コラム

 公開日: 2015-07-20 

冷たい世界から復活した保母さん ―東日本大震災被災の記(第170回)―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 当山の投稿が、7月19日付の河北新報「挽歌の宛先」シリーズに採り上げられた。


「◎冷たいものに浸され沈んだ心 明るさ取り戻す/宮城県大和町・僧侶 遠藤龍地さん(69)

 震災後にお骨を預かり、葬儀を行い、供養を途切れさせることなく続けてきた者として忘れられぬ出来事は山ほどある。
 その中の一つで、被災地で頑張る40代の保母さんから人生相談を申し込まれたことがあった。

 津波でご家族が行方不明となったが、保育所で預かる子どもたちのため、自分の心が崩れてしまわないため、張り詰めた糸のような毎日を送っていた。
 最近、夕刻になると幾人かの子どもに不安な表情が浮かぶという。
 保母さん自身も冷たいものに心を浸されるようになり、その時は抗し難くただ沈んでしまうほかなく、『どうしたらいいのでしょうか』と真剣に尋ねてきた。

 家族が冷たい海にのみ込まれたという意識から離れられない女性には、水に浸されるイメージに乗って何かが届いていたのだろう。
 保育所でぼうっとする子どもたちにはただ、思いのありったけを込めたスキンシップで接すればよい。

 御霊(みたま)と通じ合う宗教的感応の世界は魂がふるえるような出来事に満ちている。
 ご加持を受けた女性は法話に耳を傾け、合掌しながら伝授された真言を一緒に唱え、暗唱できるようになった。
 明るい声でお礼を言い、薄暗い玄関からさんさんたる陽光の世界へと踏み出した女性はまるで船出をする人のようだった。」


 投稿を掲載していただき、二重の意味で感慨深いものがある。

 一つは、未曾有の災厄に際して僧侶はいったい何をしていたのか?という批判が少なからずあったからである。
 宗教者はもっと現場でボランティア的にはたらいて当たり前ではないかという議論も聞こえていた。
 もちろん、批判は甘んじて受けるが、きっと、個々の寺院ではそれなりの苦闘を強いられていたのではなかったと思う。
 たとえば当山に突然、外国から慰問に来た僧侶たちを泊めてはくれないか、あるいは団体の人たちに場所を提供できないかなどなどのご相談があった。
 しかし、当山は本堂を建てたものの住職の住居も風呂もなく、体調の勝れない妻共々、本堂で寝起きしており、協力する余裕はなかった。
 そして、何よりも、人生相談やご祈祷やご供養などで当山へ救いを求める方々に対する日々の対応があり、複数の僧侶がいればいざ知らず、一人しかいない僧侶である住職が海岸へボランティア活動に出かけることは不可能だった。
 予約の合間をぬって、かつて托鉢で歩いた海岸へ向かい、密かに修法を行うしかなかった。

 もう一つは、宗教者たちの〈一致した協力〉を求める声があったからである。
 しかし、宗教宗派を超えた行為としては、互いを認め合ったり、共通した徳や価値を確認するといった姿勢やふるまいなどでは可能だが、プロとしての修法を求められる現場での宗教活動においては不可能である。
 当然ながら、小生が一旦合掌するならば、それはそのままお大師様の説かれた即身成仏(ソクシンジョウブツ)につながる身口意(シンクイ)の動きへ入ることであり、他の宗教宗派の作法と共通することはあり得ない。
 そして、修法にすべてをかけている身としては、形式的に〈宗教宗派を離れた方法〉で過ごすプロならざる時間を持つ余裕はなく、プロがプロである方法を離れた形で真に役立つ場面も必要性も考えられない。
 もしも熟練した大工が、自分の会得したコツと異なるやり方でカンナをかけてくれと頼まれたなら、きちんと削ることができないと断ることだろう。
 
 人それぞれの事情や精進がある。
 プロは会得したもので役立ってこそ、プロである。
 あの保母さんの後ろ姿に再び合掌する思いである。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

この記事を書いたプロ

大師山 法楽寺 [ホームページ]

遠藤龍地

宮城県黒川郡大和町宮床字兎野1-11-1 [地図]
TEL:022-346-2106

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