コラム

 公開日: 2015-07-10 

戦後70年の祈りと自省 ―敗戦の受容、真の再出発―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈不戦日本を祈る『不戦堂』〉



〈核心を衝く『永続敗戦論』〉

 Aさんは伯父である太郎さん(仮称)を戦争で亡くした。
 太郎さんは馬の生産にたずさわり、軍馬や農耕馬などを東北六県で供給していた。
 若くして満州事変にかり出され、帰って間もなく東南アジアへ出征した。
 そして通風を患ったにもかかわらず、商売の最中、令状を受けてフィリピンの飛行場建設に参加し、全滅した部隊と命運を共にした。
 また、同じく叔父である次郎さん(仮称)も戦争で亡くした。
 次郎さんは台湾近くで民間の船に乗っていたところ、米軍に沈められ、いのちを落とした。
 それを知った許嫁は深く悲しみ、霊前で結婚式を挙げた。
 お二人の戦死は、いずれも敗戦間近の昭和20年だった。

 戦後70年となるこの夏、Aさんは、お二人の菩提を弔うため、ある霊峰を目ざすという。
 頂上から御霊へ呼びかける言葉があれば教えて欲しいと人生相談を申し込まれた。

 太郎さんの御霊へ祈った。
 飛来した敵機と一対一になった太郎さんは、背中を見せずに正面から軽機銃で戦い、見事に散華された。
 一瞬の死。
 大本営からは全滅と発表されたが相当数、逃亡者もいた中で、歴戦の勇者らしい最期だった。
 Aさんの発すべき言葉は決した。
「私も決して退がりません。
 分を尽くします。
 どうぞ、ご安心ください」

 次郎さんの御霊へ祈った。
 潜水艦から放たれた魚雷。
 あっという間に沈没する船。
 海へ投げ出される人々。
 次郎さんは、もんぺ姿の母娘へ自分がつかまっていた大きな浮遊物を譲り、荒波の立つ海中へ消えた。
 Aさんの発すべき言葉は決した。
「私も必ず誰かのためになります。
 我がものに執着しません。
 どうぞ、ご安心ください」

 滂沱(ボウダ)たる涙が流れた。
 小生は決して霊能者や超能力者などではないただの凡人、一行者である。
 それでも、見ず知らずの御霊は通じて来られた。
 もしかすると、これまで8月15日を決して「終戦」とは言わず、必ず「敗戦」と言い、書いてきたことをお認めくださったのかも知れない。

 いかなる理由付けをしようとも、日本が他国を侵略し、敗れ、若干の交渉があったとは言え、国家を全滅させぬため、戦勝国の言うがままにひれ伏したのが8月15日である。
 いのちを奪い合う戦争で、奪われなかったいのちが集まり、国家・国土を存続させ、昭和27年4月28日、平和条約の発効をもって主権を回復し現在に至った。
 敗戦後の光景とは、戦争の暴風から取り戻された静寂の中で、生き残った者の目に映るこの世でもっとも無惨な景色である。
 それを観た者は、自分が二度と目にすることがないよう、子々孫々が同じ光景を眺める日が来ないよう、光景を忘れず、イメージを失わずに祈り、汗を流す。
 このことを脇へ置いて〈平和〉を口にするのは軽薄であり、欺瞞でもあると思えてならない。

 7月7日、「対米自立・対米対等な真の独立国家」を目ざす『一水会』の創始者であり顧問を務める鈴木邦男氏は、朝日新聞のインタビューにこう答えている。

「自分に誇るべきものがないから、日本に生まれたことだけを誇りにする。
 だから『日本は正義の戦争をした』『日本のおかげで東南アジアの国々が独立した』と平気で言う。
 負け戦を勝ったように言えば、自分は国家と一体となり、強くなった錯覚を持つ」

「しかし、そんな歴史教育で『東南アジアは日本のおかげで独立した』なんて思い上がった子どもになったら大変だ。
 確かにインドネシアでは『日本のおかげで独立した』と言う人もいた。
 でも『ありがたい言葉だけど、あなたたちの力で独立したのです。私たちは迷惑をかけてすみません』と言うのが日本人として当然の謙虚さだろう」

 政治学者白井聡氏は『永続敗戦論』に書いた。

「敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる。
 かかる状況を私は『永続敗戦』と呼ぶ。」

 一口に「戦後70年」と言っても、とらえ方は人それぞれである。
 どこに真実があるか、人としての〈まこと〉があるか。
 我が身を振り返り、周囲を静かに眺めてみたい。

(冒頭の文章は、Aさんのプライバシーにかかわらぬよう細心の注意をはらって書きました)

 今日の守本尊阿弥陀如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=4OCvhacDR7Y


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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