コラム

 公開日: 2015-08-01 

日常生活の中で倫理観を高める三つの方法 ―ダライ・ラマ法王の警告(4)―

 おはようございます。
 皆さん、今日もお会いできましたね。
 今般の大災害に際し、亡くなられた方々と、被災された方々と、原発事故の現場をはじめ、復興に尽力しておられる方々に、み仏のご加護がありますよう心よりお祈り申し上げます。




〈当山から車で一分。『法楽農園』入り口に『野のゆりホーム』さんが誕生しました〉

 ダライ・ラマ法王は、著書『ダライ・ラマ法王、フクシマで語る』において、科学的知見もふまえ、モラルの獲得方法を説く。
 アメリカのウィスコンシン大学、エモリー大学、スタンフォード大学において、過去10年間にわたり、「優しさと思いやり、すなわち愛や慈悲の心に集中して瞑想する」などの瞑想を行うことによって、「瞑想修行を行った学生たちの心が非常にゆったりしたものになり、非常に効果があったという研究結果」も出ているという。

「お金や物で私たちの肉体的レベルの快適さを得ることはできますが、精神的なレベルでの平和を得ることはできません。
 心の平和は自分自身の心のなかを良く変えていくことによって、自分自身で作り出すものなのです。」

 そして、世俗の倫理観を高める三つの方法が説かれる。

1 母親が我が子へたっぷり愛情をそそぐこと

「ある科学者が述べていることですが、私たち人間がこの世に生まれ落ちた最初の生後2、3週間の間に、お母さんの胸に抱かれて優しくほおずりをしてもらい、愛情を十分に注いでもらうことこそ、その子どもの脳が的確に発達、成長していくために最も大切なことだそうです。」

 人間が人間らしい心を育むには何よりもまず、この世への信頼感がなければならない。
 信頼できる外部世界であればこそ、心が開かれ、伸び伸びと発達する。
 もしも、不信、不安、恐怖などを抱くようであれば、自分を守ろうとして閉じこもり、外へ開かれない心はやがて、根を張れない植物のように枯れ果ててしまうかも知れない。

「現在の私の心のなかにある優しさ、愛と慈悲の心の種は、母からもらったものだということを、私は今も信じているのです。」

 法王は、ご自身が駄々をこねようと、酷い行動をとろうと、母親はいつも温かく見守ってくれていたことをはっきり記憶しておられる。
 私たちもまた、よくよくふり返ってみると、母親の献身的な慈しみの場面がいくつも思い出されるのではなかろうか。
 大事件を起こして立てこもる犯人へ対して、現場へ連れてこられた母親が投降を呼びかけるといったシーンは、いつも〈最後の切り札〉となる母親の悲しみに満ちていて切なく、目を覆いたくなる。

 また、サルによる実験は、母親の存在がいかに重要かを物語っている。
 母に抱かれて育った子猿は「いつも楽しそうで、いろいろなことに関心があって遊びに夢中になることができる」一方、最初からお母さんザルと別々にされてしまった子ザルは、「どちらかうというと怒りっぽく、怖がりで、そして遊びにもなかなか夢中になれない」という。

2 常識に基づいて倫理観の重要性を考えてゆくこと

「両親の愛情に育まれて、家族同士の信頼感がお互いにあり、そして信頼に基づいてお互いを尊敬する、敬意を持つという態度が育まれていく。」

「私たち人間のような社会生活を営んで生きていく動物の場合、友情関係というような信頼に基づいた愛情が社会のなかにあれば、その動物社会は存在自体が幸せで平和な社会となります。」

 親や家族に愛されて愛を知り、自分が愛することによって相手が愛を感じ、愛する者同士の間には信頼感が生まれ、やがては他者への敬意という社会人としての基本がつくられてゆく。
 こうしたことごとは、法王が「常識」という言葉を使われたとおり、だれにでも共通の〈道理〉を用いれば多くの方々が同意できるはずだ。 

「お金や経済力や権力ではなく、それぞれ一個人が心のなかに、他に対する優しさと思いやりをもっているということこそ、その社会自体をより幸せにしていく大きな要素となっている。」

 思いやりのある温かい社会に生きたければ、社会の構成員である個人個人の心に優しさがなければならず、また、周囲に思いやりのある環境になければ、思いやりの心は育まれず、個人の心と社会のありようは、二枚の鏡のように互いを反映し合っている。
 7月26日付の朝日新聞は報じた。

「国内の上場企業の2015年3月期決算で、1億円以上の報酬を受け取った役員は211社の計411人となり、前年より20社、計50人増えた。
『アベノミクス』による円安や株高もあって業績が回復し、この2年で計110人伸びた。」

「基本報酬と賞与の合計額が社内で一番高い役員に注目して上位100社を抽出し、最高額の役員報酬と従業員の年収の差を比べた。
 役員報酬は平均で2億1700万円と前年より4・8%伸びたが、従業員の平均年収は753万円で1・5%減。その差は28・8倍で前年の27・1倍より広がり、開示が始まってからの6年で最大だった。」

 また、7月31日、民間9社がGDP(国内総生産)4~6月期予測を発表したが、いずれもマイナスである。
 つまり、日本全体の生産は伸びていない中で、一部の大企業の役員だけが収入を増やし、平均約750万円もの年収を得ているエリートサラリーマンですら年収を減らし、格差は拡大する一方なのだ。
 しかも役員はストックオプションという自社株を割安で手に入れる権利も持ち、日本の大企業でもこの制度が急速に普及し、13年7月からの1年間で535社にのぼっている。
 その一方で、子供の貧困率は上がり続けており、イギリス、フランス、ドイツはもちろん韓国よりも酷く、特に、大人が一人で子供を育てることは困難を極めている。







 こうした酷薄な社会にあって、子供の心からイジメをなくし、たやすくキレない情操を育てて行けるはずがあろうか?
 子供たちに思いやりの心がうまく育つだろうか?

3 科学的研究結果に基づき、心身共によき資質を育ててゆくこと

「健康な体を維持するためには、健全な心を維持することが一番大切だということが科学者によって裏付けられています。」

「ウィスコンシン大学で、たった2、3週間でも慈悲の心についての瞑想を続けた結果、その実験に参加した学生たちは、その後血圧も下がり、ストレス値も下がり、その人自身がより幸せになり、人間関係もうまくいくようになったという報告が出ています。」
 ですから、自分自身が努力をすることによって、自分のよき感情を高めていくことによって、脳細胞にまでも変化を及ぼすことが可能であると、科学者は裏付けてくれているわけです。」

 このように、心と社会が相照らし合うだけでなく、心と身体もまた、相照らし合う関係にある。
 法王は、周囲へ思いやりを持つ人の「穏やかな心の平和」は「すべてのものの源」となっていると説かれた。
 そして、「穏やかな心の平和」をもたらすものこそ、「命あるすべてのものに対する温かさと優しさ」である。
 よくよく考え、縁に応じた方法で実践したい。

 今日の守本尊不動明王様の真言です。
 どなたさまにとっても、佳き一日となりますよう。
https://www.youtube.com/watch?v=EOk4OlhTq_M


 ご関心のある方は当山のホームページ(http://hourakuji.net/)をご笑覧ください。
 山里の寺から、有縁無縁の方々の、あの世の安心とこの世の幸せを祈っています。

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