コラム

 公開日: 2015-07-11 

空(クウ)と人間 ―龍樹菩薩(リュウジュボサツ)の教え―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。





〈本堂でご葬儀を行い、ペット墓『一心』へ納骨される方が増えています〉

 私たちはよく、知・情・意(チジョウイ)と言います。
 知性と感情と意志によって生きているのが人間です。
 理屈を並べるだけの人でなく、気持に流されるだけの人でもなく、やりたい放題の人でもなく、知性と感情と意志がまっとうに、バランスよくはたらく人でありたいものです。

 私たちは何を知り、何を知られないか?(知性の問題)
 私たちは何を望み、何を望まないか?(感情の問題)
 私たちは何をなすべきであり、何をなすべきでないか?(意志の問題)

 哲学者カントは、およそ250年も前に、こうして私たちの理性を整理し、道しるべを示しました。
 ものごとを考え、判断し、行動する時、こうして根本から問えば、悔いのない人生を送れることでしょう。
 日本の若者は高校生のころ、カントについて学びます。
 ありがたいことです。

 ところが、カントからおよそ1500年も昔に、お釈迦様の教えに導かれた龍樹菩薩(リュウジュボサツ…ナーガールジュナ)が人間そのものを分析したことはほとんど習いません。
 思想家北尾克三郎氏はその人間論をこうまとめました。

「人間は、生存欲の世界と識別(イメージによる分別とその概念化)がつくり出す意味の世界との二面の世界に住む。」(以下、『密教メッセージ NO20』より)

 私たちは無条件に〈生きたい〉生きものとして生まれており、同時に、見聞きしたり触れたりする周囲の世界をすべて識別し、意味づけをしています。

「生存欲の世界は実在するが、人間がつくり出す識別世界には実体がない。」

 ここから仏教が分かりづらくなり始めますが、大切なところです。
 たとえば、うまいラーメンを食べて満足する自分はまぎれもなく実在している一方で、憎たらしいライバルは、顔を思い出してイライラする自分の観念にしかいません。
 もう死んでいるかも知れないし、悪党だったはずなのに、途方もない人助けをして感謝されているかも知れません。
 私たちが認識している世界は、自分の身体を抓れば痛いのと同じように実在しているわけではありません。

「そのように固定した実体をもたない世界は空(クウ)である。」

 猫のクロは、今、現在、目の前に可愛い姿を現していても、生きるための諸条件が調っているから生きているだけであり、一瞬後に死んでしまっても何ら不思議ではありません。
 そして、実は、自分自身もまた、同じなのです。
 ただし、本当にそうした次元を観るためには、普段の思考を超えた精神の深まりが必要であり、瞑想などが求められます。
 なにしろ、空を説く『般若心経』は、観音様が修行中にようやくつかんだ世界です。
 そこには我欲(ガヨク)などの邪魔者はいないので、空を観れば必ず、深いお慈悲がはたらきます。
 それを『観音経』は「慈眼視衆生(ジゲンジシュジョウ)」すなわち、慈悲の眼で生きとし生けるものをご覧になると説きました。
 空と観る眼があるかどうかは、その眼に慈悲が宿っているかどうかによって推しはかられます。
 自分だけの楽を求める人や、他人へ知らん顔をする人は何を語ろうが、決して空を観てはいません。
 
「その空なる世界に生起する人間の苦悩もまた空である。」

 前記のとおり、本当に空の眼が持てれば、苦悩もまた、空となります。
 観音様は同悲同苦(ドウヒドウク)の菩薩(ボサツ)であり、私たちの悲しみも苦しみも〈同じく〉悲しみ、苦しんでくださいます。
 しかし、それらを空とわかっておられるので、苦悩に負けず、方便(ホウベン)すなわち克服するための方法を私たちへお与えくださいます。
 だから、至心に祈れば、観音様は見捨てられません。

「そのような識別世界が起こす空なる欲望と、実在する生存欲との間に人間がいる。」

 私たちが見聞きして起こす欲望の正体は空ですが、生きたい自分がいることは確かです。
 お釈迦様が説かれた因果の理法を深く考察した龍樹菩薩(リュウジュボサツ…ナーガールジュナ)は、このように空を説き、人間を分析しました。

 今日の守本尊千手観音様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=IvMea3W6ZP0



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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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