コラム

 公開日: 2015-07-27 

ある老人クラブでの法話 ―日本語の経典、戒名料、進化論―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 ある老人クラブの会合で、拙い法話を行いました。
 猛暑の中、おおぜいの方々が地域の集会所へ足をたこばれ、一時間はあっと言う間に過ぎました。

○三力のこと

 仏教の宗派に共通の教えとして生き方の指針となるものがたくさんあります。
 その一つが三力(サンリキ)です。

1 努力による功徳の力
2 み仏のご加護の力
3 周囲の縁の力

 まず第一に、自分自身の努力なくしては何ごとも始まりません。
 しかし、自力の過信は高慢心を生じ、思わぬ墓穴を掘りかねません。
 第二に、霊性を存在の核としている私たちは、心を澄ませば仏神も御霊もお見守りくださっていることを感じ、支えていただけます。
 しかし、依頼心が強すぎたり、特定の仏神や経典などへのめり込み排他的になったりすれば、人生の視野を狭め、道理という大切な尺度を失いかねません。
 第三に、誰一人として、あるいは虫一匹も、生きられる環境なくしては存在し得ず、陽光も水も空気も、稲や野菜や魚も、水道も電気も電波も、家族やお隣さんや警察や会社の人々も、私たちの生をつないでくださっています。
 しかし、そうした〈おかげ〉を当たり前としか考えず、感謝を忘れ、自分も誰かの役に立とうという報恩の姿勢を失えば、いつしか〈おかげ〉を自分からどんどん遠ざけてしまい、いざという時や死を迎える時、情けない状態になりかねません。
 自分と三力の関係をときおり、考えてみたいものです。

○五種供養のこと

 いつものように、お線香やお花と、それらを捧げる意義とを線で結んでいただくクイズに挑戦していただきました。
 多くの方々にとって身近な供養なのに、いざ、〈何のために?〉となってみれば、意外に難しいようでした。
 お線香を点しての精進やお水を捧げての布施などは、大乗仏教の根っことなる供養であり修行です。
 それなのに、いかに形骸化しているか、いかに語られていないかをまざまざと感じさせられ、行者としての責任を痛感しました。
 念のため、再々掲しておきます。
 どうぞ、左右を結んでみてください。

 線香 ・   ・禅定(ゼンジョウ…心身が深く安定した状態)
 水   ・   ・智慧(我欲を離れた知恵)
 花   ・   ・精進(やりぬく姿勢)
 灯明 ・   ・忍辱(ニンニク…耐えて怒らず乱れない心)
 飯食 ・   ・布施(フセ…見返りを求めない施し)

○輪廻転生(リンネテンショウ)のこと

 最近、力を入れてお話ししている生きものたちの生まれ変わりについて、体験談をふまえた話題提供を行いました。
 自分のいのち、ネコのいのち、ブッポウソウのいのち、アジサイのいのち、こうした〈いのちそのもの〉と〈いのちに添う心〉を感得できないと、本当にいのちを大切にすることはなかなか難しいかも知れません。
 肉体にこだわり、肉体が消えれば無になると考えるのも、魂にこだわり、時空を超えた実体が生まれ変わると考えるのも、無理と弊害があります。
 お釈迦様が説かれた「中道」のは、こうしたいずれの極論にも依らず、いのちと心の真実を観よという意味です。

 さて、最後にお受けしたご質問は、いずれも仏教の核心に迫る鋭いものでした。
 
○キリスト教の聖書などのように、仏教経典もわかりやすい日本語にならないか?
 
 当山の状況についてお話ししました。
 まず、ご本尊様へ捧げる修法における経典は法統の要であり、伝授されたとおりに読誦してこそ非日常的な聖なる世界が開けること。
 特にご加持(カジ)の際、欠かせない真言などは、受者が〈聞いて考えるのではなく、聴いて感じる〉といった時間を過ごす中で大きなはたらきをすること。
 次に、ご参列の方々に聴いていただく、あるいは一緒に読誦する経典としては、積極的に読み下し文を採用し、お喜びいただいていること。
 特に水子供養やペット供養にご来山される方々から感謝されていること。

○高額な戒名料のリストを提示するなど、本来の意義から遊離したやり方は何とかならないか?

 当山とはまったくかけ離れた世界のお話ですが、こうした現況については、同じく仏教寺院を預かる者として深くお詫び申しあげました。
 その上で、「戒名料や離檀料に関する人生相談は絶えませんが、寺院が時代の変化に早く目ざめ、適切な対応を行うよう、菩提寺へ疑問点の解消を求めるなど、皆さんの積極的なご発言をお願いしています」と申しあげました。

○進化論や生命の起源をたどる科学的成果と、仏教思想との矛盾をどう考えればよいか?

 さまざまな宗教宗派を訪ね歩いた方からのご質問でした。
 おおよそ、こうお答えしました。
「仏教は科学と対立せず、科学的成果を否定もしません。
 それぞれ受け持つ分野が異なっており、一部は重なってもいます。
 科学は目に見える形で現象世界を分析し理解します。
 一方、仏教は現象世界が〈見えているようにはない〉次元を観て、現象世界を縁として生ずる苦に対応しようとします。
 たとえば、生命の誕生について科学が現在どこまで探求しているかという事実はもちろん、尊びますが、歴史が示すように、それはあくまでも現在のレベルにおける分析と判断の結果であり、行者が阿字(アジ)を前に瞑想する時は、人知を超えた無限としか言いようのない過去から今につながるいのちと心の世界をそのままに感得しています。
 小生は、科学者や医者といった方々との対話を欠かさず、深く尊敬しています。
 気づくのは多くの方々が一種の〈限界〉を感じつつ、誠実に限界へ挑戦しておられことです。
 また、科学的視点から仏教を観て、修法を振り返ることは忘れないようにしています。
 科学と正統な仏教は決して対立しません。
 だからこそ、ダライ・ラマ法王は、〈公開の場で〉科学者との対話を続けておられます。」

 上記のメモには、当日、お話しできなかったあたりまで書きました。
 講話が終わってからもご質問が相次ぎ、たくさん教えていただいた有意義な時間でした。
 
 今日の守本尊普賢菩薩様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=rWEjdVZChl0


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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