コラム

 公開日: 2015-07-30 

宗教の毒を直視する ―ダライ・ラマ法王の警告(3)―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




 ダライ・ラマ法王は、著書『ダライ・ラマ法王、フクシマで語る』においてモラルの重要性と宗教の毒を説く。

「モラルを守る、すなわち正しい倫理観に基づいた生き方をするということは、計り知れない大きな力を私たち人類にもたらしてくれます。」

「愛と慈悲の心を高めていくことによって、私たちは自分の健康をもきちんと維持していくことができますし、一個人の心の平和、家庭のなかの平和、社会の平和、そしてひいては世界平和へと、少しづつ段階を踏んで、それを高めていくことができるわけなのです。」

 私たちは中学生か高校生の頃、儒教の基本的な教えとして「修身斉家治国平天下(シュウシンセイカチコクヘイテンカ)」を学んでいる。
 自分自身の生き方をきちんとすれば、家庭も波立たず、やがては社会の平安という大きな目標を達成することも可能になるという順番を教えている。
 人間一人一人がしっかりしないかぎり、人倫が守られるまっとうな社会にはならない。
 殺し、奪い、騙すモラルの薄い社会を恐ろしいと感じる情操が乾ききったならば、この世に救いはなくなる。
 霊性の警告がもたらす身震いにすなおでありたい。
 他者の愚かしい行為を見聞きした時、相手を軽蔑し社会を憤るだけでなく、〈自分自身にある黒い可能性〉を見逃さぬようにしたい。

「ここで私は来世の話をしているわけでも、神様の話をしているわけでも、仏陀について、天国について述べているわけでもありません。
 単に自分ひとりの、個人の心の平和を高めるために、そして家庭や社会や宗教における平和の心を高めるというその目的のために、私は申し上げているわけです。
 そのために教育が非常に大きな鍵となると思っています。」

 来世や仏陀について思考し、瞑想を続けている聖者が、そうした宗教的レベルを横へ置き、一人間として、お互い、実生活上を共によくする考え方を探求しようと呼びかけておられる。

「『宗教を通してではなく、一般的な世俗のレベルで倫理観を促進させていく、高めていく努力をすべきである。そのようなアプローチをすることで、私たちの心のなかに人としての正しい生き方を探る態度を高めていこう』
 こういう考えを私はもっていて、たくさんの方々とそれを分かち合いたいという気持ちでいます。」

 宗教がベースであり、宗教心がないと倫理は崩れるという考え方もあろうが、少なくともインドの歴史は、必ずしもそうではない人間の現実を示している。
 インドの伝統の一つは「一般的な世俗のレベルで倫理観を高める」ことである。
 インドでは古代から哲学的論争を行い、激しい批判の応酬もあったが、真剣に考え、議論し、主張する人はその真剣さから「聖人」とみなされ、見解を同じくする人からだけでなく、そうでない人からも「尊敬を受けてきた」のだ。

「その人のもっている見解と、その見解をもっているその人とをはっきり区別して考える、その上で、その人のもっている見解が間違ったものならば批判することはかまわないけれど、『その見解をもっている人に対する尊敬の気持ちを忘れてはならない』ということが、世俗のレベルにおける倫理観ではないかと思います。
 すなわち、この『世俗のレベルにおける倫理観』をもつということは、すべての宗教に対して尊敬の気持ちをもつということを意味しています。
 そのなかには宗教を信じていない人たちも含まれています。
『この宗教が良い、あの宗教は悪い』という区別をするのではなく、すべての宗教を等しく尊敬する気持ちをもつことこそ、大切な考え方であると思うわけです。」

 ここで、人を救済するはずの宗教が人を争わせ、邪慳にし、倫理に背く行動をとらせる理由が明らかになった。
 特定の神や経典が良くて、他のものは悪いという区別、そして、その先に待つ蔑視や差別こそが、宗教の持つ最大の毒である。
 宗教的信念が世俗のレベルすなわち、普通の社会生活に不要な、あるいはあってはならない波風を立てているのだ。
 その毒は、人と人とを遠ざけ、対立させ、殺し合いすらもたらし、倫理の崩壊を招いている。

「私たち人間のもっている価値感を高めていく方法としては、世俗のレベルを土台とすること、すなわち、『すべての宗派も越え、信心をもっているかどうかも越えて、ひとりの人間として、正しい生き方をするべきである』という認識を広めていくことこそ、今、現実的に必要とされていることだと思います」

 法王は、「ご自身の宗教をもつということと、世俗の倫理観を高めるべく尽力をされたことの間に一切の矛盾は」なかった例として、マハトマ・ガンディーとインドの初代大統領ラージェーンドラ・プラサードを挙げる。

 マハトマ・ガンディーは「インド独立の父」と呼ばれ、誕生日である10月2日は国連によって「国際非暴力デー」と定められている。
 昭和17年7月、日本軍がミッドウェー海戦で大敗北をこうむった直後、こうした文書を発表した。

「私は、あなたがた日本人に悪意を持っているわけではありません。
 あなたがた日本人はアジア人のアジアという崇高な希望を持っていました。
 しかし、今では、それも帝国主義の野望にすぎません。
 そして、その野望を実現できずにアジアを解体する張本人となってしまうかも知れません。
 世界の列強と肩を並べたいというのが、あなたがた日本人の野望でした。
 しかし、中国を侵略したり、ドイツやイタリアと同盟を結ぶことによって実現するものではないはずです。
 あなたがたは、いかなる訴えにも耳を傾けようとはなさらない。
 ただ、剣にのみ耳を貸す民族と聞いています。
 それが大きな誤解でありますように。
 あなたがたの友 ガンディーより。」

 昭和22年、インドはイギリスから独立したが、イスラム教徒の多いパキスタンがインドから分離・独立し、その翌年、ガンディーは自分が信ずるヒンズー教の狂信的信者によって暗殺された。
 3発の弾丸が撃ち込まれた時、ガンディーは、イスラム教の作法により自らの額に手を当てて相手を赦し、「おお、神よ」とつぶやいた。

 法王は世界中の宗教者、信者たちへメッセージを発した。
 世界を倫理の崩壊から救うため、自分の宗教という枠を超え、すべての人々と共に、一人の人間として正しい生き方をすべきである。
 今、世界でもっとも重要なメッセージの一つではなかろうか。 
 
「のうまく さんまんだ ぼだなん あびらうんけん」※今日の守本尊大日如来様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=LEz1cSpCaXA


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 山里の寺から、有縁無縁の方々の、この世の幸せとあの世の安心を祈っています。

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