいは西郷隆盛、白虎隊などは毎年、必ずメディアに採り上げられます。
 小生は学生の頃に愛唱した三上卓の『青年日本の歌』や、堀内孝雄の『愛しき日々』を忘れられません。

「功名何ぞ夢の跡
 消えざるものはただ誠
 人生意気に感じては
 成否を誰かあげつらう 」

「風の流れの激しさに 告げる想いも揺れ惑う
 かたくなまでのひとすじの道 愚か者だと笑いますか
 もう少し時がゆるやかであったなら」

 こうした私たちにとって、東日本大震災のおりに、いのちをかけて人としてのまことをまっとうされた方々の行動、思い、願いは、今なお、記憶に新鮮です。
 復興もままならぬ中でオリンピックだ、カジノだと勢い立つ世相にあって、せめて東北に住む私たちは、逝った方々や瓦礫を踏みつつ奮闘した方々の耀きを心のどこかに留め置き、消えぬ灯として行く手を照らしたいと願ってやみません。

2 仏教の根本である因果応報(インガオウホウ)と輪廻転生(リンネテンショウ)という考え方を見直そう。
 
 仏教はお釈迦様の説く「因果応報」で哲学的にスタートし、「輪廻転生」で倫理的にスタートしました。
 お釈迦様の説話集などには、この二つに関するエピソードがあふれています。
 しかし、私たちの生き方をふり返ってみると、あまりにもそこから遠ざかっているように思えてなりません。
 仏教は、こだわらず気楽に生きるといった人生訓や、ヨーガ的な心のケアや、訪れて心が癒される観光地といった範囲でようやく生き残ろうとしているやにも見えます。

 ダライ・ラマ法王は、その仏教のいのちとも言うべき根幹について、明確に説かれました。
 因果応報と輪廻転生の原理は死と死後にどうはたらくのか?
 たとえば、心中した二人はあの世で一緒になれるのか?
 たとえば、悪人でも死に際に人を救えば救われるのか?

「たとえば、ある人物が殺人という行為の結果としてのカルマを有している。
 それは、そこに厳然としてある。
 ところが、その人物には人の生命を救ったという行為からくるカルマも同時にあったとする。
 この場合、互いに相矛盾する、相容れない二つのカルマが両立する。
 しかも、ふたつは共にひじょうに強力にして重要なカルマである。」

「さあ、どちらがより重要であると、どのようにして決定できるか。
 どうすれば、どちらのカルマがより支配的なカルマであると認定しえるのか。
 一方はたいへんネガティブであり、他方はひじょうにポジティブである。
 しかも、二つは等しく重いカルマだと言わねばならない。
 人の命にかかわる行為によって生じたカルマなのだから。」

 因果応報と輪廻転生を知った私たちはどう生きればよいのか?
 ダライ・ラマ法王の著書をテキストに、考えてみましょう。

○日時:7月11日(土)午後1時より3時まで
○場所:地下鉄泉中央駅前『イズミティ21』和室(イス席もあります)
○ご志納金:1000円 中学生以下500円(お菓子、飲物付)

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

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